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漢文句法:解説

高校生のための漢文句法解説・演習を目的とするページです。
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1・再読文字

★基本知識:説明の空欄を補充!

再読文字は二度訓読する文字である。一度目は副詞的に読み、二度目は助動詞動詞として読む。訓読では一度目は漢字の右の読みに従い、二度目の読みは左に従う。書き下し文では、一度目は漢字で書き、二度目に読むときには平仮名で書く。再読文字は次の九字。未・将・且・当・応・須・須・猶・盍(蓋)。基本的にはひとつひとつの読みと意味を覚えるしかない。


「➀~②」と読み(③~④)という意味。未知を訓読すれば「➄」であり、「➅」という意味である。例えば、未然形なら「⑦」と訓読され、まだそうなっていない状態(打消、推量、仮定など)を主に表すのに対して、已然形を訓読すれば「⑧」であり、すでにそうなっている状態(順接・逆接の確定条件)を表す表現に用いられる。
▲空欄の答え
→ 
➀②いまダ~ず・③④まだ~ない・➄いまだしらず・➅まだ知らない・⑦いまだしからざるかたち・⑧すでにしかるかたち

将・且
ともに「➀~②」と読む。将・且の二字の使い分けについては、明確な区別はない。二つの使われ方があり、ひとつは、すぐにも起きそうな事態・状況を表す場合。もうひとつは、すぐに実行しようとする意志を表す。意志の有無ということになるが、ともに「~セントス」という言い方で覚え、「~しようとする」と解釈すればよい。例えば、雨将降は「③」と読み、前者のケースとして(④)という解釈をする。将行は「➄」と読み、後者のケースとして(➅)と意味を取る。「欲ス」についても同様なことが言え、意志だけでなく、花欲然が(⑦)と読まれ、「今にも花が咲こうとしている」という無意志の状態も表す。
「まさニ~セントす」を、試験で「まさニ~べシ」と混同する誤りが多い。注意したい。
▲空欄の答え
→ 
➀②まさニ~セントす・③あめまさにふらんとす・④今にも雨が降ろうとしている・➄まさにゆかんとす・➅(今にも)行こうとしている(行くつもりだ)・⑦はな もエントほっス

当・応・宜・須は「べし」のグループであることを意識して覚えよう。漢文と古文の「べし」の用法には違いがあるが、基本的には「スイカトメテ」を押えておく。

当・応
ともに「➀~②」と読まれる。基本的な意味は「」はその字からわかるように(③)。「」は基本的に(④)だと言われる。ただし両者は混同して使われる例が非常に多く両方を覚えておく必要がある。今、基本に従えば、当知は「➄」と読まれ(➅)という解釈され、応知は「⑦」と読まれ(⑧)という意味を表す。
▲空欄の答え
→ 
➀②まさニ~べし・③当然・④推量・➄まさニしルべシ・➅当然知っているはずだ・⑦まさニしルべシ・⑧きっと知っているだろう


「➀~②」と読まれる。「べし」の意味としては(③)で(~④)という訳をとる。従って宜知なら「➄」と読まれ(➅)という意味。「宜」は「状況に適っていること」を表す「適宜・便宜・時宜」などの熟語からもわかるように「よろしい・よい」という字義である。ちなみにこの字は「なるほど、もっともだ」という意を表す形容動詞として「(⑦)ナリ」と読まれることも知っておきたい。
▲空欄の答え
→ 
➀②よろシク~べし・③適当・④のがよい・➄よろしくしるべし・➅知るのがよい・⑦むべ(なり)


「➀~②」と読まれる。動詞「す」に助動詞「べし」がついた「すべし」がク語法(例えば「曰く・老いらく」などと同じ)によって「すべからく」と変化。スイカトメテの中では「当然」のニュアンスが該当するが、どうしても必要な条件を(③)条件などと言うように、「必③・必④」の意味であり、③のニュアンスとして「ぜひとも~(➄)」、④のニュアンスとして「~する(④)がある」などと解釈される。須知は「➅」と読み(⑦)という意味である。
▲空欄の答え
→ 
➀②すべかラク~べし・③必須・④必要・➄しなければならない・➅すべかラクしルべシ・⑦知る必要がある・知らなければならない


「➀~②」と読まれ(③~④)という意味。同じ働きをする字に「➄」がある。過猶不及で覚えるといい。これは「➅」と読み、「やり過ぎは(⑦)」という意味である。一日に30分しか勉強しないのはだめだが、20時間やったらそれもだめだということだ。ちなみに「過ぎたことはもう取り返しがつかない」と誤って理解している人がいる、注意。
▲空欄の答え
→ 
➀②なホ~ノごとし・③④ちょうど~のようだ・➄由・⑥すぎたるはなほおよばざるがごとし・⑦及ばない(足りない)のと同じだ

盍(蓋)
「➀~②」と読み、反語として詰問・勧誘の意味を表し「③~④。~➄」と訳される。反語形「➅」と「カフ」という音が同音であることから、この字もその意を持つようになった。これを「仮借」と言い、漢字の用法には非常に多い。『春夜宴桃李園序』に何不秉燭遊(何ゾ燭ヲリテ遊バざル)があるが、「人生は短い、美しい春の夜も短い。(⑦)」と同じ用法である。盍言は「⑧」と読み(⑨)という意味になる。
▲空欄の答え
→ 
➀②なんゾ~ざル・③④⑤どうして~しないのか。~した方がよい・➅何不・⑦どうして遊ばないのか、いや楽しもうよ・⑧なんぞいはざる・⑨どうして言わないのか。いや言った方がよい。

★ 例文で確認!→読みと意味はこちらへ

・もう少し長い例文で確認!


・白文で確認!


