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【映画】コロンバス Columbus/コゴナダ
タイトル:コロンバス Columbus 2017年
監督:コゴナダ
小津オマージュというよりかは韓国映画の静的な雰囲気の方が近いのかもしれない。美しく印象的な建築物を切り取るシンメトリーな構図からは、あまり小津っぽさは感じられない。小津映画の特色である低い位置のカメラもここにはない。というよりも監督が目指したのは、小津作品の間だったんじゃないかと思う。人と人との関わりの間に建築を置く事で言葉の外にある表現を取り込み、感情をアダプトさせる試みだったように感じる。
韓国系のジンとコロンバスに暮らすケイシーとのやり取りは、図らずも土地に縛られたふたりの出会いから派手な展開も起きないまま、終始ふたりの会話で話が進んでいく。ふたりに共通しているのは親との関係と、上手くいかなかった過去の出来事であり、歳が離れた関係でありながらもひと夏の短い時間の中で打ち解けていく様がじっくり描かれていた。恐らくジンは父親の専門分野だった建築の世界を一度は目指していたのではないだろうか。だからこそ、建築の世界に憧れながらも諦めの表情を見せるケイシーに誤った道を歩んで欲しくない気持ちが先だったのではないかと推測する。初恋の人が父の弟子にあたるエレノアだったのも、そういった一端が垣間見えてくるのではないだろうか?環境は違えど、親と土地に縛られながらも似た境遇にいるふたりの間にコロンバスの建築が横たわっている。失ったものを取り返す事が出来ないジン(エレノアとの会話が最たるもの)の後悔と同じ轍を踏んでほしくないという気持ちが、ケイシーに対する態度として表れていた。
劇中アンビエントな音楽が流れるのだけれど、10年代に多く見られるチルな雰囲気とは少し異なり、どちらかといえばポストクラシカル寄りで、フォーキーな感じはウィンダムヒルっぽさもある。アメリカ人なりの侘び寂びはこと音楽に一番出ていたように思った。
一曲トータスのジェフ・パーカーの曲が使われていたのもシカゴ繋がりか?
エレノア役はハル・ハートリーのヘンリー・フール・トリロジーでフェイを演じたパーカー・ポージー。こういった作品に姿を確認出来るのも嬉しく思う。
建築だけではなく、ミッドセンチュリーを感じさせるインテリアも見逃せない。ここにあるのは、かつて豊かだったアメリカの残像でもあるから。