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原田治展 「かわいい」の発見
世田谷文学館で行われている原田治展に行ってきた。80〜90年代のどの家庭にもあったと思うオサムグッズ。ある種のノスタルジーに浸る感じかなと思いきや、カルビーのポテトチップスや、東急の電車の窓のクマ、ECCのキャラクターなど思ってたよりも生活に根付いていて、今も変わらず暮らしの中にそれらがいるのを思い知らされた。
70年代のan・anなどの雑誌に使われたイラストの鮮やかな色使いは、60’sサイケデリックやピーター・マックスからの影響というか名残りが濃厚で、この時代の流行りだったのかなと思う。
もともと十代の頃に画家を目指したものの、職業作家としてイラストレーターを目指したことや、輸入雑貨店に足繁く通った事と、73年に公開されたジョージ・ルーカスのアメリカングラフィティなどの50’s趣味がオサムグッズの根底にあったのではないかと思った。ユーミンが80年前後は50’sブームがあったということを話していたので、アメリカングラフィティからこの時代までにオサムグッズが広く普及したのは時代のバックボーンが大きかったのかなと思う。
とはいえ、所謂50’s趣味というよりもイームズ夫妻を念頭に置いて作られた家の写真を見るに、夢に溢れたアメリカ西海岸のミッドセンチュリーが彼の基盤となっていた事もうかがえる。70’sカルチャーの憧れの西海岸文化の息吹がそこに感じられた。
代表的なキャラクターの原画を見るとホワイトで修正された後があって、シンプルながら線の持つ拘りと力強さを感じられた。
自己主張よりもテーマに合ったものを作るという事と、迷いのない線への拘りが原田治という人の個性だったのかなと感じられた。
展示の中で何度も登場したのがルイ・マル監督で知られる映画「地下鉄のザジ」。映画の中のザジの奔放さも彼のベースにあったのだと思うと、なるほど合点がいく。かわいいの中に内包される奔放さを描いたところに魅力があるのではないかと。
豊かだった時代の副産物という枠にとどまらない原田治の作品は、今見ても十分魅力的なものだと思う。リアルタイムでは商業作家として軽業られていたかもしれないけれど、音楽含め80年代の日本のカルチャーとしてコマーシャルな部分は今後振り返るべき視点だと常々感じている。