名演奏としてのアブラヴァネルのチャイコフスキー(MUSE2023年5月号)
モーリス・アブラヴァネルはギリシャ出身のユダヤ人指揮者。若き日には大戦間のドイツでクルト・ヴァイルの紹介などで活躍していましたが、ナチスの登場によりドイツを追われて渡米した多くの音楽家たちの一人でした。彼が落ち着いたのはユタ州ソルトレイクシティ。モルモン教の街としても名高いこの地で長大な残響を誇る大ホールを拠点とするこのオーケストラを彼は育成し中興の祖とまで呼ばれるに至り多くの録音を遺しています。その芸風は世界最長とさえ呼ばれるホールの残響の長さが大きく影響したもので、旧大