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ケナガネズミの生存戦略

◉琉球大学の面白い研究が、目に入りました。九州本土から台湾までの間にある島々は、アマミノクロウサギやイリオモテヤマネコなど、各地に固有種がおり、非常にユニークなのですが。琉球列島の固有種であるケナガネズミについて、その生存戦略はなかなか面白いです。人類の進化とも、ちょっと重なります。

【琉球列島固有種ケナガネズミの食性を餌のDNAで解明 ~ケナガネズミは何でも食べることで島に生き残れた?~】琉球大学

琉球大学理学部海洋自然科学科生物系小林峻助教らの研究チームによる研究成果が、日本哺乳類学会の英文誌「Mammal Study」オンライン版に掲載されました。

<発表のポイント>
・琉球大学理学部の小林峻助教、医学部の佐藤行人准教授、伊澤雅子名誉教授(現、北九州市立自然史・歴史博物館館長)が、中琉球固有種であるケナガネズミの沖縄島北部個体群の食性を明らかにしました。
・本研究では、近年食性解析に用いられるようになってきたDNAメタバーコーディング法により、胃内容物を分析しました。本種は植物を中心に動物も採食する雑食性であることが知られていましたが、本研究で少なくとも植物63種、動物36種の餌種を同定しました。その結果、先行研究の結果も合わせると、本種の餌メニューは植物84種、動物46種となり、幅広い食性を示すことが明らかとなりました。
・本研究の成果は、日本の在来ネズミ類の中で最大のケナガネズミが、小島嶼で生き延びることができた要因の解明につながることが期待できます。また、食性の解明は希少種の保全において最も重要な要素の1つです。ケナガネズミが多様な食性であることは、生息地において多様な動植物相が維持されている必要があることを示唆しています。

https://www.u-ryukyu.ac.jp/news/61574/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、ネズミのイラストです。


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■日本最大のネズミ■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。ケナガネズミは奄美大島・徳之島・沖縄島北部に生息する、固有種です。自分は残念ながら、見たことはないですが、日本最大種。Wikipedia先生によれば、頭胴長22~33センチメートル・尾長24.6~33センチメートルと、小型のウサギぐらいありますね。外来種のヌートリアが、頭胴長40~60センチメートル・尾長30~45センチメートルですから、あれの一回り小さいタイプぐらいのイメージですかね。

こちらも、ハブのために導入されたマングースの駆除事業で、罠に混獲されて死亡してしまうという問題も起きたようですね。言われてみれば確かに、大きさ的にはマングースに近いですから。毒蛇のハブ対策としてのマングースの導入は本当に、歴史に残る大失敗だったのですが。天然記念物のアマミノクロウサギも捕食され、ケナガネズミにも悪影響を与えており。生態系って簡単に破壊されてしまう可能性があるのだと、つくづく思います。

■島嶼化という進化■

今回の研究でユニークだなと思ったのが、餌とする植物の多様性ですね。島に住む生物は、その孤立した環境を ゆえに、独自の進化をすることが多いです。一般に、島嶼化と呼ばれる、小型化する傾向が顕著です。餌の少ない環境だと、体が大きいと無駄にエネルギーを消費しますからね。屋久島とか、猿も鹿もイノシシも、小柄な亜種ですね。もっともコモドドラゴンのように、生態系の頂点にいるために、逆に大型化する種類の生物もいますが。ケナガネズミは、大型化したタイプ。そのため餌も、多様化したのでしょう。

 その結果、本研究で少なくとも動物36種、植物63種の餌種を検出することができました。先行研究で観察されていた餌種を加えると、動物46種、植物84種が記録されたことになり、ケナガネズミは非常に多様な餌種を採食していることがわかりました。植物が多く出現しましたが、動物も予想より多く出現しました。植物ではイヌビワ、シラタマカズラ、イジュ、スダジイなどが多く出現し、動物ではヤマナメクジの一種、ゾウムシの仲間、ガの仲間の出現が多いという結果となりました。また、雌雄や齢については、サンプル数が少なかったものの、雌雄間や異なる齢の間で餌種の違いがほとんどないことも明らかとなりました。

まさに、雑食ですね。動物は、肉食系と草食系とその中間の雑食系に分けられますが。どうやら人類の祖先も、元々は肉食中心だったのが、チンパンジーと共通の先祖から枝分かれし、草原に進出して雑食化することで、生き残った面があるようで。人類の歯を見ても、前歯の切歯は野菜や植物を食べるのに適しており、尖った犬歯は肉を、平たい臼歯は穀物を、食べるのに適していますからね。雑食になることで、動植物の多様な食料を食べることができるようになり、同時に世界各地に拡散していたわけで。

■食を求め拡散する■

例えばクマなども、自分たちは肉食動物として認識していますし、それ自体は間違いないのですが。実際に食べる獲物は鮭や鹿などよりも、植物食の方がむしろほとんどで雑食性、それも植物食に偏っている動物と、認識されているんですよね。同じクマの仲間のパンダに至っては、笹が主食。肉食動物は意外と、雑食性に移行するタイプがいるようで。沖縄固有種のイリオモテヤマネコやヤンバルクイナなども、近縁な種よりも食性の幅が広いことが示唆されているとのこと。ここら辺は興味深いですね。

人類の場合は、他の動物ならば当たり前に持っている、ビタミン C を体内で合成する能力が失われたため、積極的に果物や野菜を食べるようになった面もあるようですが。森から草原に出た時の、人類の身長は1メートルちょっと、爪も牙も鋭くはなかったのですから、何でも食べる雑食性に、ならざるを得なかった面はあるのでしょう。アフリカから南アメリカ大陸までの、膨大な距離を移動したのも、新たな環境や食料を求めてのグレートジャーニー だったのか。そんな人類が、食のタブーという文化を作り上げたのも、興味深いです。


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