エネルギーの話題:地熱発電に水素利用
◉あまり需要のない、エネルギー関係のネタですが。女川原発も2号機が再稼働となり、狂信的反原発派への疑義が、中間層からも出てくるようになりました。エネルギー問題は政治(特に外交)と科学と技術など、多岐にわたる事項と、密接に絡んでいます。なので、地道に情報を拡散していかないと、議論のベースになりませんので。微力ながら、発信していきます。今回は、地熱発電や水素利用について、いくつか集めました。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、アイスランドの地熱利用の現場のようですね。
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■東電&大林組は地熱で水素■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。地熱発電は自分も一時期、ベースロード電源として期待したのですが、実際には色々と問題があります。高温の地熱と熱水が得られる地域は限られており、しかも多くが温泉地として、すでに利用されている場所が多く。発電所のメンテナンスもかなり大変。何より、調査のためのボーリングがかなり高額で、しかも膨大な数の試掘をしないといけないので。ただアメリカでは、場所を選ばない新たな地熱発電の研究が進んでおり、そちらには期待が持てそうです。
地熱から水素は、東電や大林組も力を入れており。地熱と熱水による直接的な発電よりも、地熱を利用して水素を生成し、それをエネルギー源として各種利用する方が、あまり温度が高くない温泉でも、有効利用ができそうですね。日本の国土面積は世界の面積の約0.29%と、狭い国土の割には世界の火山の約7%が集中しています。だから地熱発電に利用できそうな地域が、豊富にあると考えがちですが、源泉の温度は60〜70度が多く、間欠泉のように水蒸気を引き出すほどの高温は、限られていますから。
なので、ニュージーランドやインドネシアなど、外国の公的地で地熱を利用した発電で水素を生成し、それを日本に持ってくるという形で、うまくエネルギー供給を測るというのは、ひとつの手段。電気は大規模に蓄電することが、現状の技術や素材では難しいですが。別のエネルギーに変えて保存することは可能ですからね。水素そのものの保存はなかなか大変なのですが、エタノールやアンモニアに変えて、大量備蓄と輸送が可能になりますから。
■トヨタは水素カートリッジ■
水素利用推進といえば、トヨタ自動車。脱炭素が言われて、欧州はEV車の方にシフトしようとしましたが。南仏のニースですら、青森県や秋田県ぐらいのに高緯度にある欧州では、電池は低温で出力が落ちますから。ガソリン車の未来は暗いとはいえ、いきなりEV車全振りではなく、ハイブリッド車ぐらいでワンクッション置くべきだったのですが……。もっともその先には、アルコール車や水素エンジンを搭載した水素自動車の方が、可能性がありそうです。
水素自動車の場合、燃料の補給は、このようなカートリッジタイプが、主流になりそうですね。現在のガソリン車も、満タンにするにはけっこうな時間がかかりますから。でもカートリッジタイプなら、そこは手軽にできそうですね。複数のカートリッジを搭載できるタイプならば、燃料切れの対象も素早くできそうですし。まずは大型の路線バスや、定期ルートを運行するトラックなどから水素エンジンと水素カートリッジを普及させていき、将来的には水素エンジン車の普及という形に、シフトできれば。
■川崎重工は大型水素エンジン■
トヨタが水素自動車なら、川崎重工は水素レシプロエンジン。こちらは、大型の船舶などへの利用が、期待できそうですね。言うまでもなく、日本は四方を海に囲まれた島国で、石油や天然ガス、石炭などのエネルギーの多くは海外からの輸入ですから。船舶というのは、大量輸送に向いた、高効率の運送手段ですから。大型の石油タンカー とか、実物を見るとその巨大さに圧倒されます。東京タワーや原子力空母より巨大ですから、当然なのですが。そこまで行かなくても、大出力のエンジンは、あらゆる産業にとってプラス。
発電出力5MW以上の大型ガスエンジンにおける水素専焼技術は、現時点で世界初とのこと。しかも、水素のみを燃料として運転した場合でも、天然ガスを燃料とした場合と同じ出力を維持したまま、安定して運転が可能。現実問題として、日本の水槽の多くは天然ガスから生成しており、その方が効率的とはいえ、やや無駄な感じもしますね。上記のように、海外から水素そのものを輸入する時代がやってくるなら、両者をうまく混合して利用できれば、アルコールとガソリンのハイブリッド車みたいな感じで、便利そうですね。
■旭化成と伊藤忠も水素生成に■
旭化成はその名の通り、もともとは日窒化学工業という社名で、宮崎県延岡で合成アンモニアの製造を始めたのが原点。非常に多様な事業をやっていますが、イオン交換膜法食塩電解技術を開発して、イオン交換膜を使用して食塩水を電気分解する技術を開発。それをさらに水電解技術に応用したようで、水素の生成に乗り出したようで。水の電気分解で水素と酸素が発生する、小学校の頃に科学の実験でやりましたね。あれの被膜版。さらに世界最大級のアルカリ水電解装置の実証を2020年からスタート。化学でも、水素利用社会へのアプローチは、こんな形で進んでいるんですね。
さらに、伊藤忠も合成 メタンを生成する新触媒で、アプローチしているようです。
伊藤忠セラテックが開発した新触媒は、従来品に比べ10~20%ほど低い温度の350度の環境下で、水素と二酸化炭素の化学反応を促進するとのこと。ハーバー・ボッシュ法もそうですが、高圧や高温の環境下って、それだけでけっこうなエネルギーがかかりますからね。常温常圧の環境が、理想です。記事によれば、合成メタンへの転化率は約90%と、従来より10%以上も高く、高効率のようで。合成メタンは燃焼時に二酸化炭素を排出するのですが、工場などから回収した二酸化炭素を原料にしているとのこと。つまり、回収しては燃焼しての、サイクルがずっと続けられる。もちろん、少しずつ減っていくでしょうけれども。これ、石炭火力発電所とセットで運用すれば、排出量が一気に減りますね。
こうやって見ると、地味ながらも着実に、各方面から来るべき水素利用社会を見越したアプローチが、進んでいるんですね。何でも反対の立憲共産社民根性や、ロクな対案を出せない荻上チキンズムではなく、科学をベースにした建設的な議論が大事で。反原発をわめく人々も、安全性の高い 第四世代の原子力発電所を正しく理解し、高温ガス炉の高温を利用した水素生成や石炭液化など、新たな技術の可能性も、きちんと学んでほしいところではあります。現代文明は莫大なエネルギーが支えているのですから。江戸時代には戻れません。
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