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エネルギーの話題:地熱発電に水素利用

◉あまり需要のない、エネルギー関係のネタですが。女川原発も2号機が再稼働となり、狂信的反原発派への疑義が、中間層からも出てくるようになりました。エネルギー問題は政治(特に外交)と科学と技術など、多岐にわたる事項と、密接に絡んでいます。なので、地道に情報を拡散していかないと、議論のベースになりませんので。微力ながら、発信していきます。今回は、地熱発電や水素利用について、いくつか集めました。

【米、次世代地熱発電に脚光 シェール掘削技術応用 より深く掘り「適地100倍」】日経新聞

【ヒューストン=花房良祐】米国で次世代の地熱発電技術に注目が集まっている。温暖化ガスを排出しない安定電源としてバイデン政権も支援する。三菱重工業は地熱発電開発の新興企業に出資しタービンを供給。非鉄金属の大同特殊鋼は地熱発電専用の鋼管部品を開発するなど日本企業も商機を見いだしている。

米国は次世代の地熱発電「地熱増産システム(EGS)」の実用化を目指している。地熱発電は従来、地下の熱水・蒸気を掘り...

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https://www.nikkei.com/article/DGKKZO84254820R21C24A0TB2000/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、アイスランドの地熱利用の現場のようですね。


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■東電&大林組は地熱で水素■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。地熱発電は自分も一時期、ベースロード電源として期待したのですが、実際には色々と問題があります。高温の地熱と熱水が得られる地域は限られており、しかも多くが温泉地として、すでに利用されている場所が多く。発電所のメンテナンスもかなり大変。何より、調査のためのボーリングがかなり高額で、しかも膨大な数の試掘をしないといけないので。ただアメリカでは、場所を選ばない新たな地熱発電の研究が進んでおり、そちらには期待が持てそうです。

地熱から水素は、東電や大林組も力を入れており。地熱と熱水による直接的な発電よりも、地熱を利用して水素を生成し、それをエネルギー源として各種利用する方が、あまり温度が高くない温泉でも、有効利用ができそうですね。日本の国土面積は世界の面積の約0.29%と、狭い国土の割には世界の火山の約7%が集中しています。だから地熱発電に利用できそうな地域が、豊富にあると考えがちですが、源泉の温度は60〜70度が多く、間欠泉のように水蒸気を引き出すほどの高温は、限られていますから。

【東電や大林組、海外で地熱から水素 脱炭素へ安定生産】日経新聞

東京電力ホールディングス(HD)は、地熱発電由来の水素のサプライチェーン(供給網)を構築する。2027年にもインドネシアで生産を始める。大林組はニュージーランドで生産している地熱由来の水素を、30年代にも日本へ輸出する。太平洋地域に集中する地熱資源を生かして、脱炭素につながる再生可能エネルギー由来の水素を安定調達する。

東電は山梨県や東レと組み、インドネシアの国営石油プルタミナと同国東部の地熱発...

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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC076KU0X00C24A6000000/

なので、ニュージーランドやインドネシアなど、外国の公的地で地熱を利用した発電で水素を生成し、それを日本に持ってくるという形で、うまくエネルギー供給を測るというのは、ひとつの手段。電気は大規模に蓄電することが、現状の技術や素材では難しいですが。別のエネルギーに変えて保存することは可能ですからね。水素そのものの保存はなかなか大変なのですが、エタノールやアンモニアに変えて、大量備蓄と輸送が可能になりますから。

■トヨタは水素カートリッジ■

水素利用推進といえば、トヨタ自動車。脱炭素が言われて、欧州はEV車の方にシフトしようとしましたが。南仏のニースですら、青森県や秋田県ぐらいのに高緯度にある欧州では、電池は低温で出力が落ちますから。ガソリン車の未来は暗いとはいえ、いきなりEV車全振りではなく、ハイブリッド車ぐらいでワンクッション置くべきだったのですが……。もっともその先には、アルコール車や水素エンジンを搭載した水素自動車の方が、可能性がありそうです。

【トヨタ、リュックで持ち運べる水素カートリッジを披露 企業向けモビリティショー開幕】産経新聞

 日本自動車工業会(自工会)が主催する企業向け展示会「ジャパンモビリティショービズウィーク2024」が15日、千葉市の幕張メッセで開幕した。脱炭素に向けて技術革新が進む自動車産業とスタートアップ(新興企業)や異業種との交流・商談を促進するイベントで、200以上の企業・団体が出展した。
(中略)
 カートリッジは重さが約8・5キロで、充填できる水素の量は約4・7リットル。水素を取り出す専用装置などを使って水素ガスや電気を供給する。カートリッジ1本で、一般家庭の標準的な1日の消費電力の約3分の1を賄い、家庭用コンロなら2時間の連続使用に対応できるという。プロパンガスの代替などが想定されている。

https://www.sankei.com/article/20241015-RYI4BTGFCVOHVFXB7HGTMU3RMI/

水素自動車の場合、燃料の補給は、このようなカートリッジタイプが、主流になりそうですね。現在のガソリン車も、満タンにするにはけっこうな時間がかかりますから。でもカートリッジタイプなら、そこは手軽にできそうですね。複数のカートリッジを搭載できるタイプならば、燃料切れの対象も素早くできそうですし。まずは大型の路線バスや、定期ルートを運行するトラックなどから水素エンジンと水素カートリッジを普及させていき、将来的には水素エンジン車の普及という形に、シフトできれば。

