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ルイス・アルベルト・スピネッタの軌跡③/インヴィシブレ プログレッシブなジャズロックバンド

※有料にしていますが全文読めます。

スピネッタは1973年10月にアルバム「Artaud」のリリース及び、アストラル劇場でのソロライブを終えると、翌11月には同じくアストラル劇場で新たなバンド、インヴィシブレでステージに立つ。メンバーはパッポのバンドパッポス・ブルースに所属していたエクトル・"ポモ"・ロレンツォ(ドラム)、カルロス・アルベルト・"マチ"・ルフィーノ(ベース)とスピネッタによるトリオ編成。ポモはスピネッタのファーストソロなどで既に共演していた。
バンドに対してスピネッタが最初に提案したのは、個人ではなくグループを重んじることで、すべての楽曲はレコード契約と同様に共同で署名され、個人的なプレスリリースやインタビューはなく常にトリオで行われた。しかしスピネッタのクリエイティブな才能の重みは、当初のグループの在り方に影響を与え、徐々にグループの一体感を失わせていった。
インヴィシブレがサウンド面で試みたのは、ザ・フー、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープルなどのバンドや、パッポス・ブルース、ヴォックス・デイなどの国内バンドが使用していたギターのディストーション・ペダル(音を歪ませるエフェクター)を使用しないという規律を設けた事だった。ディストーションを使用しない事で骨太なブリティッシュブルーススタイルから、徐々にジャズロック色を強めていくことになる。

・インヴィシブレ Invisible

・Invisible/Invisible 1974

リリース:1974年4月
Lado A
Jugo de lúcuma (Spinetta, Pomo, Machi)4:29
El diluvio y la pasajera (Spinetta, Pomo, Machi)8:46
Suspensión (Spinetta, Pomo, Machi)5:42
Lado B
Tema de Elmo Lesto (Spinetta, Pomo, Machi)2:24
Azafata del tren fantasma (Spinetta, Pomo, Machi)8:21
Irregular (Spinetta, Pomo, Machi)7:37
Simple(7inch)
La llave del mandala (Spinetta, Pomo, Machi)4:13
Lo que nos ocupa es esa abuela, la conciencia que regula el mundo (Spinetta, Pomo, Machi)4:19

Machi (Carlos Rufino): Bajo y voz.
Pomo (Héctor Lorenzo): Batería y percusión.
Luis Alberto Spinetta: Primera voz y Guitarras.

Mánager de Grabación: Billy Bond.
Foto de tapa: M.C. Escher.
Fotos: Hidalgo Boragno
Gráfica: Juan Oreste Gatti

このアルバムでスピネッタの晩年までに至るボーカルスタイルが定まり始め、スピネッタ節が現れ始める。ギターのスタイルもディストーションを極力使用しないというルールを設け、クリーンなサウンドと、アコースティックギターもコード弾きではなくリフやフレーズを盛り込んだものに置きかわる。ボーカルとギター共にスピネッタ独特のスタイルがここから登場と相成った。アルメンドラのセカンドや、ペスカード・ラビオーソのファーストの様なギターのリフをベースにしたブリティッシュブルースのバンドスタイルは、インヴィシブレのファーストではまだ若干残っているが(唯一ディストーションを使用した「Suspension」「Tema de Elmo Lesto」など)、主流だったブルースロックのスタイルとは別のサウンドを目指したことで、スピネッタのリリシズムと、ポモとマチ・ルフィーノが演奏するリズム隊のパワフルさが際立つ結果となった。

「ペスカードでは、アルメンドラとは逆の手順でした。アルメンドラのファーストアルバムはソフトで、セカンドアルバムがアグレッシブだったとすれば、ペスカードではその逆で、セカンドアルバムではサウンドがアルメンドラのファーストに近いものになりました。そして、『インビジブル』では、この2つの世界のバランスが取れていました。ペスカードとの違いは、ここではディストーションを使わない、あるいはディストーションをできるだけ使わないという、当時はあまり一般的ではなかった方法をとったことです。」
ルイス・アルベルト・スピネッタ

