若者のテレビ離れ:半数がほぼ見ず
◉衝撃も何も、若者のテレビ離れはもう何年も前から言われてて、ようやくそれが数字上も可視化されるようになっただけですから。テレビ番組を見ても、スポンサーの商品に金を払ってくれる老人層に受ける内容が増え、かといって視聴率はソコソコでも消費に結びつかない番組──時代劇などは次々と打ち切られて、地上波はもうNHKの大河ドラマが最後の砦に。若者に訴求する番組がないから、若者が見ない。当然と言えば当然ですね。
【10~20代の約半数、ほぼテレビ見ず「衝撃的データ」】朝日新聞
10代、20代の半数がほぼテレビを見ない――。NHK放送文化研究所が20日に発表した国民生活時間調査で「テレビ離れ」が加速している実態が浮かび上がった。
(中略)
テレビ視聴は、調査日にテレビを15分以上視聴した場合のみ「見た」として集計。平日に「見た」人は、10~15歳56%(前回2015年は78%、22ポイント減)▽16~19歳47%(同71%、24ポイント減)▽20代51%(同69%、18ポイント減)。いずれも5年で20ポイント前後減った。
上の年代でも、30代63%(同75%、12ポイント減)▽40代68%(同81%、13ポイント減)▽50代83%(同90%、7ポイント減)と減少。60代は前回と同じ94%、70歳以上は95%で1ポイント減だった。
若者の娯楽の多様化なんて、昭和の時代から言われてるわけで。江戸時代は『不知火検校』のセリフではないですが、盆正月に夏祭りに秋祭り、地域によってはたまに来る相撲の巡業とか芝居や歌舞音曲興業のの一座ぐらいで。今の若者は大名以上の娯楽が楽しめますし。
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■双方向メディアの時代■
若者は、双方向性のインターネットによって、バランスの良い情報を得ています。もちろん、極端な意見に振り回される、受け売り金太郎飴の人間が、右でも左でも10%弱いるのは、各種の調査で明らかですが。サイレント・マジョリティは基本的に、右からも左からも情報を得て、その意見に対する反論と再反論を検討して、より妥当な意見をすり合わせていく。一方通行のテレビや新聞といった旧メディアに依存しているのは少数派。
特権階級的に情報を独占し、国民に知らせない権利や報道しない自由を行使して、傲慢な啓蒙専制君主と化していたのが、新聞・ラジオ・テレビという旧メディア。そういう意味では、インターネットの出現はこの100年で最大の情報革命でしたね。ラジオとテレビも大きなインパクトを与えたのですが、両方とも一方通行のメディアで、本質的には新聞と同じ存在でした。双方向性というのは、かくも大きな情報革命でした。当事者はピンときませんでしたが。
■もうひとつのクライシス■
もうひとつ重要なのは、この調査が2020年10月の実施である点でしょう。コロナ禍でリモートワークが大幅に増え、自宅で過ごす時間が大幅に増えたにも関わらず、40代や50代といった働き盛りの世代の数値も、大幅に減っているわけで。テレビ世代の残り香で、この世代は比較的まだテレビを見る世代です。なのに、40代で81%→68%の13ポイント減、50代代でも90%→83%の7ポイント減と、数字は明らか。50代前半と後半では、デジタルに対する親和性が違うので、内実はもっとあるでしょう。
60代は前回と同じ94%、70歳以上は95%で1ポイント減と、テレビは完全に還暦過ぎの老人のためのメディアになっています。昭和33年から35年生まれは西暦だと1958-60年生まれで、今上天皇陛下と同世代で、庵野秀明監督らの世代ですから。ここら辺は漫画『20世紀少年』で描かれた、幼稚園から小学生の頃に鉄腕アトムウルトラマンがあった世代ですから。都会や地方の県庁所在地で、テレビにドップリつかった世代と、普及が遅れた田舎の差はあるでしょうね。
■視聴者を育てなかったツケ■
さて。目先の視聴率に拘って大衆迎合、でも上から目線で偏った啓蒙主義。若い人は購買力が無いので、金を持ってる老人層の、耳に心地良い10年一日の如き情報を流していたら、そりゃあ若い人は育ちません。ある出版社が、幼年誌は利益率が悪いと廃刊にしたら、そこで育った読者が少年誌や少女誌、あるいは青年誌やレディース誌に流れなくなり、じり貧になってしまった訳で。テレビの衰退は時代の必然ですが、そういう未来の視聴者を育てるという視点がテレビ局のトップや経営陣、現場に共有されていたのか? 自分は疑問です。
自分が秋元康商法やとんねるずの芸風が嫌いなのは、「格好つけたって銭欲しいだろ? セックスしたいだろ? 地位や名誉や権力好きだろ?」という、悪しき本音主義。そこは否定はせんけれど、人間はそれだけじゃないし、雑に枝葉として切り捨てちゃ、そりゃあ良質な視聴者は育たないよね、と。自分はAmazon Prime VideoとNetflixとNHKオンデマンドを契約していますが、これらは金を払ってでも観たくなるコンテンツがあるから。もうそろそろ、広告代理店越しではなく、直接売れるコンテンツを増やす必要があるでしょうね。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ
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