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ディック・ロングは何故死んだのか? The Death of Dick Long/ダニエル・シャイナート
タイトル:ディック・ロングは何故死んだのか?
The Death of Dick Long 2018年
監督:ダニエル・シャイナート
馬鹿な男たちの馬鹿騒ぎから起こる顛末。当事者の男たちと、それを取り巻く医者や警官と妻たち。常に不安さと滑稽な出来事が巻き起こる。
友人の死因を隠蔽しようとするけれど、上手くいかない様子や、インド系の女の子が事件の匂いを嗅ぎつけながらもどこかピントがズレていたり、バーで演奏するバンドを貶しながらも自分たちのバンドも同じようなものだったり、行方不明になったディックを探す妻が馬を撫でながら「彼浮気してる?」というフレーズ、レズビアンの警官に向かって知らずに「同性愛は嫌いだ」というシーン、ラスト近くの馬を逃すところ(あれは馬に対する愛情?)、やましい事をひた隠すあまり街の人間がやたらと見ている感覚があったりとこれでもかとネタをぶっ込んでいる。見たまま思ったままを口にする娘の行動もハラハラさせる。エンドロールでコピーした曲と実際の曲が並んだ時の滑稽さ(コピー出来てない!)。不満を抱える街から出れば人生やり直せるという浅はかさ。
ここまで十分なほどにネタを仕込んでしっかり紐づけてるのに、…なのに全てまったく笑えなかったのは何故だろう?揚げ足を取るつもりはないけれど、すべてのネタがダダ滑っている。馬を逃すシーンなんて、この映画の滑稽さを表す絶好のシーンなのにまったく笑えない。なんでこうなった?
ディックの死因となった「◯◯」は直接的な場面はなく、会話の中で語られるだけ。日本版のポスターを観ると「あー、成る程!」となるのだけど、ここまでやるならそのシーンも入れるべきだったのでは?まあ実際にやられてもドン引きするかもしれないけれど…。ダニエルズ名義の前作「スイス・アーミーマン」が滑稽さを最大限に活かして馬鹿さ加減MAXだったのに対して、変なリアリティやポリコレに軸足を取られたような感じもありどうにもこうにも振るわない。役者も良かったのに活かしきれてない。何故こうなった?
監督のインタビューでは、コーエン兄弟の「ファーゴ」に影響を受けているらしい。ただいかんせんオフビートなノリがイマイチ出しきれていない。変な映画なのは間違いないものの、A24配給の駄目な部分が顕著に出てしまった一作だと思う。コーエン兄弟と同じく、聖書の引用がキーになっていたのかもしれないけれど(一箇所分かりやすく出ている)、単純に映画としては不出来としか言いようがない。
せっかくなのでA24配給で個人的にしっくり来なかった作品を羅列したい。
ウィッチ
ヘレディタリー然り、個人的にオカルトものはまったく怖さを感じないので、ラストの魔女になるシーン以外は全然しっくりこない。好みが分かれるところ。
ヤング・アダルト・ニューヨーク
ベン・スティラーがまじめ腐ってしすぎていて、ユーモアに欠ける。「フランシス・ハ」で上手くいっていたこじらせ具合が、仇になっている。アダム・ドライバーが良い演技をしているのに、ベン・スティラーが殺している印象がある。
Mr タスク
映画としては悪くは無いのだけれど、ラストに不条理なる重みに欠ける。A24らしい訳わかんなさという点ではらしい作品。
追憶の森
青木ヶ原の樹海を彷徨うというテーマはいいのにどこか薄口。突っ込みどころが多いのも難点。
魂のゆくえ
こういったインディペンデント寄りのアメリカ映画はキリスト教テーマの物が意外と多い。宗教観を入れつつ、普遍的なテーマまで到達出来れば傑作に至るものの、テーマ内で完結しているものはどうも半端なイメージがある。タクシー・ドライバーに寄りすぎてるキライがある。タルコフスキーを想起させる超常的な表現は良かった。そこだけ。
ホット・サマー・ナイツ
ティモシー・シャラメに頼りすぎ。ヤクの売人と自然災害をテーマにしつつも右から左へと流れるだけの内容で肩透かしは否めない。
とまあ実は観ていたけれど、アップしなかったA24配給作品をつらつらと並べたのだけれど、傑作が多い反面駄作もあるので手放しに褒める事が出来ないのがこの配給会社の特徴でもある。
僕がイマイチ乗れなかったとしても、いやいやこれは傑作でしょ!と感じる人もいるはず。
映画を観て何を感じるかが大切だと思うので、僕が何を言おうと心を動かされたのならその方が大事だと思います。
以上愚痴の回でした。