エネルギー問題:第四世代原子炉と人工光合成
◉久しぶりに、エネルギー関連ネタを2題。両方に共通するキーワードは〝水素〟ということで。やはり水素は、重要なエネルギー源のひとつ。先ずは、メルトダウンしづらく安全性が高い第四世代の原子炉である超高温ガス炉である、大洗の高温工学試験研究炉 (Temperature engineering Test Reactor 略称HTTR)について。前から書いていることですが、風見鶏の読売新聞も報じるようになりました。内容も具体的で、わかりやすいです。
【【独自】脱炭素エネルギーの「水素」、次世代原子炉で製造…政府が施設着工へ】読売新聞
文部科学省と経済産業省は、次世代の原子炉として期待される日本原子力研究開発機構の高温ガス炉「HTTR」(茨城県大洗町)を利用し、脱炭素エネルギーの「水素」を作る技術開発に本格的に乗り出す。隣接地に2025年頃、水素の製造施設を着工する計画で、両省が来年度概算要求に設計費など計約30億円を初めて盛り込む。
水素の製造は現在、化石燃料を燃やした熱を使い、メタンと水を高温で反応させる方法が主流。HTTRは、通常の原子炉よりはるかに高い900度超の熱を得られるため、同機構は運転時に二酸化炭素(CO2)を出さない熱源として、水素製造に活用する研究を進めてきた。その結果、安定的に水素を製造できる見通しが立ったという。この技術は、政府が7月に発表した新しい「エネルギー基本計画」の原案で重要課題に位置づけられた。
トップ写真は、蜘蛛の巣と木漏れ日。
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■高温ガス炉で水素製造■
現状は、天然ガスから水素を取り出すとか、あまり効率が良いとは言えない部分もありますが。「メタンを使わずに水を熱分解し、CO2を出さずに水素を得る新手法の研究も進める。」って情報が重要です。例えば、チタンなどの光触媒を利用して、水を分解して水素を得る研究とか、昔からありますが。超高温ガス炉の熱を利用して水を熱分解し、直接水素を取り出せると、電力の供給源であり燃料の供給源にもなれるわけで、実現すれば燃料の多様性にも貢献。
本来は、大洗のHTTRは世界最先端を走っていた研究所のひとつだったんですけどね。戦後最悪の宰相・菅直人総理大臣時代の強引な原発停止政策によって、ずっと止まっていたのですが。その名の通り、超高温ガス炉はその高熱を利用して、水素の生成はもちろん、製鉄にも使えるわけで。加えて、石炭の液化にも使える可能性があり、その方面でも期待されます。つくづく、東日本大震災と菅直人政権の無能さが、かえって環境に悪影響をあたえるという逆説。
■人工光合成で水素製造■
もうひとつは、人工光合成によって水を分解して水素を取り出す実験に、東大や信州大学、明治大学、富士フィルムやTOTOや三菱ケミカルなど多くが参加する研究が、実証試験に成功したようです。人工光合成は、トヨタ系の研究所が、蟻酸を生成してそこから水素を取り出す研究で、驚異の高効率を実現しましたが。こういう研究が進んでるのも、興味深いですね。オールインはかえって危険ですから。
【世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功】NEDO
NEDOと人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は人工光合成システムの社会実装に向け、東京大学、富士フイルム(株)、TOTO(株)、三菱ケミカル(株)、信州大学、明治大学とともに、100m2規模の太陽光受光型光触媒水分解パネル反応器(以下、光触媒パネル反応器)と水素・酸素ガス分離モジュール(以下、ガス分離モジュール)を連結した光触媒パネル反応システムを開発し、世界で初めて実証試験に成功しました。
2019年8月から屋外の自然太陽光下で光触媒パネル反応システムの実証試験に着手し、水を分解し生成した水素と酸素の混合気体(以下、混合気体)から、高純度のソーラー水素を分離・回収することに成功しました。さらにガス流路を適切に設計することで、混合気体を長期間安全に取り扱えることを確認しました。
さてさて。繰り返し書いていますが、日本の平均日照時間は、世界的に見ても、低いんですよね。なので、こういう技術は海外への輸出とパテントで儲けるビジネスモデルが吉。熱海市の土砂災害で顕わになったように、山を切り開いて太陽光発電パネルを敷き詰めるのは、日本の国情に合っていませんからね。風力発電と太陽光発電は主たる電力には、少なくともとも現時点の日本では、なり得ませんので。
■2030年に期待■
まだまだ、両研究とも道は遠いでしょうけれど。ただ前者は2030年という、具体的な目標が打ち出せています。アメリカが、超高温ガス炉の実用化を、2029年に置いていますから、妥当な目標設定では? だって、2021年ももう3分の2を過ぎ、2029年とか2030年もあっという間にやって来ますから。もし、菅直人政権による無謀な大洗HTTR停止がなかったら、もっと早かっただろうにと、死んだ子の年を数えてしまいますが。
他にも、アンモニアであったり、イロイロと可能性はありますし。そういう研究だけでなく、例えば石炭火力発電所の改良とかも、現実にはとても重要な研究になりますし。現代技術は、物理学も化学も工学も力を合わせないと、前進できませんから。新たな素材発見が、ガラッと変えることもありますしね。太陽光発電のシリコンの研究とか、高温超伝導物質の研究とかもそうですが。科学に期待です。どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