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【映画】最近観た映画2022年10月

・セックスと嘘とビデオテープ/スティーブン・ソダーバーグ

ソダーバーグの処女作でカンヌのパルムドールを受賞した傑作。ラストにかけてビデオを使った異様な雰囲気の盛り立て方は凄い。
・メモリア/アピチャッポン・ウィーラセタクン

ロングショットかつタルコフスキーばりに長回しが続く映像と、延々と鳴る雑踏のノイズ。音の記憶を辿っていった先にあるものに、圧巻というよりも口あんぐりな結末に「え〜?」となる変な映画でもある。いやなんなんだあれ?
・(ハル)/森田芳光

とにかく深津絵里がかわいい。パソコン通信の時代の話なんだけれど、今観ても現代に通じるものがある。ある種のドラマの安っぽさがかえって郷愁感を高めている。
・水の中のつぼみ/セリーヌ・シアマ

過剰な演出を避けて少しずつ二人の距離を詰めていくシアマの丁寧な描写の描き方は流石。溜めていた感情がキスシーンでぶわっと高まる。しかし、変なキャラクターがちょいちょい登場するちょっと変な映画でもある。
・エコー・イン・ザ・キャニオン/アンドリュー・スレイター

60年代のロサンジェルスにあるローレルキャニオンに集まったミュージシャンたちの足跡を、ディランの息子ジェイコブが辿っていくドキュメンタリー。肝心のジェイコブ・ディランの声と曲がちょっとマッチしてないのが残念。ニール・ヤングが出てこないなと思ってたら、エンドロールで登場して腹抱えて笑った。
・ラム/ヴァルディマル・ヨハンソン

A24らしい映画なんだけど、半獣人の子供がなんか愛おしく思えてくる。クレジットにタル・ベーラの名前があってなるほどなと思わせる、映像美があった。
・ルクス・エテナ/ギャスパー・ノエ

ベアトリス・ダルってこんな役ばっかりだな。映画はちょっと半端な感が否めないのだけれど、ラストの明滅は凄い。けど脳がめっちゃ疲れる…。
・曽根崎心中/増村保造

とにかく梶芽衣子無双。前半はちょっとどうなんだろう?という感じで始まるのだけれど、悲劇に突き進む中盤から後半にかけての歯車が狂っていく所のスリリングさ。増村の中でも一番人気があるのは納得。傑作。
・たかが世界の終わり/グザヴィエ・ドラン

この数年のドランはちょっと食傷気味。映像もテーマも悪くないんだけど、繊細さとケレン味のある大味さが上手く合致してない作品は、ちょっとボヤけてしまってる印象がある。どうしてもドランには、それやっちゃうの?っていう様なものを期待しちゃうんだよな。
・SNS 少女たちの10日間/バーラ・ハルポヴァー、ヴィート・クルサーク

十代の少女との性的な出会いを求めて、SNSのチャットで話しかける大人たち。男性だけでなく女性もいたり、ヌードを送らせて脅迫する男など、子を持つ親にとっては身の毛もよだつ恐ろしい現実が次々と露わになる。
・秘密の森の、その向こう/セリーヌ・シアマ

前作燃ゆる女の肖像のヴィヴィットな映像に比べると些か地味ではあるのだけれど、自分と同い年の母親と出会うファンタジックなテーマをベースに母と祖母の過去を、娘の視点で描いている。シアマらしく丁寧にじっくりとクライマックスへと持っていく描き方は素晴らしいと思う。
・第三世代/ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

オープニングがとにかくかっこいい。連合赤軍などテロリズムから得た着想を盛り込みながら、どこかあっけらかんとした映画。難解なセリフは読み流しながら、映画に酔いしれたい作品。
・アルタード・ステイツ/ケン・ラッセル

駄作ヒッピーカルチャーをもじりつつ、異形のSFに仕立ててるんだけど、どうもテーマが軽い。というのも、ここで描かれてるテーマの殆どをデヴィッド・クローネンバーグがちゃんとグロテスクに描いちゃってるので、比べちゃうとねぇ…。
・13回の新月のある年に/ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

トランスジェンダーの居場所の無さが生む空虚さ。問題のきっかけになった雑誌インタビューの内容が、録音テープによって詳らかに語られる。バイセクシャルだったファスビンダーが恋人の死をきっかけに作った作品というわりに、ドライな描き方をしている。屠殺の場面の露悪さに加えて、ロキシーミュージックやスーサイドが流れている所なんかは、確信犯なんだよな。
・ヴェロニカ・フォスのあこがれ/ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

ワイルダーのサンセット大通りの影響はかなり強いのだけれど、戦前戦後に引き裂かれた女優の刹那な生き様が痛切に描かれてる。モノクロームの映像がとにかく美しいこと。
・コンタクトキラー/アキ・カウリスマキ

カウリスマキはイギリスで撮ってもカウリスマキにしかならない。この後の作品でも描かれる移民や貧困など、一貫したテーマと緩い笑いがカウリスマキたらしめる要素なんだよな。
・アフターヤン/コゴナダ

SFを主題にしながらも、人種問題に切り込んだコゴナダらしいテーマ。人間とアンドロイドとクローンの間にある差別と親愛、そして記憶とは何かを問いてくる。
・マイブロークンマリコ/タナダユキ

漫画を映画にした時にありがちな思ってることを全部しゃべる表現は興醒めするのだけれど、ここで描かれる虐待と自殺というテーマは意外と後を引く。永野芽郁の体を張った演技は中々見どころ。
・マルチプルマニアックス/ジョン・ウォーターズ

悪趣味大王ジョン・ウォーターズの処女作。ピンクフラミンゴがまともな映画に見えるくらい、雑な造りではあるのだけど、ディヴァインの映画映えする見た目は今見てもインパクトがある。脈絡なく出てくるロブスターは爆笑。
・花束みたいな恋をした/土井裕泰

なんともくすぐったい映画なのだけれど、二十代で観るのと三十代、四十代で観るのとは印象が大きく変わるんじゃないかなと。坂元裕二の脚本は隙がない見事さの反面、ちょっとわざとらしさが過剰にも感じた。まあ若い頃は自分の理想を相手に押し付けるよね。趣味が合う恋人って、その後にズレが出てくると開きが大きく感じられて修復不可能になる。
・ファウスト/ヤン・シュヴァンクマイエル

未見かと思ってたけど、昔途中まで観たのを思い出した。エグい音の使い方や、メタな舞台の使い方など、この人でないと描けない唯一無二の世界。
・わたしはダニエル・ブレイク/ケン・ローチ

イギリスが抱える社会問題は他人事ではなく、日本でも十分起こり得ること。トレインスポッティングの時代とは大きく変わってきているのを痛感させられる。
・家族を想うとき/ケン・ローチ

個人事業主契約の実情と、家族の軋轢が貧困によって巻き起こる。全てのきっかけがリーマンショックだったり、この10年ほどに起きた経済的な問題を余すことなく描いてる。
・パラード/ジャック・タチ

テレビ局の依頼で作った事もあって、低予算かつビデオ映像とフィルムが混じる。プレイタイムの失敗のせいで、干されてしまったタチだけど、もうちょっと予算があったらなあ…と思ってしまう遺作。
・血を吸うカメラ/マイケル・パウエル

サイコの二ヶ月前に公開されながらも、封印されてしまった傑作。スコセッシとロメロが映画を作るきっかけになったという作品だけあって、完成度は高い。シリアルカキラー側からの視点や、何故そこに至ったのか、その衝動から抜け出せない落胆まで描かれていて素晴らしい。傑作。

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