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【映画】こんにちは、私のお母さん 你好,李焕英/ジア・リン

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タイトル:こんにちは、私のお母さん 你好,李焕英 2021年
監督:ジア・リン

中国で大ヒットしワンダーウーマンなどハリウッド映画を抑えて、2021年の最高興行収入を叩き出したコメディ映画というだけで、中国の市場規模の大きさと映画産業の勢いが感じられる。しかし莫大な額に対して、この映画の舞台となった1981年の中国の質素な風景は、昭和の戦後1950年代の日本よりも簡素で驚かされる。1981年といえば日本ではプラザ合意から始まるバブル景気突入の直前ということもあり、この時代の中国の状況を比較すると20年以上差があったように感じられる。それを象徴するように、この時代の中国はカラーフィルムが普及していなかったために、当時の映像はモノクロでテレビも普及していなかった事実には本当に驚かされる。現在の中国の経済規模を考えれば、この40年ほどで大きく世界が変わっているのがよく分かる。中国でヒットした理由の一つに、過去へのノスタルジーを喚起される事もあると思う。
ただそれにしては映画の作りとしてはかなり大仰かつ、力業全開で面食らう。強引で整合性の無いストーリーで既視感のある作りは、正直観ていて選択失敗したかなと言うくらいベタな演出の連続だった。1981年にタイムスリップ(なのか?)する場面は大林宣彦的(ある種の恥ずかしさはあったと思う)というか、何故その方法で?と突っ込みたくなる。方法はどうあれこの場面は後半で、違った視点で出てくるので無意味とは言えないのだけれど....。感動的な場面らしい音楽が流れたと思ったら、いきなりそれを断ち切るコメディ演出が入ったり、表情で語るシーンなど細かい演出は結構しっくり来ることは多かったけれど、大筋の部分のベタさややたら出てくる回想シーンはダメな日本の映画やドラマみたいでチープさばかりが目立っていた。(バレーのシーンなんかはちょっと「サニー」っぽい)
何故こんなことになっているかといえば、監督兼主演のジア・リンがそもそも中国のテレビ出身のコメディエンヌで、さらにこの映画の元になったのがコメディの舞台だったと言うことを考えると合点が行くと思う。

中国語が分からないのでセリフなどの内容は把握できないのだけど、ちょっとよしもと新喜劇みたいなノリが感じられる。舞台にヒューマンドラマの部分を拡張して、映画が作られたという流れになっている。映画のテーマとなっている母の死は、ジア・リンの実体験に基づいていて映画のラストで綴られている。映画内容そのまま、ジア・リンが母に対しての想いを描いていたというのが、ラストに全て現れていた。
とはいえつまらなかったかといえばそうでもなく、くどいくらいに詰め込まれたエンタメの先に、母との生活の記憶が蘇るシーンはグッと心を摑まされるし、1981年の風景は中々興味深く観れた。特に1981年に行くときにモノクロの世界に色が足されていく演出はかなりヴィヴィッドだった。後半の泣かせにいってる所はちょっと大仰でくどかったけれど。
ただ映画的なオリジナリティがあるかといえばそこまでは至ってないのは確か。天然で洗練されていない強引さを楽しめるかどうかだけだと思う。嫌いじゃないけど、大手振って好きと言えるかというとそうでもないかな。時代背景がわかりにくい部分があったので、パンフレットを買わなかったのはちょっと後悔してる。

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