■川崎重工は大型水素エンジン■

トヨタが水素自動車なら、川崎重工は水素レシプロエンジン。こちらは、大型の船舶などへの利用が、期待できそうですね。言うまでもなく、日本は四方を海に囲まれた島国で、石油や天然ガス、石炭などのエネルギーの多くは海外からの輸入ですから。船舶というのは、大量輸送に向いた、高効率の運送手段ですから。大型の石油タンカー とか、実物を見るとその巨大さに圧倒されます。東京タワーや原子力空母より巨大ですから、当然なのですが。そこまで行かなくても、大出力のエンジンは、あらゆる産業にとってプラス。

【世界初、5MW以上の大型ガスエンジンにおける水素100%燃焼技術を開発】川崎重工

川崎重工は、発電出力5MW以上の大型ガスエンジンにおいて、水素のみを燃料として二酸化炭素を発生せずに安定した燃焼を実現できる技術を開発しました。本技術は、世界初※1となります。

水素を燃料とするレシプロエンジンでは、水素の燃焼特性の制約から、出力を下げるか、水素を天然ガスと混焼させる方法が一般的です。この度の開発では、発電用として豊富な納入実績がある電気着火式カワサキグリーンガスエンジンの単気筒試験機※2において本技術を適用することで、水素のみを燃料として運転した場合でも、天然ガスを燃料とした場合と同じ出力を維持したまま安定して運転が可能であることを確認しました。今後、2030年頃の商品化を目指し、製品実装への最適化と設計を進めてまいります。

https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20241016_1.html

発電出力5MW以上の大型ガスエンジンにおける水素専焼技術は、現時点で世界初とのこと。しかも、水素のみを燃料として運転した場合でも、天然ガスを燃料とした場合と同じ出力を維持したまま、安定して運転が可能。現実問題として、日本の水槽の多くは天然ガスから生成しており、その方が効率的とはいえ、やや無駄な感じもしますね。上記のように、海外から水素そのものを輸入する時代がやってくるなら、両者をうまく混合して利用できれば、アルコールとガソリンのハイブリッド車みたいな感じで、便利そうですね。

■旭化成と伊藤忠も水素生成に■

旭化成はその名の通り、もともとは日窒化学工業という社名で、宮崎県延岡で合成アンモニアの製造を始めたのが原点。非常に多様な事業をやっていますが、イオン交換膜法食塩電解技術を開発して、イオン交換膜を使用して食塩水を電気分解する技術を開発。それをさらに水電解技術に応用したようで、水素の生成に乗り出したようで。水の電気分解で水素と酸素が発生する、小学校の頃に科学の実験でやりましたね。あれの被膜版。さらに世界最大級のアルカリ水電解装置の実証を2020年からスタート。化学でも、水素利用社会へのアプローチは、こんな形で進んでいるんですね。

【旭化成は10万キロ級アルカリ水電解装置狙う…水素供給網プロ始動、国際連携で利活用拡大】ニュースイッチ

 国際連携で水素や水素キャリアの生産・供給、グリーンケミカルとして調達するサプライチェーン(供給網)プロジェクトが動き出している。旭化成は日揮と連携し、海外でアルカリ水電解装置を使って水素を大量製造するグリーンケミカルプラントの第1号の実用化に乗り出す。ENEOSは水素キャリアとして期待されるメチルシクロヘキサン(MCH)を低コストで合成する技術「ダイレクトMCH」をベースに、2030年にもグローバルな供給網の構築を目指している。(いわき・駒橋徐)

https://newswitch.jp/p/43266

さらに、伊藤忠も合成 メタンを生成する新触媒で、アプローチしているようです。

【合成メタン生成「新触媒」で伊藤忠が攻勢かける、製造能力10倍に】ニュースイッチ

 伊藤忠商事は合成メタンを生成する触媒の生産・販売で攻勢をかける。子会社の伊藤忠セラテック(ICC、愛知県瀬戸市)が、合成メタンの原料となる水素と二酸化炭素(CO2)の化学反応を低温環境で効率的に促進する新たな触媒を開発した。2025年度に数十億円を投じて生産棟を増設し、新触媒の生産能力を引き上げる。伊藤忠は工場などからCO2を回収して合成メタンを生産するニーズが拡大すると見込み、国内外で新触媒の拡販を狙う。(編集委員・田中明夫)

https://newswitch.jp/p/42858

伊藤忠セラテックが開発した新触媒は、従来品に比べ10~20%ほど低い温度の350度の環境下で、水素と二酸化炭素の化学反応を促進するとのこと。ハーバー・ボッシュ法もそうですが、高圧や高温の環境下って、それだけでけっこうなエネルギーがかかりますからね。常温常圧の環境が、理想です。記事によれば、合成メタンへの転化率は約90%と、従来より10%以上も高く、高効率のようで。合成メタンは燃焼時に二酸化炭素を排出するのですが、工場などから回収した二酸化炭素を原料にしているとのこと。つまり、回収しては燃焼しての、サイクルがずっと続けられる。もちろん、少しずつ減っていくでしょうけれども。これ、石炭火力発電所とセットで運用すれば、排出量が一気に減りますね。

こうやって見ると、地味ながらも着実に、各方面から来るべき水素利用社会を見越したアプローチが、進んでいるんですね。何でも反対の立憲共産社民根性や、ロクな対案を出せない荻上チキンズムではなく、科学をベースにした建設的な議論が大事で。反原発をわめく人々も、安全性の高い 第四世代の原子力発電所を正しく理解し、高温ガス炉の高温を利用した水素生成や石炭液化など、新たな技術の可能性も、きちんと学んでほしいところではあります。現代文明は莫大なエネルギーが支えているのですから。江戸時代には戻れません。


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