2・否定形


■ A・一般的な否定形

基本知識:説明の空欄を補充!
普通の否定については改めて意識せずとも大丈夫だろう。不・弗は「ず」、は「あらず」、無・莫・勿・毋は「なシ・なカレ」である。は注意したい。「母」ではない。毋妄言は(➀)と訓読する。
これら否定語は、基本的に返読されるから、動詞(用言)から返って読まれる。ついでに言えば、漢文では、目的語・補語→動詞(用言)→助動詞→否定語と返読されることを覚えておくと白文を読む場合に非常に役に立つ。「不可与金豚」ならば(②)だと簡単に読める。  
▲空欄の答え
→ 
➀もうげんするなかれ・②かねをぶたにあたふべからず


■ B・部分否定

基本知識:説明の空欄を補充!
部分否定は副詞の示す意味の一部を限定的に否定する句形。そう言うと難しく感じるが、例えば「必ず」という副詞を使い「A:明日は必ずしも雨ではない」と言った場合には、「B:明日は必ず雨だ」と言った場合に対して、明日が雨ではない可能性も含む表現となる。「必ず」という副詞の意味の一部を否定したことになる。このAの形を(➀)否定と言い、それに対してBを(②)否定と言う。
▲空欄の答え
➀部分・②全部

注意すべきポイントは二つ。
■ ひとつは副詞と否定語の位置関係。全部否定か部分否定かは、副詞と否定語の上下の位置関係によって決まる。すなわち、C:必不有とD:不必有という関係である。副詞が否定語の上にあるCの場合を(③)否定と言い、否定語が副詞の上にあるDの場合を(④)否定と言う。
これがコンガラガってしまう人は、否定語はその下の内容を否定していること考えればよい。C:必不有の場合、否定されているのは「有」であり、「必」という副詞は否定の対象外である。D:不必有の場合に否定されているのは「必有」という状態であり「必」という副詞が否定の対象範囲になっている。否定語が副詞を否定していれば(⑦)否定、していなければ(⑧)否定である。
▲空欄の答え
③全部・④部分・➄有・➅必有・⑦部分・⑧全部

■ もうひとつは「送り仮名」。部分否定の場合には全部否定に対して副詞の送り仮名が変化する。例えば次のような変化である。「常ニ→常(⑨)・必ズ→必(⑩)・甚ダ→甚(⑪)・俱ニ→俱(⑫)・尽ク→尽(⑬)」。ただ鬱陶しいことに「復タ」は例外で慣用的に部分否定の場合でも「復タ」と読まれる。
▲空欄の答え
→ 
⑨ニハ・⑩ズシモ・⑪ダシクハ・⑫ニハ・⑬クハ

■「不復~」についてはその意味も例外的で、部分否定的に、一度はしたが「(⑭)~ない」と訳す場合と、「(⑮)~ない」という否定の強調を表す場合がある。文脈がなくわかりづらいと思うが、遂迷、不復得路は「遂に道に迷って、(⑯)」という意味になり、来此絶境、不復出は「此の絶境に来て、(⑰)」という意味である。
▲空欄の答え
→ 
⑭二度とは・⑮決して・⑯二度とは道を見つけられなかった・⑰決して出なかった

■ また、否定語は「不」だけでなく「未・無・非」なども用いられる。不善之人、未必本悪であれば「不善の人(⑱)」と読まれ「悪いことをする人も全てがもともと悪人なのではない」という意味である。
▲空欄の答え
→ 
⑱いまだかならずしももとあくならず


■ C・二重否定

基本知識:説明の空欄を補充!

二重否定は否定語を二回重ねることで「~しないものはない」「~しないのではない」という強い否定を表す句形。これが基本。様々な否定語の重なりに慣れよう。ただ、必ずしも強い否定だけでなく、「~しないことはない」のような釈明的なニュアンスを帯びるものもある。

①単純な二重否定
否定語から否定語に重ねて読まれることで二重否定が作られる。例えば次のような形がある。読んでみよう。
無不A→Aセ(➀)
無莫非A→Aニ(②)
非不A→Aセ(③)
非無A→A(④)
例えば、吾矛之利、於物無不陥也(陥:とほす)「吾が矛の利なること、物に於いて(➄)」と読まれ(➅)と直訳できるが、これは(⑦)ことを強調した表現であり、二重否定が強い否定を表している。この用法が多いが、例えば、国が滅ぶ原因を示す文で「非無賢人」とあれば(⑧)と読まれ(⑨)という直訳で、国が滅ぶのは別の要因があるからだという釈明・弁明を表している場合もある。
▲空欄の答え
→ 
➀ざる(は)なし・②あらざる(は)なし・③ざるにあらず・④なきにあらず・➄わがほこのりなること、ものにおいてとほさざるなきなり・➅通さないものはない・⑦すべて通す・⑧けんじんなきにあらず・⑨賢人がいないのではない

■② 不可・不能・不得とともに用いられる二重否定
二重否定が「不可・不能・不得」など不可能、禁止を表す表現とともに使われることもある。「行かないことはできない・行かなければいけない」という意味である。二重否定の原則に従って直訳していけば正しい解釈に辿り着けると思うが、注意をしておきたい。次の各文を全てひらがなで書き下してみよう。
不可不行(➀)・不能不行(②)・不得不行(③)
▲空欄の答え
→ 
➀ゆかざるべからず・②ゆかざるあたはず・③ゆかざるをえず

③特殊な読みをする二重否定
●AとしてBせざる(は)なし
無A不B」を「AとしてBせざる(は)なし」と読む。この場合、Aという名詞が(➀)という送り仮名を取ることが大事。無夕不飲であれば「夕べ(②)」と読み、意味は(③)である。毎晩飲むということだ。同様に無人不泣は「④」と読み、無木不枯であれば「➄」と読まれる。
▲空欄の答え
 ➀として・②としてのまざるはなし・③飲まない夜はない・④ひととしてなかざるはなし・➄きとしてかれざる(こせざる)はなし

●ずんばあらず・副詞との組み合わせ
不~不A・未~不Aのように、不→不・不→未とつなげて読む場合、最初の「不」の下に「あり」を補い「➀」と読む(ず:連用形+ん:撥音便+は:係助詞+あり+ず)。
次のように否定語の間に副詞がはさまるケースについてもあり注意しておきたい。次の例文を読んでみよう。
不敢不泣
あへて(②):泣かないではいられない
未敢不泣
(③):これまで泣かないことはない
不必不泣
(④):泣かないとは限らない
未嘗不泣
(➄):泣かなかったことはない
▲空欄の答え
→ 
➀ずんばあらず・②なかずんばあらず・③いまだあへてなかずんばあらず・④かならずしもなかずんばあらず・➄いまだかつてなかずんばあらず

★例文で確認!→読みと意味はこちらへ


・白文でも確認!
10・毋妄言
11・吾矛之利、於物無不陥也 
12・不能不行 
13・無夕不飲 
14・未嘗不泣
15・不必有・必不有
16・不倶戴天 
17・未能悉去 
18・不善之人、未必本悪

3・ 疑問形  4・ 反語形

★基本知識:説明の空欄を補充!

