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玉子丼のような人になりたい

「松のや」という豚カツチェーン店がある。
スタンダードの豚カツ定食なら500円で食べられる最高の店だ。
何かの漫画で「好きなときに豚カツを食べられるくらいがちょうどよいくらい」みたいな一節があったが、松のやの誕生でちょうどよい身の丈を感じられる人も増えたのではなかろうか。

そんな松のや、朝メニューも提供している。
豚カツは当然提供しているのだが、朝から豚カツなんて食べられねぇよと思ったあなたに向けて、最高のチェーン店である松のやは心配りも最強なので普通の定食類を提供している。
牛丼屋で提供しているような、目玉焼きやソーセージなんかついてくるあれだ。

そんな松のやの朝メニューの中に、他の店では見たことのないメニューがある。玉子丼というものだ。

玉子丼がどんなメニューかというと、簡単に言えば「カツ丼の卵のところのみの丼」だ。
オーソドックスなカツ丼は、出汁の効いたふんわりたまごと玉ねぎでカツが包まれている事が多い。
その出汁の効いたふんわりたまごと玉ねぎだけご飯にのせているのだ。

これは始めてみたとき、ぶったまげた。
先程は「カツ丼の卵のところのみの丼」といったが、言い方を変えれば、「カツ丼のカツ抜き」である。暴挙としか思えなかった。
豚カツチェーンのアイデンティティである豚カツが出てこないわけだし、あえて豚カツというスター選手を場外へぶん投げ、ご飯との繋ぎと思われていた卵をいきなりスターダムに押し上げたのだ。

もちろん、卵さんもいきなり注目を浴びたところで怯むようなやつではない。
全世界の料理に溶け込み、数多くのお茶の間のテーブルにメイン食材として主役を担ってきたメジャー級の大物だ。負けないはずがない。
さぁどうなる、、、!?

いざ実食。思っていた通りの味だった。カツ丼の卵の部分の味。
通常あるカツの自己主張が一切ないため、卵と出汁の旨味が舌にダイレクトに届く。ひたすらにふわふわで、優しく、包み込まれるような味わいだ。
卵のポテンシャルを認識すると同時に、カツ丼はこの卵がいてくれることで、豚カツとご飯をうまく繋げ、調和がとれて最高の料理として成立しているのだとはっきり認識できた。

私はこの玉子丼のようになりたいと思った。
日頃は裏方として一流の働きをし、主役としても圧倒的なパフォーマンスを発揮する、玉子丼のような人間に。

気づかせてくれてありがとう、松のや。できれば開店時間を早めてくれ。朝9時開店は、なかなか食べに行けないから、、、

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