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【映画】テオレマ Teorema/ピエル・パオロ・パゾリーニ
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タイトル:テオレマ Teorema 1968年
監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ
このキャラクターは結局、天使的なものと悪魔的なものの中間に位置する、あいまいな存在になりました。訪問者は美しく、甘美でありながら、どこか下品なところがある(彼自身がブルジョワであることもゼロではない)。教養のないブルジョア(教養だけが純化するのだから)には、下品でないものはない。そして彼は、そのようなブルジョワの間に降りてくることを受け入れるほどの下品さを持っている。だからこそ彼は曖昧なのだ。なぜなら、それは妥協の外、人生との協定の外の愛、スキャンダラスな愛、破壊する愛、ブルジョアが自分自身に対して抱いている観念を変える愛だからです。
60年代とは思えないほど洗練された映像美に耽溺するだけで充分な映画かもしれない。どのシーンもスチール写真だけで並べられても美しく感じられるのは、クライテリオンによる4Kリマスターだからこそ味わえるもの。豪奢な建物ヤフー、ミラノ郊外の風景、自然、農場、教会など人物以上に饒舌な語り口を感じさせる。
どの視点で観るかで感じ方が大きく別れる映画でもあるが、冒頭から差し込まれる荒野のシーンなどを観ていると明らかに寺山修司がこの映画から影響を受けているのが感じられる。それを裏付けるように天井桟敷の団員の中で好まれていた話が書かれている。
「テオレマ」がデカダンスな映画かというと違っていて、ある種の軽さがある。テレンス・スタンプ演じる若い魅力的な男性と、それを取り巻く家族が関わり合うことで内なる感情が解き放たれる話ではあるのだけれど、セクシャルな関係をダイレクトに描かずにしっかりそれを感じさせるのはすごい。物語中盤で家族のもとを去った男の影を追い求める、5人それぞれの行動の描き方の異様さが半世紀以上経った今観ても「何じゃこりゃ?」と思わせる。かなりシンプルではあるが、パゾリーニの根底にある共産主義的な視点と、対するブルジョワジーへの視点、そして宗教観など第二次大戦を切り抜けてきた世代の価値観を差し引いても、倫理観をも揺さぶる男女構わずな肉体関係の描き方は今観ても充分にインパクトがある。
テレンス・スタンプの写真を見ていると、ガンダムに出てきそうな感じと思ったのは僕だけ?マ・クベの造形とかこういった映画から来てそう。
モリコーネによる音楽もジャズと、スウィンギンロンドンな感じで良かった。サブスクに無いからサントラ欲しいな。