A・疑問・反語形について

疑問反語は文書読解のKEYであり、大事にしたい。まず、疑問形と反語形は基本的に同型であると考えてみよう(ちなみに後で触れるが、疑問・反語・詠嘆は近接した表現であり、疑問の形で詠嘆を表す表現にも注意が必要である)。疑問は「~だろうか」と疑問を投げかけ、反語は、「~だろうか」という疑問の形で相手に問いかけながら、「いや、決して~でない」と反対の内容を強調して表現する句法である。そのどちらを取るかは文脈によって定める。古典文法における「係り結び」と同じだと考えればいい。

B・疑問詞

まず、基本的な疑問詞を取り上げてみたい。これらの疑問詞はその読みと意味を確実に覚えておきたい。とりあえずここでは疑問形の例文を中心に紹介する。

人物を問う
誰カ・孰カ
を用いる。古文でもそうだが、読みは「➀」で濁らない。英語で言えば「②」に当たる疑問詞である。誰加衣者(誰カ衣ヲ加ヘシ者ゾ)は(③)という意味になる。また、「誰ガ」(例:誰ガ家)となった場合は、英語では(④)に相当する。
▲空欄の答え
→ 
➀たれカ・②who・③誰が衣をかけたのか・④whose

事物を問う
何ヲカ・奚ヲカ
。読みは当然「➄」。英語で言えば「➅」に相当。於斯三者何先(斯ノ三者ニ於テ何ヲカ先ニセン)なら(⑦)という意味になる。
▲空欄の答え
 ➄なにヲカ・➅what・⑦この三つの中で何を先にしようか

場所を問う
安・何・悪・焉
などの漢字が当てられ、これを「⑧」と読む。英語の疑問詞では(⑨)。今蛇安在なら「⑩」と読み、(⑪)という意味になる。
▲空欄の答え
 ⑧いづクニ(カ)・⑨where・⑩いまへびいづくにかある・⑪今、蛇はどこにいるのか

理由を問う
何ゾ
胡・奚・曷・寧などの字も当てられる)の他に、何為レゾがあり、これは「⑫」と読む。また「安・悪・焉烏・寧」などが「⑬」と読まれ、これらで理由を問う。英語では当然(⑭)。「⑮~か」と訳す。何為不去也は「⑯」と読み、「⑰」という意味。君安与項伯有故(項白:人物・:古なじみ・知り合い)は「君(⑱)項伯(⑲)故有る」と読まれる。
▲空欄の答え
 ⑫なんすレゾ・⑬いづクンゾ・⑭why・⑮どうして・⑯なんすれぞさらざるや・⑰どうして去らないのか・⑱いづくんぞ・⑲と

分量を問う
幾何が用いられる。「幾何」の読みは「⑳」。英語では(㉑)に相当し、「㉒」という訳。幾年・幾人など今も普通に使うが、人長幾何は「人ノ長ハ(㉓)」と読まれ、人の身長は「㉔」という意味になる。
▲空欄の答え
 ⑳いくばく・㉑how・㉒どれくらい(どれほど)か・㉓いくばくゾ・㉔どれくらい(どれほど)か

比較・選択を問う
を用い、「㉕」と読む。英語の疑問詞では(㉖)。創業守成孰難は「創業と守成は(㉗)」と読まれ、「創業(新しく起こすこと)と守成(守っていくこと)とでは(㉘)か」という意味になる。「誰か」を表す「孰」と同じ字であるので、送り仮名があれば送り仮名で、白文の場合は文脈で「孰カ・孰レカ」を読み分ける。
▲空欄の答え
 ㉕いづレカ・㉖which・㉗いづれかかたき・㉘どちらが難しいか

■ 何如・如何
ここまで基本的に英語の疑問詞5W1Hを中心に整理してみたが、これら以外にどうしても注意が必要な疑問詞がある。A・何如(何若)と、B・如何(奈何・若何)。似ているが、「何」の位置がAとBでは逆になっている。「何」とセットになる字は「如・若・奈」と変化するので「何」が上にあればA、「何」が下にあればBという覚え方が単純で分かりやすい。四つの点で注意が必要。

◆ひとつ目は読み。両者とも「➀」と読まれる。ただ、B・如何(奈何・若何)の場合には「②」と読まれることが多いと承知しておくと、疑問詞としての働きを押さえる上でもよい。
▲空欄の答え
 ①いかん・②いかんせん

◆二つ目は問う内容の違い。Aでは(③)を問い(④)と解釈する。Bでは(➄)を問い(➅)と解釈する。以五十歩、笑百歩、則何如は「逃げたのが五十歩であるという理由で百歩逃げたものを笑ったとしたら(⑦)」という意味であり、如若何なら「⑧」と読まれ、「⑨」という意味になる。
▲空欄の答え
→ 
③状態・④どうであるか・➄方法・⑥どうするか・⑦どうであるか・⑧なんぢをいかんせん・⑨おまえをどうしようか

◆三つ目は、今の「如若何」に見られたように、Bの形で目的語を取る場合は、その目的語は「如(奈・若)」と「何」の間に挟み込まれるということ。例えば。次の意味になるように、次の漢字を並べ、読んでみよう。
A:これをどうしよう【何・如・之】
→漢字並び替え(⑩)読み(⑪)
B:わが民をどうしたらよいだろう【吾・如・民・何】
→漢字並び替え(⑫)読み(⑬)
C人に死があるのをどうしよう【死・何・有・奈・人】
→漢字並び替え(⑭)読み(⑮)
▲空欄の答え
→ 
⑩如之何・⑪これをいかんせん・⑫如吾民何・⑬わがたみをいかんせん・⑭奈人有死何・⑮ひとにしあるをいかんせん

◆四つ目は、反語の場合には、B「如何(奈何・若何)」しか用いられないということ。虞兮虞兮奈若何なら、(⑯)と読み、(⑰)と訳されるのがそれである。
▲空欄の答え
→ 
⑯ぐやぐやなんぢをいかんせん・⑰虞よ虞よお前をどうしようか。いやもはやどうすることもできない


C・終尾詞

終尾詞には、乎・邪・也・哉・与などがあり、文末におかれ、「⑱」または「⑲」と読まれる。古典文法で考えれば(⑳)助詞の文末用法に当たり、日本人としての語感を持っていれば普通に理解できる。ただ、Dに示す終尾詞の読みわけは大切。
▲空欄の答え
⑱や・⑲か・⑳係


