賃金と物価の好循環時代は来るか?
◉今年の春闘は賃上げする企業が多く、これ自体は歓迎すべきことなのですが。左重心のマスコミは、岸田総理大臣と自民党による、この状況が気に入らないのか、コストプッシュ型インフレがどうの、スタグフレーションがこうのと、粗探しとイチャモンに終始している印象です。政府批判が自己目的化してしまった、昭和の残滓なのですが。令和の時代には、アップデートすべきですね。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、1万円札の写真です。長年親しんだこのデザインも、そろそろお別れですね……。
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■四半世紀の氷河期時代■
主にバブル崩壊後の1993年から2005年に、学校卒業・就職活動していた年代を、就職氷河期世代と呼びますが。アベノミクスで就職が好転したのは、有効求人倍率が1を超えた2017年以降ですから。体感的には、ほぼ四半世紀に渡って就職難と不況が続いた感じです。自分が二浪して大学に入った頃にバブルが崩壊し、90年代は本当に、就職がうまくいかない時代でした。
世代的に人口が多いのに、仕事がない。MARCHレベルでも、かなり苦戦していましたからね。現役入学卒業の大卒なら、53歳から45歳ぐらいですか。高卒なら49歳から41歳。実際は、30歳中盤から50歳前半。40代以上の人間は特に、正社員になれず、結婚を諦めた人間も多いです。生まれた時代が悪かったと、諦めるしかないですが。
戦後のハイパーインフレを経験し、日本人はとにかくインフレは悪いものだ・値上がりは庶民の生活を苦しめるという考えに、凝り固まってしまいました。これは儒教の、素朴な経済観の影響もあるのでしょうけれど。本格的なデフレを、明治以降の日本人はあまり経験しておらず、対応がうまくいかなかった部分はありますね。バブルの処理も、公金注入に感情的に反対し、かえって傷口を広げた面もあります。
■パラダイムの変換点■
何度も書いていることですが、経済は素人の実感とか異なります。インフレ時には物価が上がって生活が苦しくなったような〝気がする〟のですが、実際は生活自体は向上して、良い時代。デフレでは物価が安くて生活が楽になった〝気がする〟のですが、実際は経済が回らず、真綿で首を絞められるようにジリ貧になるわけで。多くの宗教は、弱者の救済を言いますが、では弱者とは何か? これはたぶん、経済的困窮者なんですね。そして、たぶん思想や哲学は、この経済的貧困から生まれた可能性。
時代も場所も文化も宗教もバラバラなのに、ほぼ同時代に今日につながる思想が生まれています。社会が成熟し、富という概念が生まれ、その運用によって、同じ人間なのに、貧富に大きな差が付くようになったのが、ある種のルサンチマンとなり、世界で同時多発的に宗教や思想が生まれた。額にあせして畑を耕した労働に比較して、株の売り買いでその何万倍者と身を稼いでしまう現代でも、そこは同じでしょう。でもこれは、経済が解っていない人間の逆恨みなんですが。
野球やサッカーに興味がない人には、あんな球打ちやボール蹴りで、なんで何十億も稼ぐんだと思うのですが。それはとても希少な才能で、希少故に価値が出る。世界に1億個ある石より、1個しかない宝石に価値があるように。経済が分からず、阻害され、時には奴隷の身分に落とされた人間は、社会を理不尽だと思い、そこに精神的な救いを求める。宗教や思想が生まれる理由ではないかと、経済人類学の本などを読んでいると、そう感じることはあります。素人の印象論ですが。
■末路哀れな経済通?■
イスラム教という、商人が改組の宗教が生まれるまで、1000年ぐらいの成熟が必要だったのですから、経済と宗教の問題は、根深いです。山田五郎氏がTBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』で語っておられましたが、日本は平家・海軍・国際派が出世できない国です。国際感覚を持ち、貿易を振興し、経済通だったりすると、だいたいが暗殺か失脚し、天珠を全うしても悪評がつきまとうことが多いですね。我が国の歴史を見ると、そういう人間がこんな感じでいます。
この人たちに、安倍晋三元総理が加わってしまったのは、とても残念なのですが。日本人は本質的に、経済を振興する人が嫌いです。これは白村江の戦いでの大敗北のトラウマと、国是としてモンロー主義的なところがあり、貿易と国際問題がセットだったから、という面はあります。経済自体は、けして下手ではないですし、堂島の米市場では、世界初の先物取引さえ生まれていますしね。ただ、大衆のレベルの社会通念(ノルム)としては、強固な半経済の面がありますね。
■誰かが貧乏籤を引く役■
けっきょく、そういう社会通念(ノルム)は、そう簡単に変わらないでしょう。バブルの後始末で公的資金注入を主張した竹中平蔵氏は憎まれ、未だに「取り敢えず悪者として安心して批判できる人」ですし、自分がちょっとでも擁護すると、X(旧Twitter)ではギャンギャン言ってくる人がいます。消費税も未だに、下げろイヤ全廃だと、マスコミが作り上げた社会通念に乗っかって、批判しているわけです。現実問題、消費税がそんな悪税なら世界中の先進国で採用され、OECD平均で19%の税率で、出羽守が称賛する北欧の高福祉国家では25%前後なのか、説明してほしいもんです。
これも時代と諦めるしか似でしょうね。戦時中に生まれた世代は、若くして命を散らしたのですから、それよりはマシ……という考えも、後ろ向きで良くないのですが。そして、60年安保70年安保で暴れ回った暴走老人世代が、戦後最悪の世代だったこと、第二の敗戦を引き起こしながらなんの反省もしなかったこと、これも後世に語り伝えないと。実家が太かっただけで、大学進学率が低い時代に進学し、高等遊民を気取って反体制ポーズ、バブルを謳歌し、年金逃げ切り世代は、こんな言動を生前していたと。
大正デモクラシーを謳歌した連中の尻拭いを、昭和一桁はやった面がありますが。大学時代にバブルがはじけた自分らの世代は、ある意味で全学連・全共闘世代の、尻拭いの世代なのかもしれません。でも『ゴジラ−1.0』の、佐々木蔵之介さん演じる特設掃海艇・新生丸艇長の秋津淸治の言葉ではないですが、誰かが貧乏くじを引かないと、しょうがないんですよね。元禄時代の反動で享保の改革が、文化文政時代の反動で明治維新があったように。その時代の波に、個人は抗えないように。せめて貴重な戦訓として、団塊の世代の情けなさを、残すしかないでしょう。
浅見千秋「あんた達団塊の世代がナマクラだったから、今の政治が出来上がっちまったんだよ!! 期待していた分だけ怒りも失望もでかいんだ…」
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