アルバムは12インチのアルバムと、収まりきらなかった2曲(「La llave del mandala」と「Lo que nos ocupa es esa abuela, la conciencia que regula el mundo」)が入った7インチの変則的な二枚組となっている。ジャケットはM.C.エッシャーの「水たまり(The puddle)」が使用され、裏ジャケットやインナースリーブ(曲毎に作品が引用されている)でもそれぞれ作品が使用されている。

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ジャケットに使われた「水たまり(The puddle)」は、ぬかるんだ道の真ん中の靴の足跡と車や自転車の轍の中に水たまりがあり、森や空、満月が映し出された構図の作品。このドローイングの特徴は、水・土・空の3つの要素を捉えながら、遠近法の中に遠近法が盛り込まれる、平衡感覚を失う様なエッシャーらしい作品。
エッシャーの作品はパラドックスや複雑な立体を表現する抽象的な視覚的概念に焦点を当てているのが特徴で、ヨーロッパの芸術家でありながら、東洋の曼荼羅やアルハンブラ宮殿で発見したアラビアのデザインなど、ヨーロッパ以外の視点にも興味を持っていた。スピネッタは、美術を1年間学んだアマチュアの製図家であり、アルバムや発表会のポスターのためにいくつかの絵を描いていたが、エッシャーとユングを通して曼荼羅を知り、その後、ドイツのR・ヴィルヘルムによって翻訳され広まった道教の本『黄金の花の秘密』を読み、バンドの次のアルバム「Durazno sangrando」でインスピレーションを受けることになったと語っている。
もう一つスピネッタのインスピレーションの源になったのが、アメリカ大陸の原住民の文化で「El diluvio y la pasajera 」の歌詞は「コロンブス以前の起源を持つファンタジー」を基にしている。

「私はいつも、コロンブス以前の起源の文化は非常に賢明であり、壊滅して宝物が侵害されたが、その秘密は残っていて今も活動していると信じている。美術を学んだ年に、アステカやインカの文化についての授業を受けたことが強く印象に残っています。」
ルイス・アルベルト・スピネッタ

ライブでは「Tema de Elmo Lesto(エルモ・レストのテーマ)」という曲でエルモというキャラクターが登場する(セサミストリートでは無い。)。エルモは発泡スチロールで作られた1×1mの大きさの頭で目が動き口も開く着ぐるみ。エルモはバンドの"主役 "の一人で、ステージでさまざまな個性を持った人に扮して登場した。

「エルモはエルモ...レストだった。彼はインビジブルのファーストアルバムに収録されている「Tema de Elmo Lesto」という曲を演奏している間、ショーに割り込んでくるのですが、これはショーの中での舞台装置としてのキャラクターでした。ストロボの光でその大げさに変形した頭は、片方の耳が上を向いていて、もう片方は普通の耳で、しかも異常な方には指輪をしていて、口を開けて巨大なタバコを吸おうとしている...。どんなキャラクターにもなれる、ということですね。例えば、エルモはスーパーマンを演じ、ボクサーを演じ、レフェリーを演じました。そして、彼はサッカーのレフェリーになってレッドカードを取り出し、自分のテーマ曲を演奏している間にバンドをステージから退場させようとする様を演じていました。コロシアムで行ったショーでは、私たちが箱の中から登場し、爆竹と火が現れ、彼は恐ろしい白いゴム長靴を履いたスーパーエルモとして登場しました。すべてが風刺的であった。有名なヒーローは、迷惑な巨大な大頭でした。あのエルモのキャラクターがとても懐かしく思い出されます。」
ルイス・アルベルト・スピネッタ

uis Alberto Spinetta ... Historia "Invisible" . ..TEMA DE ELMO LESTO Es un interludio instrumental que (durante los...

Posted by Musica DEL MUNDO on Wednesday, September 12, 2018

・Invisible/Durazno sangrando 1975

リリース:1975年9月
Cara A
Encadenado al ánima (Spinetta, Pomo, Machi) 15:32
Durazno sangrando (Spinetta, Pomo, Machi)  03:46
Cara B
Pleamar de águilas (Spinetta, Pomo, Machi)  04:22
En una lejana playa del animus (Spinetta, Pomo, Machi)  09:57
Dios de la adolescencia (Spinetta, Pomo, Machi)  02:45

Carlos Alberto 'Machi' Rufino: Bajo y voz.
Héctor 'Pomo' Lorenzo: Batería.
Luis Alberto Spinetta: Guitarras y voz.

