ケナガネズミの生存戦略
◉琉球大学の面白い研究が、目に入りました。九州本土から台湾までの間にある島々は、アマミノクロウサギやイリオモテヤマネコなど、各地に固有種がおり、非常にユニークなのですが。琉球列島の固有種であるケナガネズミについて、その生存戦略はなかなか面白いです。人類の進化とも、ちょっと重なります。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、ネズミのイラストです。
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■日本最大のネズミ■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。ケナガネズミは奄美大島・徳之島・沖縄島北部に生息する、固有種です。自分は残念ながら、見たことはないですが、日本最大種。Wikipedia先生によれば、頭胴長22~33センチメートル・尾長24.6~33センチメートルと、小型のウサギぐらいありますね。外来種のヌートリアが、頭胴長40~60センチメートル・尾長30~45センチメートルですから、あれの一回り小さいタイプぐらいのイメージですかね。
こちらも、ハブのために導入されたマングースの駆除事業で、罠に混獲されて死亡してしまうという問題も起きたようですね。言われてみれば確かに、大きさ的にはマングースに近いですから。毒蛇のハブ対策としてのマングースの導入は本当に、歴史に残る大失敗だったのですが。天然記念物のアマミノクロウサギも捕食され、ケナガネズミにも悪影響を与えており。生態系って簡単に破壊されてしまう可能性があるのだと、つくづく思います。
■島嶼化という進化■
今回の研究でユニークだなと思ったのが、餌とする植物の多様性ですね。島に住む生物は、その孤立した環境を ゆえに、独自の進化をすることが多いです。一般に、島嶼化と呼ばれる、小型化する傾向が顕著です。餌の少ない環境だと、体が大きいと無駄にエネルギーを消費しますからね。屋久島とか、猿も鹿もイノシシも、小柄な亜種ですね。もっともコモドドラゴンのように、生態系の頂点にいるために、逆に大型化する種類の生物もいますが。ケナガネズミは、大型化したタイプ。そのため餌も、多様化したのでしょう。
まさに、雑食ですね。動物は、肉食系と草食系とその中間の雑食系に分けられますが。どうやら人類の祖先も、元々は肉食中心だったのが、チンパンジーと共通の先祖から枝分かれし、草原に進出して雑食化することで、生き残った面があるようで。人類の歯を見ても、前歯の切歯は野菜や植物を食べるのに適しており、尖った犬歯は肉を、平たい臼歯は穀物を、食べるのに適していますからね。雑食になることで、動植物の多様な食料を食べることができるようになり、同時に世界各地に拡散していたわけで。
■食を求め拡散する■
例えばクマなども、自分たちは肉食動物として認識していますし、それ自体は間違いないのですが。実際に食べる獲物は鮭や鹿などよりも、植物食の方がむしろほとんどで雑食性、それも植物食に偏っている動物と、認識されているんですよね。同じクマの仲間のパンダに至っては、笹が主食。肉食動物は意外と、雑食性に移行するタイプがいるようで。沖縄固有種のイリオモテヤマネコやヤンバルクイナなども、近縁な種よりも食性の幅が広いことが示唆されているとのこと。ここら辺は興味深いですね。
人類の場合は、他の動物ならば当たり前に持っている、ビタミン C を体内で合成する能力が失われたため、積極的に果物や野菜を食べるようになった面もあるようですが。森から草原に出た時の、人類の身長は1メートルちょっと、爪も牙も鋭くはなかったのですから、何でも食べる雑食性に、ならざるを得なかった面はあるのでしょう。アフリカから南アメリカ大陸までの、膨大な距離を移動したのも、新たな環境や食料を求めてのグレートジャーニー だったのか。そんな人類が、食のタブーという文化を作り上げたのも、興味深いです。
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