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女性人力車夫は虐待?

◉なにやら、妙な批判が出てきていますね。そもそも、人力車は明治時代に発明されたもので、ある意味でレトロなものとして風情を楽しむものと、日本人は了解しているのですが。歴史を知らない外国人には、タクシーやタイのトゥクトゥクのような車も買えない人間が、人力で運ぶ安価な低賃金労働とでも、思ってるんですかね?

【女性が人力車を引く姿に「虐待」「かわいそう」外国人から批判的な声…浅草の女性俥夫は「好きなので頑張りたい」】FNNプライムオンタイム

外国人観光客で賑わう東京・浅草。インバウンド需要で大人気なのが、案内をしながら思い出作りも担ってくれる浅草名物の人力車だ。最近では、女性俥夫も多く見られるが、実は今、一部の外国人から寄せられるコメントが物議を醸している。

https://www.fnn.jp/articles/-/785643

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。


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■人力車の歴史など■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。そもそも人力車、拘る人は人力車ではなく〝人力俥〟と書きます。落語の演目も『反対俥』ですからね。人力車は発明家の和泉要助が、1870年(明治三年)に発明したと言われます。1870年ごろには欧米で、空気入りのタイヤと針金スポークの車輪が発明されており、またベアリングの玉軸受に関する最初の特許を、パリの自転車職人が1869年に取得していますから、時代的にもどんどん改良されていった背景もあり、マッチしていたのでしょう。昭和の初期ぐらいに、代数的にはピークだったようで。1943年の大ヒット映画『無法松の一生』の主人公も、人力車夫でした。

なにしろ、それまでの駕籠屋は最低でも2人1組で担いでいましたし、やはり人間+駕籠の重みは、かなりの体力を使います。ところが車輪の人力車は、一人でお客を運べて、しかも車夫の使う力が格段に少なく。お陰でスピードも、駕籠とは比較にならないぐらい早かったので。タイムイズマネー、文明の利器として、大人気だったのは疑いなく。発明された翌年の明治四年の末頃には、人力車の数は東京府下で4万台にもなっていたそうで。さらに明治五年4月には、人力車の運賃を1里(約4キロ)につき6銭2厘と、東京府が定めます。

桂枝雀師匠が主人公の赤岩源蔵親分を演じたNHK時代劇『なにわの源蔵事件帳』ではよく、人力車夫に「一台抜くごとに1銭、祝儀はずむでぇ~!」と発破をかける描写がありましたが。小坂でも似たような相場だったとすると、1銭は大きいですね。東京でタクシーは5km走行すると、初乗り運賃の410円に距離加算運賃の1360円で、合計1770円。明治時代の1銭は、現在の物価指数に基づくと約14.4円になります。6銭2厘は89円28銭ですか。明治時代の人力車の製造費は、1台あたり約30円とのこと。お値段は、思ったより安いですね。身体ひとつで始められ、1日に20キロも走ると30銭以上、100日ぐらいでマイ人力車が購入できた計算。

■旅の情緒を楽しむ■

現在の人力車は、観光地の物が多く。東京だと浅草、京都だと嵯峨嵐山など、観光地の駅前でよく見かけますね。お値段は、浅草の人力車の料金相場は1~2人の利用で、10~20分で約4000~7000円、30分で約8000~1万円と、単純にタクシーを使うよりも遥かに高いですから。使う方も、旅の思い出ですから、そのつもりで使うわけで。肉体労働ではありますが、割は良さそうですよね。低賃金労働と、勘違いしているのでしょう。アメリカでいえば、観光地で昔ながらの駅馬車で回るようなものですかね。それで、馬の虐待だとか言われても、アメリカ人も怒るでしょう。

当の女性俥夫の方はどう思っているのか。実際に物議を醸した動画で人力車を引いていた、河合美波さん(20)に話を聞いた。
河合さんは、多い時は1日10組の客を乗せるそうで、「大変な時もあります」と話す。

アルバイト情報を見ると人力車夫は、時給1350~3000円+インセンティブ+手当+交通費とか、時給1500円~3000円+インセンティブ+交通費+英語手当とか、時給1800~3200円+インセンティブ+食事手当+交通費とか、けっこう良い条件ですね。上記引用のように、多い時は1日10組の客を乗せるのなら、20分コース4000円でも4万円の売上。30分コースで10組なら5時間で、最高10万円の売上ですか。時給1500円でも7500円、3000円なら15000円。英語とか堪能な車夫なら、オプションもつくので、これって体育会系の人間なら、かなり割が良いアルバイトでは?

■実は高額バイト?■

さらに、記事を読むと驚きの情報が――月に130万円を稼ぐ人もいる? 週に6日の勤務でも、25日で130万円なら、日収5.2万円。1日10万円ぐらいの売上を会社と折半、みたいな感じですかね。いやいや、かなりの稼ぎですね。個人タクシーだって、そんなに稼げないでしょう。どうも東京都の個人タクシーの平均年収は約480万円、大阪府は約410万円とのこと。利用客の季節ごとの変動やら、雨天もありますから、年間を通して上下はあるでしょう。もちろん、体力商売ですが。でも自分の友人のように、毎日20キロとかジョギングするのが趣味の元陸上部の人間ならば、これは良い仕事ですね~。健脚商売( ´ ▽ ` )ノ

最高で月に130万円以上を稼ぐという人力車の俥夫。西尾社長は、従業員が充実感を持って働いてることを理解して、人力車を楽しんでほしいとしている。
(「イット!」11月11日放送より)

そういえば、伊集院光さんが、仕事のない若手芸人が、人力車夫のアルバイトをしていると、ラジオで語っていた記憶が。どうやら、𝕏(旧Twitter)を見ると、比較的自由に出勤日が得られ、時間もある程度自由で、時給の割もいいので、かなり人気なんだとか。いやいや、自分も若くて体力あった大学生の時期だったら、やってみたかったです。長距離走で鍛えている人なら、40代や50代でも続けられるでしょうし。130万円はともかく、不定期バイトで10万円ぐらいになれば、若手のお笑い芸人とか、良いアルバイト。浅草だと、演芸場とかにも近く、地の利もあるでしょうし。なんか、イメージで批判してほしくないですね。


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喜多野土竜
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