D・疑問形・反語形の読みわけ

疑問形・反語形とも、基本的には三つの形がある。
①疑問詞・終尾詞がある場合
②疑問詞があり終尾詞がない場合
③終尾詞のみの場合

■ 疑問形 
①疑問詞+終尾詞
疑問詞があり、終尾詞がある場合は、文末を連体形+終尾詞:やと読む。例えば何為不去也は(①)、何不憎乎であれば(②)と読む。終尾詞は疑問の場合「か」と読み、「や」という読みは終止形につく場合ではないかと思うかもしれないが、「ぞ・・連体形」で文が終止していると考え「や」を添える。
②疑問詞のみ
疑問詞があり終尾詞がない場合は、疑問詞+係助詞・・連体形で読む。今蛇安在であれば(③)と読まれ、創業守成孰難であれば(④)と読まれる。係り結びを考えればよい。今蛇安在を「今、蛇安くにあるか」でも意味は通じると思うかもしれないが、漢文においては係り結びで読むことを基本とする。
③終尾詞のみ
終尾詞のみの場合は、基本的には終尾詞を「か」と読み、連体形・名詞+かの形を取る。ただ、ラ変動詞に終尾詞が接続している場合は、終止形+やと読まれる。不足乎であれば(⑤)と読むのが基本。聖人在乎なら(⑥)と読まれる。
▲空欄の答え
➀なんすれぞさやざるや・②なんぞにくまざるや・③いまへびいづくにかある・④そうぎょうとしゅせいといづれかかたき・➄たらざるか・➅せいじんはありや

■ 反語形 
反語のパターンも、基本的に疑問形と同形である。次に疑問形と同じ形で示すが、反語の文末は「⑦・⑧」が基本(例外あり)であり、疑問詞・・未然形+ン・ンヤという読みをすればいいと考えれば負担が少ない。
①疑問詞+終尾詞
疑問詞があり、終尾詞がある場合は、文末を未然形+ン+終尾詞:やと読む。燕雀安知鴻鵠之志哉なら(⑨)と読む。
②疑問詞のみ
疑問詞があり終尾詞がない場合は、文末を未然形+ン(ヤ)と読む。子安能為之足は(⑩)となる。末尾は、「ン」としても良いし、「ヤ」まで添えて「ンヤ」としても良い。
③終尾詞のみ
終尾詞のみの場合も、文末を未然形+ン+終尾詞:やと読む。吾不生也であれば(⑪)と読まれる。
・そのほかにもいろいろな読まれ方がある。人長幾何(疑問:ひとのたけはいくばくぞ)、如何不涙垂(反語:いかんぞなみだたれざらん)など。読み慣れる中で体にしみこませたい。
▲空欄の答え
→ 
⑦ン・⑧ンヤ・⑨えんじゃくいづくんぞこうこくのしをしらんや・⑩しいづくんぞよくこれがあしをつくらん(や)・⑪われいきざらんや


E・反語特有の形

反語には、疑問形にはない反語特有の形がある。次の四つである。

豈A乎
反語の代表的な形として頻出する。豈遠千里哉なら「①」と読まれ(②)という意味になる。「豈」については反語だけでなく、疑問や詠嘆の用法もあるので、注意したい。これについては4・詠嘆形の説明の★に示してあるので参照されたい。
▲空欄の答え
→ 
➀あにせんりをとほしとせんや・②どうして千里の道のりを遠いと思うだろうか(いや~)

敢不A
「あへて~ざらんや」と読まれる。「敢」は「しいて~する」くらいの意味だから、敢不言乎は「③」と読み「どうして(わざわざ)泣かないだろうか」という意味になる。この形で注意が必要なのは、この敢不:カンフに対し、不敢:フカンという形があること。不敢は「しいて~しない」という否定形。不敢泣であれば、「④」と読み、解釈は(➄)となる。敢不泣ならば反語である。全く意味が違うので特に白文では注意したい。
▲空欄の答え
→ 
③あへていはざらんや・④あへてなかず・➄しいて(決して)泣かない

独A乎
「独」は「ただ」とか「一人」という意味があるが、などの終尾詞を伴うと反語になる。だがら「ただ一人~」とつい訳してしまいたくなるが、それは不要。独畏廉将軍乎であれば(⑥)という解釈になる。
▲空欄の答え
→ 
⑥どうして廉将軍を畏れようか

何不A
これは再読文字の説明で一度触れた。この「カフ」という同音の「蓋・盍」に意味が転嫁した。読みは「(⑦~(⑧)」。勧誘・詰問の意味を表す。何不秉(とリテ)燭遊であれば「⑨」と読み、解釈は(⑩)となる。
▲空欄の答え
→ 
⑦なんゾ・⑧ざル・⑨なんぞしょくをとりてあそばざる・⑩どうして灯火を手にして遊ばないのか、遊べばよいのに

★疑問:例文で確認!→読みと意味はこちらへ

★反語:例文で確認!→読みと意味はこちらへ


5・詠嘆形

基本知識:説明の空欄を補充!

詠嘆形には三つのタイプがある。

①文末に詠嘆の助字を用いる形
文末に「➀」と読まれる詠嘆の助字を用いる。哉・矣・乎・夫・也・与・邪など様々な字が当てられる。これらは疑問反語の終尾詞群だとして理解し、その用法の中に詠嘆も含まれていると考えればよい。特別なフレーズとして已矣・宜矣がよく登場するが、前者は「②」と読まれ(③)という解釈。後者は「④」と読まれ(➄)という解釈である。
▲空欄の答え
→ 
➀かな・②やんぬるかな・③これまでだなあ・④むべなるかな・➄もっともだなあ

②文頭に感動詞を用いる形
もうひとつは、文頭に「➅」と読まれる嗚呼・噫・嗟・唉・干嗟・嗟乎などの字が用いられる。覚えきれないが、文章を読む中で雰囲気を捕まえたい。感動詞は独立性が強いので「ああ」の後に読点が打たれていることが多い。また文末に先ほどの詠嘆の助字を伴う形もある。これらは読めれば、それで大丈夫。
▲空欄の答え→ ➅ああ