Esteban Martínez Prieto: ARP Strings Ensemble en Encadenado al ánima 1. parte.
Luis Santiago Spinetta: Letra de Encadenado al ánima 2. parte.

先にも触れた様に、スイスの哲学者・心理学者であるカール・ユングの著作からスピネッタが得た概念を基にしたコンセプチュアルな作品で、中国の伝統的な書物である道教の本『黄金の花の秘密』(原書のリュウ・ドンビンによる「金花宗旨(Tai Yi Jin Hua Zong Zhi, 太乙金花宗旨)」は道教の瞑想マニュアルで、リチャード・ヴィルヘルムとユングがヨーロッパで広めたもの)をベースにしている。その中にはアルバムのタイトルにもなっているスピネッタの曲の中でも人気の高い曲「Durazno sangrando」も含まれている。
エドゥアルド・マルティがデザインしたアルバム・カバーと、スピネッタ自身が描かれたポスターは、1976年末にロサリオ市当局によって検閲されたが、その理由はイメージ(作者によれば桃の穴を表現したもの)が膣を模していると考えられたからである。「Durazno sangrando」は直訳すると"血滴る桃"を意味する。

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かつてアメリカのビートニクやヒッピーが追い求めた非西欧的な価値観と同じ様に、スピネッタはヨーロッパ中心主義から脱却できる作品を重要視していた。歌詞には、哲学者ジャン=ポール・サルトルを意識したシュールレアリスム的な要素が強く含まれている。
「Encadenado al anima」の歌詞は、それぞれ有名なユングの概念であるアニムスとアニマに言及しており、前者は「生」を、後者は「死」を表している。また、フランスの哲学者、ジャン=ポール・サルトルからの影響も見られ、「思春期の神様(Dios de la Adolescencia)」の歌詞(「存在と無」という言葉が出てくる。彼の大作のタイトルである)は、「無」の深淵の前で苦悩から必死に逃れようとする思春期の少女の夢のようなイメージの中で、自由の追求(「存在そのもの」の逃れられない探求)についての、あの作家が大切にしていた概念に手を染めているように見える。重要な点は、「Encadenado al anima」のシュールレアリズムな詩が、ルイス・アルベルトの父親であるサンティアゴ・スピネッタの作品であることだった。
バンドアンサンブルは前作よりもタイトかつソリッドになり、フォークロックとプログレッシヴロックとジャズロックの中間の様なスタイルが強固なものとなった。前作まで残っていたヘヴィなロック的表現は払拭され、ギターリフやフレーズが主体となりがらもブルースロックとは異なる似て非なる表現に至っている。「Dios de la Adolescencia」はその後のスピネッタの音楽性に通じるメロウで甘酸っぱいメロディラインを聴き取ることができる。

・Invisible/El jardín de los presentes 1976

リリース:1976年9月
Lado A
El anillo del Capitán Beto (Spinetta, Pomo, Machi,Gubitsch)  5:12
Los libros de la buena memoria (Spinetta, Pomo, Machi,Gubitsch)  5:10
Alarma entre los ángeles (Spinetta, Pomo, Machi,Gubitsch)  6:31
Que ves el cielo (Spinetta, Pomo, Machi,Gubitsch)  2:07
Lado B 
Ruido de magia (Spinetta, Pomo, Machi,Gubitsch)  4:38
Doscientos años (Spinetta, Pomo, Machi,Gubitsch)  4:12
Perdonado (niño condenado) (Spinetta, Pomo, Machi,Gubitsch)  7:09
Las golondrinas de Plaza de Mayo (Spinetta, Pomo, Machi,Gubitsch)  3:24

Carlos Alberto "Machi" Rufino: Bajo.
Héctor "Pomo" Lorenzo: Batería.
Luis Alberto Spinetta: Guitarras y voz.
Tomás Gubitsch: Guitarra.

