トンボの不思議
◉トンボ という昆虫は、非常に日本ではなじみが深い存在です。日本の別名には大和や扶桑、大八洲島国や葦原中国、長いものだと豊葦原之千秋長五百秋之瑞穂国などがありますが、大日本豊秋津洲という美しい言葉もあります。秋津とはトンボのこと。それぐらい昔から、トンボが飛び交う国だっのでしょう。田植えの頃の春先には、水田で産卵する姿が見られ、夏にはオニヤンマ やシオカラトンボが飛び交い、収穫の秋にはアキアカネ群れをなして飛ぶ姿は、日本の原風景のひとつですからね。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、アキアカネの写真です。
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■最強昆虫の一角に■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。スズメバチを捕食できる昆虫は、カマキリやクモなど、そう多くないのですが、オニヤンマとか平気で襲いますからね。ギンヤンマもたまに、スズメバチを襲いますが、大きさによっては逆襲されることも。やはりスズメバチと言っても、キイロスズメバチなど種類は多く、最大種の大スズメバチは巨大で、大顎に毒針と、武器も多く。確実に勝てるのは、オニヤンマ ぐらいでしょうか。
なので オニヤンマの精巧な模型のバッジが、スズメバチ除けのグッズになるほど。3億年前という、かなり古い時代に出現したのに、未だに最強昆虫の一角です。それだけ、完成されてるんですねぇ。これはサメもそうで、約4億年m前の古生代デボン紀に出現したのに、三畳紀に出現した魚竜とか、モササウルスなどの海棲爬虫類、現在のイルカやクジラなどの鯨類とか、いろんな海棲生物が地球上には存在しましたが、流線型の胴体に胸ビレと背ビレと尾ビレと、サメの形状に収斂進化するわけで。
■昆虫の進化と羽根■
でも、トンボの形に収斂進化する昆虫はいないです。コレがクモだと、それに擬態する昆虫はいるんですが……。主にアリの仲間ですけどね。またカマキリにも、カマキリモドキというよく似た、別系統の昆虫がいます。その意味でもトンボは、比類なき孤高の王者。古代石炭紀に存在したメガネウラとか、30センチまる巨体ですからね。下のイラスト参照。3億年前の時点で、最強昆虫でした。それが今でもってのが、なみはずれています。まさに、別名が勝虫なだけはあります。
トンボの羽は横に広がった形で、これはかなり古いの昆虫の特徴なんだそうで。蛾とかは、これが斜めに折りたたむ形になっていて、横幅を大きく取らなくてもいいように進化しています。夜行性の蛾の一部から、昼行性の蝶が進化したのですが、今日の場合は羽を縦にたたみますね。これでも横幅はかなり取らなくて済むようになります。で、現在の昆虫の多くが、蝿のように羽根を胴体に沿わせるように、縦にたたみます。カブトムシなど、甲虫の仲間は、4枚ある羽の内の2枚を固いカバーにして、体を守るように進化していますね。
■日本文化とトンボ■
武士の鎧の兜や鍬形は、言うまでもなく甲虫のカブトムシやクワガタムシから。この兜の装飾として、前立てと呼ばれるものがあります。鯉とか様々な意匠があるのですが、トンボはホバリングしても後ろには引かないということで、また漢字で勝虫と書くこともあるので、トンボの前立ての武将もいたとか。ちなみに、薩摩藩の御留武術であった示現流も、蜻蛉と呼ばれる独特の八相の構えが、攻撃の基本形ですし( ´ ▽ ` )ノ
その意味では、トンボという昆虫が、いかに古い形質を残した存在か、理解できますね。その意味ではカマキリも、ゴキブリやシロアリなどとともに網翅目に分類される、かなり古いタイプの昆虫なのですが。蜂や蟻は社会的昆虫と呼ばれて、集団で巨大な組織を作り、女王・兵隊・働きと、同じ遺伝子を持ちながら役割が分化し、形状さえ異なる、ある意味最も進化した昆虫のひとつなのですが。
■日本の国虫候補?■
その中で最強のオオスズメバチに、勝てる昆虫がオニヤンマやオオカマキリ、昆虫ではないですが蜘蛛の仲間やムカデなど、かなり古い特徴を残した存在だというのも 興味深いですね。しかし、スズメバチは猛毒を持ち。カマキリはハリガネムシの寄生虫を持ち、また共食いする姿がけっこう怖いですし。蜘蛛は益虫ですが、見た目が怖くて不快だと嫌う人も多く。ムカデに至っては、毒を持つ上に不快という。
そう考えるとトンボは、人間を襲うわけでなく。毒を持っているわけでもなく。見た目もかっこよく。逆に、人間にとって危険な昆虫を、バクバク食べてくれますし。蝉のように大声で鳴いて、安眠を妨害するわけでもなく。それでいて春先の、ツガイのカップルが産卵する姿は微笑ましく。日本の四季に寄り添い、稲作とも関係が深い。まさに、日本語を代表する昆虫として、ふさわしい存在ですね。国虫を選ぶなら、蚕の次に来るでしょう。
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