■③疑問・反語の形を用いる
疑問・反語の形を用いて詠嘆を表すケースであり、これが大事。「どうして~だろうか」の形であるが、「(➀)~ことだ」と意味がとれれば詠嘆形である。何ゾA也豈ニA哉不亦A乎の三つの形を覚えておきたい。
▲空欄の答え
 ➀なんと

A:不亦A乎
この形は「亦たAならずや」と読み「なんとAではないか」という詠嘆を表す。論語に不説亦乎という有名な言葉があり「②」と読み(③)と解釈するが、「説」の読み方とともにこの例文で覚えてしまいたい。
▲空欄の答え
 ②またよろこばしからずや・③なんと喜ばしい

B:何ゾA也
例えば、是何楚人多也は「④」と読まれ「(➄)楚の国の人が(➅)」という解釈になる。でも、例えばこの例文は全く同じ④の読みで疑問を表し、例えば仮に白文で「⑦」と読めば反語の意になる。近年、白文で何ゾA也の形が詠嘆で問われることが多く、注意したい。
▲空欄の答え
 ④これなんぞそひとのおほきや・➄なんと・➅多いことだ・⑦なんぞそひとのおおからんや

C:豈ニA哉
例えば豈不誠大丈夫哉なら「⑧」と読み、「(⑨)本当の優れた男(⑨)」と解釈する。豈ニA哉については反語というイメージが強いが、B・何ゾA也がそうであったように、疑問や詠嘆も表す。
詠嘆の場合の特徴
・ひとつは、文末が否定語の終止形+やと読まれること。
・二つ目は豈不・豈非のように否定語と結びつくこと。これが詠嘆の必要条件だが、ただ十分条件ではなく否定語と結びついていても疑問や反語の場合はある。「不・非」を伴わなければ詠嘆ではないということである。
・三つ目は、詠嘆であるので、豈ニA哉のAにあたる部分は、状態や様子を表す、形容詞・形容動詞・体言+なりであることが多い。
・以上のことを整理すると、豈不A乎は「⑩」と読まれ、豈非A哉は「⑪」と読まれ、ともに「何とAではないか」という解釈をする。くどいが、例えば、豈不哀乎は、詠嘆で「⑫」と読まれ、反語なら「⑬」、疑問なら「⑭」と読まれることになる。細かな読みわけまできちんとわかっていなくてもよいと思うが、疑問、反語、詠嘆が近接した表現で、文脈によって考えなければいけないということは覚えておきたい。

▲空欄の答え
 ⑧あにまことのだいじゃうぶならずや・⑨なんと・⑨ではないか・⑩あにAならずや・⑪あにAにあらずや・⑫あにかなしからずや・⑬あにいはざらんや・⑭あにいはざるか

★例文で確認!→読みと意味はこちらへ

・白文でも読んでみよう。
40・嗚呼、天将棄予
41・呉王曰「善哉」
42・是何楚人多也
43・不亦説乎
44・豈不哀乎(詠嘆で読もう)
45・豈不言乎(反語で読もう)
46・豈不言乎(疑問で読もう)

6・使役形

基本知識:説明の空欄を補充!

使役は「人を使って何かを(➀)」という表現である。文語文法では使役を表すのに(②・③・④)の助動詞を用いるが、漢文(あるいは漢文訓読長の文章)では専ら(➄)が用いられる。
▲空欄の答え
→ 
■➀させる・②③④す・さす・しむ・➄しむ

①使役の助字
この「➄」に当たる字として「➅・⑦・⑧・⑨」などがあり、これらを使役の助字と呼ぶ。それぞれ順に、人を使って~させる、人に命令して~させる、人に教えて~させる、人を派遣して~させる、というニュアンスになるが、基本的に「・・に~させる」と訳せれば問題はない。
▲空欄の答え
→ 
➅⑦⑧⑨使・令・教・遣

②使AB
これらの使役の助字を用いた使役形の典型として大切なのは、使AB(A:人物など・B:動詞の未然形)という表現。「A(⑩)B(⑪)」と読まれる。よく間違うのは、つい「AニBセシム」と読んでしまいがちになることだ。
もう一つ余分なことだが、「AヲシテBセシム」と覚えて使人書を「人をして書かせしむ」と読んでしまいがちになるが、「Bセ」は動詞の未然形をサ変で代用しているだけなので「使人書」は「人をして(⑫)」が正しい。まとめとして一つ読んでみると、有使涓人求千里馬者は「⑬」と読まれる。
▲空欄の答え
→ 
⑩をして・⑪せしむ・⑫書かしむ・書せしむ・⑬けんじんをしてせんりのうまをもとめしむるものあり

③使役を暗示する字から使役を読む
使役の助字がなくても、命・説・召・属などの使役を暗示する動詞がある場合、送り仮名に「しむ」を送り、使役の形にして読む表現。「命じて~させる・説得して~させる・呼び招いて~させる」などの意。例えば命故人書之なら「⑭」と読み、説夫差赦越なら「⑮」と読む。
▲空欄の答え
→ 
⑭こじんにめいじてこれをしょせしむ・⑮ふさにときてえつをゆるさしむ

■その他、文脈上使役に読む場合もあるが、「シム」が送られていれば自然と使役であることが理解できるので、特に注意する必要はない。

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47・有使涓人求千里馬者
48・命故人書之


7・受身形

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受身は「人に何かを(➀)」という表現。文語文法では受身を表すのに「②・③」の助動詞を用いるが漢文でも同じ。
▲空欄の答え
→ 
➀される・②③る・らる

■①受身の助字
これに当たる字として「④・➄・➅・⑦」などがあり、これらを受身の助字と呼んでいる。「見」という漢字に傍線が引かれ読みが問われていたら、まずこの「る・らる」であって、そこでもし「み(る)」と答えてしまう人は小学校に戻るべきだ。厚者為戮、薄者見疑なら、「あつきものは(⑧)」と読まれ、信而見疑、忠而被謗なら「しんにして(⑨)」と読まれる。受身形ではまずこれを大事にしたい。
▲空欄の答え
→ 
④➄⑥⑦見・為・被・所・⑧りくせられ、うすきものはうたがはる・⑨うたがはれ、ちゅうにしてそしらる