Gustavo Moretto: ARP String Ensemble en Ruido de magia y Las golondrinas de Plaza de Mayo.
Juan José Mosalini: Bandoneón en Los libros de la buena memoria y Las golondrinas de Plaza de Mayo.
Rodolfo Mederos: Bandoneón en Las golondrinas de Plaza de Mayo.

Ingenieros de sonido: Néstor Gilardón y Oscar Giménez.
Mezcla: Roberto Labraga.
Arte y foto interior: Juan Gatti.
Foto de portada: Eduardo Martí, Jorge Gubitsch (personaje).

本作はジャズギタリストのトマス・グビッチが加入しトリオからカルテットに編成が変わっている。グビッチとスピネッタの兄弟が友人で、スピネッタの弟グスタボがグビッチを紹介したことが加入のきっかけとなった。彼の参加で全二作以上にジャズロック色が強まり、イギリスのカンタベリーロックを彷彿とさせる曲調はスピネッタの次作「A 18' del sol」に連なる演奏が繰り広げられている。本作は特にトマス・グビッチの素早く明瞭かつ伸びやかなギターソロが印象に残る。

「私はリード・ギタリストという立場でしたが、実際にはそんなことはありませんでした。技術的には私の方が上だったかもしれませんし、音楽の知識もあったかもしれませんが、ルイスは印象的なサウンドとロック魂を持っていて、私をはるかに凌駕していました。」
トマス・グビッチ

ハチロクのリズムでわずかにスイングするナンバー「Alarma entre los ángeles」は、ジョン・マクラフリンのマハビシュヌ・オーケストラの影響を受けた、ジャズ・ロックを志向するスピネッタの最初の作曲体験のサンプルであり、その後のスピネッタの特徴を先取った曲となった。
アルバムリリースの前月1976年8月6日、当時としては大規模なコンサートがルナ・パーク・スタジアムで開催される。
四人目のメンバーとして加入したトマス・グビッチは「アルバムのレコーディングのほかに、ルナ・パークで演奏した(8月6日)のですが、こんなに怖い思いをしたことはありませんでした。12,000人もの人が集まっていたのに、どうやって演奏したのか今でも覚えていません。震えるほどでした。」と語っていて、スピネッタが『世界の疎外された人々に捧げた』このコンサートで、トマスはトリオにメンバーを追加することを拒みブーイングを投げかけた聴衆に対し、華麗なギタープレイで聴衆をひれ伏せ、ブーイングと心からの拍手と交換した。

「現在の庭(El jardín de los presentes)」と題されたこのアルバムタイトルは、スピネッタのジャケットやミュージックビデオの作者であり、ミュージシャンのルーカス・マルティとエマニュエル・ホルヴィレールの父親でもあるエドゥアルド・"ディラン"・マルティの発案によるもの。ルーカス・マルティは、ルイス・アルベルトの長男であるダンテ・スピネッタとのヒップホップデュオ「イリヤ・クリヤキ・アンド・ザ・ヴァルダーラマス」のメンバーでもある。

「ふと思いついてこのタイトルを提案したところ、スピネッタが気に入ってくれました。それは、私たちが今いる庭と、この世にいなくなったときにいる庭に関係するものでした。私たちはきっと、空想上の庭にいるのだろう。誰も知らない。あるいは、少なくとも自分の身に起こることを信じよう。」
エドアルド・"ディラン"・マルティ

D♭/Bコード(D♭7の転回形)の浮遊感のあるギターコードで始まるこのアルバムは、スピネッタの最も象徴的な曲のひとつである1曲目「El anillo del Capitán Beto」から始まる。歌詞の内容はブエノスアイレスから来たバスの運転手が、自分のバスを宇宙船に改造したキャプテンとなり、リングの力で危険に立ち向かいながら宇宙を航海するが、同時に悲しみと孤独に悩まされるというストーリーとなっている。そして激しいツインギターが展開される「Perdonado (niño condenado)」はスピネッタが飼っている小型犬に着想を得ている。

「家で飼っていたアマポーラという小さな犬を見ていると、人間に近いのに、あるデザインによって無理やり犬にされているような気がした。そこには、2月の悪魔によって犬になることを宣告されたが、同時に赦された子供という考えが生まれた。人間であることの実存的な苦悩や、雨の中で托鉢(仏教やジャイナ教を含む古代インド宗教の出家者の修行形態の1つで、信者の家々を巡り、生活に必要な最低限の食糧などを乞う事で、信者に功徳を積ませる修行。)をする子供のようなものを赦して....。」
ルイス・アルベルト・スピネッタ

