【映画】バッド・ジーニアス 危険な天才たち ฉลาดเกมส์โกง/ナタウット・プーンピリヤ
タイトル:バッド・ジーニアス 危険な天才たち
ฉลาดเกมส์โกง 2017年
監督:ナタウット・プーンピリヤ
いやー面白い。今年観た旧作の中でもダントツの面白さ。事件発覚する所からスタートして、関わったキャラクターが告白していくのは先日観たソフィア・コッポラの「ブリング・リング」に近い作りではあるものの、物語後半ではその部分にも一捻り加えられていて、構成の周到さになるほど!と思わされる。スリリングな様子は最後まで嫌味のない緊張感に包まれていて、まさに手に汗握る展開に発展している。
本作のカンニングというテーマは、小さな規模から国際的な問題へと大きくなりながらも、主人公や周囲のキャラクターの出自とも絡んできて、物語が進むほどに格差がもたらす現実が突きつけられてくる。自らの力量で社会的な成功を目指す主人公リンとバンクの秀才コンビはお互い片親で貧困な生活を送り、パットとグレースやその他の裕福な人々はお金を使って他力本願にその場しのぎな行動ばかり。結託しながらも、常にツケが回ってくるのは秀才コンビばかりで、この辺りの不条理さの描き方も上手い。ラストがオープニングのニュースに繋がってくる辺りもよく出来ている。完全犯罪を目指すクライムサスペンスではあるものの、適度にコメディ要素もある。テンポも良いし、無理な編集がなく全体的にスムーズに話が流れていくので、どんどん没入していく快感があった。
ドラマ部分だけでなく、映像的な美しさもあり構図も練りに練られていて、昨今のアメリカ映画、特にA24に通じる感覚がある。冒頭の鏡に映るリンの姿はこの映画が只者じゃ無い予感から幕を切ってる所に監督の並々ならぬ才能を感じさせる。
エンドロールで彼女らが通っている学校の校歌が挿入されているので、その部分も見逃さないように。いやはや凄いとしか言いようがない。
タイのA24とも言える配給会社GDH559。現在公開されている「ハッピー・オールド・イヤー」も同じくGDH559で、主人公も両作で強い印象を残したチュティモン・ジョンジャルーンシックジンが出演しているのでこちらもおすすめ。