②為A所B
受身の大切な慣用表現として為A所Bという形がある。これは「⑩」と読まれ(⑪)という意味になる。先即制人、後則為人所制は「先んずれば即ち人を制し、後るれば則ち(⑫)」と読み「他人より先行すれば人を制圧でき、後れを取れば(⑬)」という意味。ちなみに「為A所B」は「AのためにB(⑭)」と読むこともできる。
▲空欄の答え
→ 
⑩AのBする所と為る・⑪AにBされる・⑫人の制する所となる・⑬人に制圧される・⑭Bせらる

■③A於B
もう一つ受身形で注意しておきたい形がある。それは置き字「於・于・乎」を用いた表現。前置詞の「於・于・乎」は、時間・場所・対象・目的・起点などを表し「ニ・ヲ・ヨリ」などという送り仮名を引き出してくる働きがあるが、受身の場合にも用いられる。例えば、辱於奴隷人之手は「⑮」と読まれるが、動詞と「於」が組み合わされることで「~ニ~ル(ラル)」という受身の意味が引き出されてくる。もう一つ例をあげると、人喰虎なら「⑯」と読まれるが、人喰於虎なら「⑰」と読まれ、全く違う意味になるという具合である。
蛇足的に補足すると、比較形のところでまた触れるがA於Bという形は比較の場合にも用いられ、その場合は、Bの送り仮名として「⑱・⑲」が取られる。A於Bという形に受身形、比較形の用法があることは知っておくべきである。
▲空欄の答え
→ 
⑮どれいじんのてにはずかしめらる・⑯ひととらをくらふ・⑰ひととらにくらはる・⑱⑲より・よりも

■その他に、文脈上受身に読む場合もあるが、「る・らル」が送られていれば自然と受身であることが理解できるので、特に注意する必要はない。

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49・信而見疑、忠而被謗
50・先即制人、後則為人所制 
51・辱於奴隷人之手
52・人喰虎・人喰於虎

8・仮定形

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仮定形は「もし~(➀)」という順接の場合と、「たとえ~(②)」という逆接の場合がある。形としては仮定の副詞や接続詞を用いたもの、文脈から仮定を表す場合などがあるが、例によってポイントを簡単につかむとすれば、仮定を表す漢字が読めるかどうか、古典文法の仮定条件の「ば」が意識できるかどうかの二つに整理して考えたい。
▲空欄の答え
→ 
➀なら・②としても

■①仮定を表す字
仮定を表す字(副詞・接続詞その他)が読めれば基本的に問題なく意味が取れるのが仮定形である。
如シ・若シ
仮定形では「③」と読む。読めれば分かる。ただ気をつけなくてはならないのは、如・若にはたくさんの読みがあり、例えば「山を為るが如し」など比況形では「④」と読み、百聞不如一見など比較形では「➄」と読まれる。または「お前」という意味で「➅」とも読まれ、は動詞として「⑦」と読まれたりもする。文脈に注意しなければいけない。読みの問題や白文の問題では、基本的に「もし」は文頭に置かれやすいこと、下に「もし」を受ける接続助詞「バ」の存在・「ば」の示す条件のニュアンスを確認することが必要である。
苟クモ
は「⑧」と読む。これは多分、日常の語感にはなく意識して覚える必要がある。基本的に順接の仮定を表し「(⑨)~ならば」という意味である。
 縦ヒ
は「⑩」と読む。(⑪)という意味をとればいい。逆接の仮定を表している。鬱陶しいが「縦」のほかにも、仮令・只使・縦令・設令・仮設・仮使など同じ読みで使われる。覚えきれなかろうと思う。ルビが送られていなければ「○ヒ~トモ」という二つの送り仮名から類推しよう。
雖モ
は「⑫」と読む。これも読めてしまえば何でもない。逆接の仮定で「たとえ~(⑬)という意味。「雖」に返る直前の字には必ず「ト」が送られるので、「ト雖モ」と覚えてしまうと良い。
・以上が仮定形で読めて欲しい字だが、他にも例えば、微カリゼバは「(⑭)カリセバ」、不者ンバは「(⑮)」などがある。不者は覚えておきたい。
▲空欄の答え
→ 如
→ ③もシ・④ごとシ・➄しク・➅なんぢ・⑦ゆク・→ ⑧いやしクモ・⑨もし・かりにも・→ ⑩たとヒ・⑪=たとえ~・→ ⑫いへども・⑬としても・その他→ ⑭な・⑮しからずンバ

■②接続助詞「ば」
他にも仮定形には様々な形がある。例えば「AヲシテBせシメバ」「今Aバ」「Aバ則チB」(「レバ則」の形をとることが多い)など。しかし神経質になり過ぎずとも、文脈をたどる中で「バ」の存在が自然と仮定であることを教えてくれる。「バ」は接続助詞で、古典文法で(⑯)形+「ば」が(⑰)条件、(⑱)形+「ば」が確定条件を表すとことを学習した。これに従えばよい。ただ、漢文においては、その読みが江戸時代に整備されたこともあって、このあたりの区別が厳密ではなく、未然形+「ば」はもちろん、已然形+「ば」も慣用的に仮定条件に用いられる。
さらに、如詩不成は普通、「如し詩(⑲)」と読まれるが、これは「如し詩ならずは:ず+係助詞」を漢文的な読み方で読んだものだ。同じように、連用形+「んは」の形で「なくんば・ずんば・べくんば」のような読みがあることも読み慣れて承知しておきたい。
▲空欄の答え
→ 
⑯未然・⑰仮定・⑱已然・⑲ならずんば

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53・如詩不成、
54・苟能充之、
55・縦彼不言、籍独不愧於心乎 ※籍:人名・愧:はズ
56・雖有舟、
57・越官則死(ころさる)
58・民無信不立
59・非其君不事
60・使臣用之、則君反制於臣矣
61・今王必欲致士、先従隗始 ※隗=人名


9・限定形

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限定形はその名の通り、「(➀)~(②)」と「限定」する表現である。ただ、古典文法の副助詞「のみ」に限定と(③)の意味があるように、漢文においても文脈によっては(③)のケースもあることも少し頭に入れておこう。限定形については限定形を表す副詞、文末の用いる助字が読めればそれで基本的に問題はない。

■①限定の副詞
限定形を表す副詞には二つあって、一つは「④」と読まれる副詞。惟・唯・只・徒・但・祇・特などの字がこれに該当する。もう一つは「独」で「➄」と読まれる。ともに「➅」という送り仮名を取り(省略される場合もある)、「ただ~(⑫)」という意味を取ればよい。
また限定の副詞に呼応して「ノミ」という送り仮名が送られる場合は、限定の副詞の次の字に送ることを基本とする。