シンセとアコースティックギターのユニゾンフレーズの導入から始まる「Las golondrinas de Plaza de Mayo」は、80年代のネオアコを感じさせる8ビートナンバー。ヴァース部分でバンドネオンが白玉で鳴らされ、デイヴィッド・ボウイの「Low」でも使用されたArpのストリングスアンサンブルが、クールに淡々とした曲調に彩りを添える。インヴィシブレはプログレッシブロックの影響の下にありながらも、リック・ウェイクマンやEL&Pの様なクラシカルで大仰なシンフォニックロックにならない所が彼ららしい。
このアルバムは、それまでのインヴィシブレのタイトなアンサンブルは継続されてはいるが、バンドとというよりもスピネッタのSSW的側面が強まり、メンバーはそれに寄り添う様な演奏に変化している。ドラムとベースの重心が上がり(特にスネアのチューニングが少しばかり甲高くなっている)、それまでの二枚に比べるとリズムが軽快になったことでよりジャズっぽさが強調された要素になっている。
もう一つ重要な要素がタンゴで、当時のアストル・ピアソラやダニエル・ビネッリ、ホルヘ・ピンチェフスキー、ディノ・サルッツィといったミュージシャンたちのような前衛的な音楽体験にも関連していた。
グビッチは翌年、ピアソラの八重奏に参加。「アストルが八重奏曲のために私を呼んだ。私にとっては信じられないことだった」

ロックではチャーリー・ガルシアが所属していたスイ・フェネリスや、リト・ネビアもタンゴへと接近していた。

アルバムリリースの年は、アルゼンチン最後の独裁政権下での国家テロや人々の失踪が増加していた時期だった。1973年にペロンが政権を奪還した後、1976年3月24日に起きたクーデターにより、国家テロが頻発した最後の民軍独裁政権が誕生した。アルゼンチンの歴史の中でも劇的なこの時期にレコーディングし発表された。その後、このアルバムで演奏していたグビッチとフアン・ホセ・モサリーニの2人は、翌年に亡命を余儀なくされている。

「その後、12月にルナ・パーク・スタジアムでコンサートを行ったが、バンドは解散してしまった」トマス・グビッチ

音楽的には、グビッチの加入は、バンドが最後の年に到達した非常に高い芸術的レベルと人気を達成するための決定的な要因となったが、個人的な観点からは、4人目のメンバーの存在が結果的にグループ解散の引き金となった。
インビジブルが解散したのは、人気絶頂だった1977年の初めだった。その前には、76年8月と12月にルナ・パーク・スタジアムで、アルバム『El jardín de los presentes』を発表するために、バンドネオンのロドルフォ・メデロスをゲストに迎えて、歴史的なコンサートを行っている。これは、前年に同じ会場で行われたスイ・フェネリスのフェアウェルコンサートと同様に当時としては驚くべき動員数を誇っていた。

1977年3月、ピアソラのバンドのヨーロッパ公演に同行したグビッチは、アルゼンチンの独裁政権が行っている残虐行為について発言するようになった。

「アルゼンチン領事館は私のチケットを没収し、それを取り戻そうとしたところ、私の発言や参加したデモのため、ブエノスアイレスでの安全は保証できないと言われました。私は当時、多くの人と同じように左翼的な考えを持っていましたが、それが何を意味するのかほとんど認識していませんでした。実際には、ロック、長髪、チェゲバラの神話を混ぜ合わせた左翼に属していました。チケットを返すための条件は、自分は国際的なマルクス主義に操られているという嘆願書を新聞に掲載させることでした。そこで私は彼らに「消えろ」と言い返した。当たり前ですが、彼らはそれを嫌がった。それは警告を装った脅しだった。ピアソラからは想像していなかった反対意見もあった。私にとっては非常に残念な気持ちになりました。彼はタンゴの革命児であるけれど、私は彼の音楽と政治の姿勢の違いに幻滅しました。まあこういったことはよくあることで、ワーグナーもひどい反ユダヤ主義者でしたし。これは、ピアソラがファショだったということではなく、彼なりに政権への恐怖心を持っていたということです。倫理的には正当化できませんが、彼は感動的な音楽を作っていましたし、誰もそれを奪うことはできません。イタリアでのコンサートでは、『余計なことはしゃべらない方がいい』『ヨーロッパの人はいろいろ考えているが、国のイメージを壊さないように』と指示してくれました。
その時に思ったのは、この国にビデラはいない!ということでした(ホルヘ・ラファエル・ビデラはクーデタを起こした張本人で、ペロン失脚後に大統領に就任し権力を掌握していた)。」
トマス・グビッチ

