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夫婦喧嘩•みかんの陣

夫婦喧嘩は、ラブストーリーよりも突然始まる。

私は、基本的にはベジータさんの言動については興味を持たないのだけど
鼻で笑うような相手をバカにしたような仕草が、心底嫌い。
自分がやられてるわけじゃないのにイラッとする。

日曜日。
私は夕方から家事をサクサクとこなして、早めに夕飯を食べようとしていた時
夫婦喧嘩は突然訪れた。

午後にベジータさんのいい時間に買い物に行って(もちろん事前予告なし)
箱みかんを「お前好きだから買ってやる」と言ったのに
酒売り場ででっかい角ウイスキーが激安だったからと、財布の中身ギリギリで購入。
みかんの代金は私が払うことになった。

コイツ…詐欺師か?(←どっちかというとアカサギね)

無事帰宅して
家事をしながら、ピヨくんに宿題の残りをするように伝えて
「このみかん、どこに置こうか?」
とベジータさんに声をかけたら

「は?何で俺に聞くの?(笑)」

完全にバカにしてる。
カッチーンときた。

イライラしながらも家事を続行する私。
そこに、そのイライラを感じ取ったベジータさんは
「お前さ、せかせかし過ぎなんだよ。周りの迷惑考えろ」
と言い出すわけで

せかせかしていないし!
家事やるのは当たり前だし!!
何ならお前の方が迷惑だし!!!

手伝うつもりもないなら、黙ってそこに座っててくれと思う。

私はベジータさんのバカにしたような態度が嫌だと話すけど、ゴリラには伝わらない
「お前がせかせかするから!ウホウホ!」
とずっと同じ話をしている。

そしてお得意の“お前は全てにおいて間違っている“という話をし始めた。 
今回は外出編。車の乗り方が悪いとか、俺への気遣いがないとか…

確かに私は“離婚しない“を公言してきたけれど
耐えられない場合は腹を括るつもりでいる。
要は『離婚はいつでもできるから、しない』というだけ。
それをベジータさんは「嫁が俺のことを好きすぎて離れない」と思って周りにも言っていたことを私は知っている。

「あのね、もうあなたの今話してることなんてどうでもいいのよ。勝手に言ってればいいよ。その代わり私の見えない所に行ってください」

人生何回目か分からない離別を提案する。
こうなるといつもの「子供の親権は云々」とか言い出すパターン。いい加減学んでくれ。
「大丈夫。どんな選択も受け入れるから!」
親指立てる妻。
そして、最後に言いたかったことを言う。

「あなたはどう記憶を自分のいいように書き変えたか知らないけどね
私、あなたと離れることは全然嫌じゃないの。
こないだまでは子供と離れたくなかったけど
子供達の決めたことを元に、これからのことを考えていけばいいんだって思えたから
もうね、あなたにしてもらいたいことは何もないのよ。
せめてこちらの迷惑にならないように生きていて欲しいだけ」

最後の最後に

「あなたが勝手に人の家に転がり込んできたくせに偉そうにすんな」

完走。タカチセはこの長い夫婦生活を完走した。
誰か、インタビューしてもらおうかな。

頭の中ではベジータさんの荷物はどこにあって、どのくらいの箱に詰めたらいいかを考え始めていた。
ここまで言ったんだから、あのプライドしかない人間が私と一緒にいようと思うわけがない。

いきなり立ち上がったベジータさんは

「なんで!なんでみかん如きでこんな話になるんだ!」

物言わぬみかんのせいにして、この喧嘩を有耶無耶にしようとしている。
みかんには何の罪もない。

この男…何を考えている?(←ドラマ風)

私が呆然としていると、ドアをノックする音。
何も知らないチョコちゃんが「父ちゃんお風呂お願いしまーす」と言いにきた。
すかさず動き出すベジータさん。
「チョコちゃんを待たせたらいけないよね!」
普段散々待たせるのに。

こうして、ゴールだと思った結婚生活の延長が決定した。

走り抜けてしまった私は、この日は満身創痍。
iPhoneに今日のことをメモして(後からnoteに書くため)ソファーでグッタリしていると、隣で夕飯を食べていたベジータさんが
「この野菜、なに?」
と話しかけてきた。

「それ、ばあばが作ったスティックセニョールだよ」

ばあばこと祖母が毎年大量に作っていて
我が家の食卓にも何度も登場している。
それを、今初めて食べたような話をするベジータさん。
記憶喪失の可能性が高い。

しばらくスティックセニョールについて話をして
極度の疲れから寝室へ逃げた。

翌朝も恐る恐る話しかけてくる。
正直、こっちの方が怖い。
その日は有休消化で休みをとっていると言って、朝はゆっくりしていた。

私がチョコちゃんを保育園に送るため車に乗ろうとすると
なぜかその後ろをついてくる。背後から狙われた…
できるだけ見ないように車の中で準備をしていたら、チョコちゃんが

「ねぇ、ずっと見てるよ?早く行ってあげよう」

と気遣いをみせた。
とりあえず手を振ってみると、満面の笑み。
よかったねー…(涙)

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