■②文末の助字
文末に用いる助字は「⑬」と読まれる字の一群である。基本的な限定の助字は「⑭」。それに接続詞の「而」をつけて意味を強めた「⑮」。それに強意の助字である「矣」をつけて更に意味を強めた「⑯」も「ノミ」と読まれる。また「而已」の「ジイ」という音を借りた当て字として「⑰」「⑱」も「ノミ」と読まれる。この他にもこれらの字を組み合わせたものもあるが、この五つの基本をしっかり頭に入れよう。

▲空欄の答え
■➀ただ・②だけ・③強意■④た・➄ひと・⑥のみ・⑦ただ・⑧のみ・⑨ひとり・⑩のみ・⑪ただ・⑫=だけ■⑬のみ・⑭已・⑮而已・⑯而已矣・⑰⑱耳・爾

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62・惟有黄昏鳥雀悲
63・今独臣有船
64・此妄言耳 
65・夫子之道、忠恕而已矣

10・累加形

累加形もその名のごとく、あることの上に更に他のことを付け加える表現であり、形として否定語+限定の副詞と、反語+限定の副詞という二つのパターンがある。覚えるのに大変な句法だが、基本的には否定形・限定形・反語形が組み合わされたものだと考え、それぞれの句法に従えば大丈夫と考えるといい。

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■①否定語+限定の副詞の場合
「不・非」という否定語に「たダ(惟・唯・只など)・独り」という限定の副詞が組み合わされ、「(➀)~(②)、~だ」という意味になる。このとき注意しなければならないのは「惟・唯」などが「たダ」ではなく、「③」と読まれることで強調されているのが累加形の特徴であることだ。不唯Aは「④」と読まれ、非唯Aなら「⑤」と読まれ、ともに「⑥」という意味になる。例えば、不惟愛之、憎之ならば「⑦」と読み、「ただこれを愛するだけでなく、憎むのだ」という意味になる。
▲空欄の答え
→ 
①ただ・②だけではなく・③ただに・④ただにAのみならず・⑥ただにAのみにあらず・⑦ただにこれをあいするのみならず、これをにくむ

■②反語+限定の副詞の場合
「豈ニ・何ゾ」という反語を表す字が、「たダ・独り」という限定の副詞と組み合わされ「(⑧)~だけだろうか、いや~(⑨)」という意味になる。この場合でも限定の副詞「惟・唯」などが「たダ」ではなく「⑩」と読まれることに注意しなければならない。例えば、豈唯愛ならば「豈に唯に愛するのみならんや」と読まれ、(⑪)という意味になる。また例えば、何独愛ならば「⑫」と読まれ、「どうして愛するだけだろうか、いや愛するだけではない」という意味になる。「独リ」が反語で用いられるときには「~だけ」という意味をとらないことも押さえておこう。
▲空欄の答え
→ 
⑧どうして・⑨だけではない・⑩ただに・⑪どうしてただ愛するだけだろうか・⑫なんぞひとりあいするのみならんや

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・白文でも読んでみよう。
66・不惟愛之、憎之 
67・豈唯愛 
68・臣不惟能造舟、而又能操舟 
69・故郷何独在長安

11・比較形 

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比較形は無論、二つ(以上)のものを比べて比較する形。次の三つの形を覚える。

■①A於B
前置詞として用いられる「➀・②・③」を用いた表現。これらは、時間・場所・対象・目的・起点などを表し、「ニ・ヲ・ヨリ」などという送り仮名を引き出してくる働きがあるが、比較の場合にも用いられる。於于乎があることによって、比較の対象となる語に「④・➄」という送り仮名が取られる。「モ」は強めだからどちらで読んでも意味は変わらない。
同じ形が動詞と於于乎が組み合わされることで「~➅~ル(ラル)」という受身の意味が引き出されてくることも大事。受身の場合、Aは動詞だが、比較の場合には状態を表す形容詞がAに来ることが基本。例えば冬寒於秋であれば(⑦)と読む。意味は言うまでもない。
▲空欄の答え
→ 
➀②③於・于・乎・④➄より・よりも・➅に・⑦ふゆ、あきより(も)さむし

■②A不如B
「不如」、あるいは「不⑧」であっても同じ。「AはBに(⑨)」と読み、「AはBに(⑩)」という意味。いわゆる劣等比較の表現。難しいことを考えるより、百聞不如が「⑪」と読まれ「百回聞くことは(⑫)」という意味であることを覚えてしまえば大丈夫。
▲空欄の答え
→ 
⑧若・⑨しかず・⑩及ばない・⑪一見・⑫一回見ることに及ばない

三つ目は最上級の形。これには二つの表現がある。

■③A莫B於C
「AはCより(も)B(なる)はなし」という形で「AでBよりCなものはない」という意味を取る。水莫大於海であれば「水、海より大なるは莫し」と読まれ「水に関しては(⑬)」という意味になる。禍莫大焉なら「⑭」と読まれ「不幸でこれよりひどいものはない」という意味になる。
▲空欄の答え
→ 
⑬海より大きいものはない・⑭わざわい、これよりだいなるはなし

■③A莫如B
最上級のもうひとつの表現である。「如」の位置に「⑮」という字が使われても同じ。これを「AはBに(⑯)」と読み「AではBに(⑰)」という意味を取る。例えば衣莫若新、人莫若故なら「いはあたらしきにしくはなく、(⑱)」と読み、「衣服は新しいものに及ぶものはなく、(⑲)」という意味になる。いいことばだ。
▲空欄の答え
→ 
⑮若・⑯しくはなし・⑰及ぶものはない・⑱ひとはふるきにしくはなし・⑲人は古なじみに及ぶものはない

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・白文でも読んでみよう。
70・冬寒於秋
71・百聞不如一見
72・水莫大於海
73・衣莫若新、人莫若故

12・選択形

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選択形は二つのものを比べてどちらかを選ぶ形。「二つを比較して、どちらかと言えば○○だ」というニュアンスである。いろいろバリエーションがあって複雑そうに見えるが、ざっくり言ってしまうと、「寧」が「➀ろ」と読まれ、「与其B」が「そのB(②)りは」(このときの「其」は語調を整える働きであり特に意味を取らないで構わない。)と読まれる事を押さえておくことが一番大切だ。
▲空欄の答え
 ➀むし・②よ