・アルバム未収録シングル曲

1 Elementales Leches 3:37
2 Estado de Coma 3:19
3 Oso Del Sueño 4:36
4 Viejos Ratones Del Tiempo 5:58
5 Amor De Primavera(Tanguito)3:34

1974年初めに、「Elementales leches」と「Estado de coma」を収録した初のシングル「Estado de coma」をリリース。この曲は1976年以降、独裁政権下では発禁の対象となった。おそらく、検閲官が「leches(ミルク)」という言葉を精液と結びつけて、性的な内容の曲だと考えたからだろう。
この曲には、「lo que está y no se usa nos fulminará」(「そこにあるのに使われていないものが私たちを苦しめる」)というマントラのように繰り返されるリフレインがある。当時スピネッタに影響を与えた東洋哲学に関連する「エレメンタルズ」という表現と、母性と栄養に関連する「leches(ミルク)」という表現を組み合わせたこのタイトルは、密閉された詩的な表現で、発芽した哲学的概念を意味している。

「この考え方は、『命を使わなければ命に殺される』『力を使わなければ力に殺される』というように、どんなシチュエーションでも置き換えることができます。」
ルイス・アルベルト・スピネッタ

出典・参照元

https://es.wikipedia.org/wiki/Invisible_(banda)

https://es.wikipedia.org/wiki/Invisible_(%C3%A1lbum_de_Invisible)

https://es.wikipedia.org/wiki/Invisible_(%C3%A1lbum_de_Invisible)

https://web.archive.org/web/20160304195459/http://www.jardindegente.com.ar/index.php?nota=biografia_004

https://web.archive.org/web/20130512100052/http://www.jardindegente.com.ar/index.php?nota=prensa_486_1

https://web.archive.org/web/20160304193602/http://www.jardindegente.com.ar/index.php?nota=prensa_242

https://web.archive.org/web/20130904005006/http://www.rockaxis.com/vanguardia/entrevista/recuerdos-de-la-buena-memoria-/#

https://www.pagina12.com.ar/diario/suplementos/espectaculos/3-142-2005-08-16.html

https://es.wikipedia.org/wiki/Durazno_sangrando

https://es.wikipedia.org/wiki/El_secreto_de_la_flor_de_oro

https://www.laizquierdadiario.com/Invisible-a-cuarenta-anos-de-Durazno-Sangrando

https://www.pagina12.com.ar/diario/suplementos/espectaculos/3-36713-2015-09-20.html

https://www.vice.com/es/article/qv373q/creators-alberto-spinetta-es-infinito-rock-ilustracion-y-poesia-surreal

https://web.archive.org/web/20090331042751/http://www.jardindegente.com.ar/index.php?nota=discografia_010

https://web.archive.org/web/20130513161735/http://www.jardindegente.com.ar/index.php?nota=dossiers_014

https://www.taringa.net/+spinetta/entrevista-a-spinetta-1986_1g0h4o

https://es.wikipedia.org/wiki/El_jard%C3%ADn_de_los_presentes

https://es.wikipedia.org/wiki/A_18%27_del_sol

https://www.pagina12.com.ar/diario/espectaculos/6-20810-2003-05-31.html

https://www.lavoz.com.ar/vos/musica/rescate-del-spinetta-vilipendiado/?fb_comment_id=989169294466117_990111244371922#!/

https://www.telam.com.ar/notas/201604/142752-reedicion-discos-luis-alberto-spinetta-kamikaze-alma-diamante-only-love-can-sustain-sony-music.html

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