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ドイツから100兆円超の資本流出

◉ドイツ国内の有力企業が、国内から逃げ出しているという話は、文化放送『おはよう寺ちゃん』などでも、フォルクスワーゲン社の国内工場撤退など、言及されていましたが。Bloombergがこの件でかなり、具体的な記事を出してきましたね。しかし、100兆円を超える資本流出って……。

【ドイツの混乱、背景に100兆円超える資本流出-競争力喪失で経済衰退】Bloomberg

ドイツ経済の競争力喪失が顕著だ。それが経済から活力を奪ってもいる。

 ドイツ連邦銀行(中央銀行)のデータによると、化学品メーカーのBASFや自動車部品のZFフリードリヒスハーフェン、家電のミーレなどの企業が国外に資源を移し、2010年以降の純資本流出額は6500億ユーロ(約107兆円)を超える。しかも、この約4割は、ショルツ首相率いる連立政権が発足した21年以降に発生した。

 米大統領選挙でトランプ前大統領が歴史的勝利を収めたことにより、ドイツ企業には関税回避の目的で米国への投資を増やすよう圧力がかかる。これが資本流出を加速させる恐れもあるだろう。選択肢に乏しく次期総選挙の予定まで1年を切っていた中、経済再生を巡る論争がもとでショルツ首相はリントナー財務相を更迭。ドイツは05年以来の早期総選挙に向かう見通しとなった。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-08/SML00WT1UM0W00

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、フォルクスワーゲンの写真です。


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■欧州の病人、再び■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。かつてのドイツは、欧州の病人と呼ばれていました。東西統一の負担は大きく。しかしEUの出現によって、最も経済的な恩恵を受けたのが、ドイツとされます。国によって様々な経済状況があるのに、人と物の流通を自由化したら、地域経済のトップであるドイツの一人勝ちは、ある意味で必然ですね。自前の通貨ならば、国内の流通量をコントロールすることで、打てる経済政策もあるのですが。ユーロではそれは難しく。このためイギリスはブレグジットで、EUから脱退したのですが。

シーメンスは先週、米ソフトウエアメーカーのアルテアエンジニアリングを100億ドル(約1兆5300億円)で買収する合意を締結。同社にとって過去最大級の買収で、外国志向の姿勢が表れた格好だ。

我が家の春を謳歌していたと思ったら、マイナス成長は2年連続と、ここ数年の凋落ぶりは激しいです。ドイツの企業は国際的なメーカーなどが多く、国内でのメリットが少なくなったらさっさと海外に逃げ出し、投資先も 海外の方が美味しいと思えば、国内よりも優先。ここら辺は、国際企業なら当たり前の部分ではありますが。日本以上に、国民に愛国心を求める傾向がある諸外国からすれば、許しがたい裏切り行為と、認識されるかもしれませんね。

■雇用を生む製造業■

フォルクスワーゲンの国内工場撤退の話は、ドイツでもかなり 問題視されているようで。何しろ、フォルクスワーゲンを直訳すれば〝国民車〟ですからね。国民車が国内の生産から撤退して、なんのジョークだと。自動車メーカーというのは、二次産業ですから。儲けの主力はサービス業に転換していても、やはり二次産業は大きな雇用を生みます。政治とは畢竟、国民を食わせること。国民を食わせる、ということは雇用を生む出すこと。10人の雇用で1億円の儲けが出るより、100人の雇用で1円の黒字のほうが、社会は安定します。

資本流出は弱まる兆しが見えない。自動車大手のフォルクスワーゲンは国内事業の縮小に動き、巨額の補助金を受けるインテルのドイツ東部工場のプロジェクトも問題に突き当たっている。

エリートの人たちは、能力がない人間は下手に働くよりも、ベーシックインカムをもらって遊んでいてくれればいい、と思いがちですが。人間というのは、自分が社会の役に立っているという実感が欲しい生き物です。ベーシックインカムが実現したとして、それで働かず遊んで暮らす人間は、一部でしょうね。ベーシックインカムをもらいつつも、何らかの仕事で社会につながっていたい、そういう人間が大半でしょうから。農林水産業や製造業というのは、自分の働いた成果が収穫物や商品となって、時間を得やすい職業ですから。

■全体主義好きな文化■

ドイツ人というのは 一般的に、理知的な国民だと思われています。それ自体は、教育レベルの高さや、ノーベル賞金の科学者を数多く輩出し、文学や哲学の世界でも、大きな 即席を残していますから、決して間違いではないのですが。どうも、ある方向性が決まるとそちらに教条的になる面もあるようで。そういう意味では、国家社会主義的な統制社会にもともと、親和性が高い面もあるのかもしれません。ヒトラーとナチスの熱狂を生み出したのは、間違いなく、ドイツ人自身なのですから。

特に問題視されるのは官僚制度だ。何度となく簡素化の試みはあったものの、ドイツ企業が影響を受ける規制はおよそ5万ページと、10年前の3万4000ページからかえって増加した。Ifo経済研究所による1700社余りを対象とした最近の調査では、この問題を理由に過去2年間で約半数の企業が国内でのプロジェクトを延期した。

もう一つ言うならば、カール・マルクスを生み出したのも、ドイツ人。共産主義思想が、ユダヤ・キリスト教の千年王国思想を焼き直しただけの宗教であることは、繰り返し述べてきましたが。共産主義思想もナチズムも、そういう意味ではドイツの文化の上に生まれた、全体主義思想なわけですから。このような形での、官僚主義がはびこるのはある意味で、必然なのかもしれません。個人的にはドイツ文化は好きですし、敬意も持っていますが。常にある種の危うさを持った面も、留意しておくべきでしょう。それは日本の文化も同じなんですが……。


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