①寧A無B・寧A不B
これは「寧ロAストモBスル無カレ(Bセズ)」と読まれる。理屈を覚えようとするより、次の例文を暗記してしまえばそれでいい。「寧為鶏口、無為牛後」。(③)と読み、「鶏口(小さいものの頭)」になっても「牛後(大きいものの尻)」になるなとしている。
▲空欄の答え
→ 
③むしろけいこうとなるとも、ぎゅうごとなるなかれ

②与其B~の形
与其B寧A
其のBセンよリハ寧ろAセン・セヨ
与其不如A
其のBセンよリハAするに如カず
与其孰与A
其のBセンよリハAに孰与いづレゾ
このような形があるが、与其B○Aは「AよりはBの方がよい」ことを示す「(むしろ)・不如(及ばない)・孰与・孰若(どちらだ)」が組み合わされているだけだと考えれば負担感が少ない。与其不孫也、寧固なら「④」と読み、意味は(不孫:尊大・固:頑固)「⑤」となる。また、与其有楽於身、孰若無憂於其身なら「⑥」と読まれ、(⑦)という意味である。
▲空欄の答え
→ 
④そのふそんならんよりは、むしろこなれ・➄尊大であるよりはむしろ頑固である方がよい・⑥その身に楽しみあらんよりは、その心に楽しみあるにいづれぞ・⑦肉体的な楽しみよりは、心に心配がない方がよいのではないか。

★例文で確認!→読みと意味はこちらへ

・白文でも読んでみよう。
74・寧為鶏口、無為牛後
75・与其不孫也、寧固 
76・与其有楽於身、孰若無憂於其身
77・新垣結衣孰与堀北真希
78・其生而無義、固不如烹(烹=にラルルニ)


13・抑揚形 

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抑揚形のは「おさえる」、は「あげる」という意味。すなわち抑揚形は「AでさえBである」とまず程度の低い・軽いAを軽くおさえて言い、次に「ましてCはなおさらBだ」と程度の高い・重いCを強く揚げることで「CがBだ」ということを(①)する表現である。つなげれば「AでさえBである。ましてCはなおさらBだ」ということになる。
例えば「この問題はA君でさえ解ける。まして自分ならなおさら簡単に解けるはずだ」と言うことで「僕の頭の良さ」を強調している。古典文法の副助詞「②・③」の「類推」が「~(④)」と訳され(「だに~まいて~」の構文)より程度の重いものを「類推」させるのと同じである。
▲空欄の答え
→ 
①強調・②③だに・すら・④さえ

■基本的な抑揚形はA(ハ・スラ)B、況C乎。これは「⑤」と読み「AでさえBなのだから(⑥)Cなら(⑦)」という意味になる。晩秋寒、況冬乎なら「晩秋は寒し。(8)」と読み、「晩秋は寒い。(9)」となる。文末にの字がなくても「ヲヤ」を送り「況ンヤ」に呼応させる場合もある。
▲空欄の答え
→ 
⑤Aすら(は)B。いはんやCをや・⑥まして・⑦なおさらだ・⑧いはんやふゆをや・⑨まして冬ならなおさらだ

■ただ当然、いろいろなバリエーションはあって、前半部分がAハBAスラBAスラ且ツBAスラ猶(尚)ホBAスラ且ツ猶ホBなど様々な形がある。ただ「且ツ・猶(尚)ホ」は抑揚形ではその意味をあえて訳す必要がない。したがって抑揚形の前半部の基本的な解釈はAスラBだと承知していればいい。「スラ」は先程書いたように「類推」を表し「~(⑩)」と訳される。死馬且買之五百金、況生馬乎なら「死馬(⑪)且(⑫)之を五百金に買ふ。(⑬)生ケル馬(⑭)」と読まれ「死んだ馬(⑮)大金で買ったのだから(⑯)生きている馬は(⑰)高く買うと思うだろう」と意味を取ればいい。
▲空欄の答え
→ 
⑩さえ・⑪すら・⑫つ・⑬況んや・⑭をや・⑮でさえ・⑯まして・⑰なおさら

■一方で後半部分にもいくつかのバリエーションがある。
況ンヤCヲ乎が、況於C乎(況ンヤCニ於イテヲヤ)なることも多いが、これは「Cニ於イテヲヤ」と読めればクリアできる。また、而ルヲ況ンヤCヲ乎となっていれば「而ルヲ」を(⑱)で訳せばいい。
また後半部が安C乎という反語の形を取ることもある。安C乎は「⑲」と読まれ「⑳」という意味を取る。「何ゾ・誰カ」など他の反語形が来ることもある。反語形を理解し、素直に反語の意味を取ることができれば、文意を読み損ねることはない。蛇足的に言えば「況ンヤ~ヲヤ」も「言おうか、いや言うまでもない」という反語表現である。
▲空欄の答え
→ 
⑱逆接・⑲いづくんぞCせんや・⑳どうしてCするだろうか、いやしない。

★例文で確認!→読みと意味はこちらへ

・白文で確認!
79・死馬且買之五百金、況生馬乎 
80・庸人尚羞之。況於将相乎
81・富貴則親戚畏懼之、貧賤則軽易之。況衆人乎
82・臣死且不避、卮酒安足辞


14・願望形

基本知識:説明の空欄を補充!

願望にもさまざまなかたちがあるが、次の二点は押さえておく。

■願望形の代表的な形は文頭に、請フ・願ハクハ・庶幾ハクハ(庶ハクハ・冀ハクハ)を置く形である。庶幾ハクハ・庶ハクハ・冀ハクハは「➀」と読むが、これは請フ・願フの二つを合わせて言ったもの。これは読めることが大事。意味はどれも「(②)~」と訳すと記憶しておけばよい。
■大切なのは文末が「ン」という意志・希望の助動詞で結ばれていれば、自己の願望を表し「(③)~(④)」と意味を取り、文末が(➄)形で結ばれていれば、相手への希望を表し「(⑥)~(⑦)」と意味を取ることを押さえたい。
▲空欄の答え
→ 
➀こひねがはくは・②どうか・③どうか・④させてください・⑤命令・⑥どうか・⑦してください。  

★例文で確認!→読みと意味はこちらへ

・白文でも読んでみよう。
83・王好戦。請以戦喩。
84・願大王急渡。
85・王庶幾改之。


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