見出し画像

エネルギー関連:天然ガス・岩石蓄電池・低温低圧アンモニア・室温水素

◉あまり需要のない、エネルギー関連のネタですが。うちのnoteは、商売でやってるわけではないので。アクセスがあまり期待できないジャンルでも、自分が重要だと思ったり、好きなネタは積極的にやっていきますので。エネルギーは現代国家の基(もとい)。大日本帝国がアメリカとの無謀な戦争に踏み切ったのも、石油の禁輸が原因でしたからね。反原発派の非科学ぶりとか、二重の意味で危険ですから。今回も天然ガス生成プロセス解明・岩石蓄電池の商用化・低温低圧アンモニア製造・室温水素生成と、いろんなネタをご紹介。

【2つの微生物が天然ガスを作る新たな生成過程発見…海洋研究開発機構や産業技術総合研究所など】読売新聞

 海洋研究開発機構や産業技術総合研究所などのチームは、二つの微生物が天然ガスを作る新たな生成過程を発見したと発表した。天然ガスを増産する技術の開発につながる可能性があるとしている。論文が科学誌ネイチャーに30日、掲載される。

 天然ガスの主成分メタンは、地下深くに存在する古細菌(アーキア)が、水素や酢酸などを使って生成していることが知られている。古細菌の中には、多くの生物にとって有毒なメタノールを原料にしてメタンを作る種類もいるが、なぜメタノールが地下に存在するのかなど、詳細はよくわかっていなかった。

https://www.yomiuri.co.jp/science/20250129-OYT1T50214/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。


◉…▲▼▲▽△▽▲▽△▽▲▼▲…◉


■天然ガス生成プロセス解明■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。まずは 天然ガスの生成のプロセスに、2種類の微生物が関わっていたという研究。石炭の場合、地上に繁茂した植物が堆積し、それが分解されず変性したもので。高品質な無煙炭から、瀝青炭や褐炭、泥炭などいろんな品質があるのですが。石油と天然ガスは、世界各地で採掘されていますが、品質にあまり差はないんですよね。また、石油と天然ガスは近い場所で発見されますが、生成プロセスが違うのではないか……という指摘もあります。

 チームは、地下の油田から見つかったバクテリアを古細菌と一緒に培養したところ、動植物の死骸などから作られる「ギ酸」という物質からメタノールが作られ、さらにメタンに変化することを確認した。二つの微生物が共生することで、効率的に天然ガスが作られていることが分かったという。チームの延優・同機構主任研究員は「今回明らかになった微生物の機能を活用すれば、石油が回収しにくい油田や、石炭のある炭層から、天然ガスを取り出す技術につなげられる可能性がある」と話す。

https://www.yomiuri.co.jp/science/20250129-OYT1T50214/

蟻酸はその名の通り、蟻塚から酸性の蒸気が出ていることに気づいたイギリスの博物学者ジョン・レイが1671年、分離したもの。生物由来の成分なので、それを微生物がメタノールに変換し、そこからさらにメタンに変化するという、2段階プロセスがあったようで。なるほどそういう生成プロセスならば、世界中で品質が均一である理由が、納得できますね。蟻酸は、TOYOTA系の研究所の人工光合成の研究でも、重要な物質。後で語るアンモニアもそうですが、古くから知られる物質が新世代のエネルギーに関わってくるのは、興味深いですね。

■岩石蓄電池の商用化■

続いては、東芝野球部電力が岩石を蓄電池にするという、興味深い技術の商用化に、力を入れるというニュース。電気の問題は、大規模に貯めておくことができないこと なんですよね。だからこそ、太陽光発電や風力発電のような不安定な再生可能エネルギーによる発電方法が、ベースロード電源になりえない理由なのですが。地下の岩石に熱エネルギーとして、蓄積するという発想が面白いですね。リチウムイオンバッテリー なんかと比べると、原始的な感じがしますが。ありふれた岩石だからこそ、汎用性が高いという面もあるのでしょう。

【東芝や中部電力、岩石を「蓄電池」に レアメタル不要に】日経新聞

東芝子会社の東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS、川崎市)や中部電力などは、天然の岩石に熱エネルギーを蓄えて必要時に取り出す「岩石蓄熱」と呼ぶ技術の商用化を目指す方針を明らかにした。熱しやすく冷めにくい特徴を持つ岩石を「自然の蓄電池」として使う。一体どんな技術なのか。

基本的な仕組みはこうだ。一時的に余剰になった再生可能エネルギーの電力などを熱エネルギーに変えて岩石に蓄える。これは電力を使って岩石を熱するということを意味する。そして、ここから放熱して熱エネルギーとして利用。電気として使う場合は、岩石が発する熱で水を温めて水蒸気を発生させて蒸気タービンと発電機を動かす。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC236B10T20C25A1000000/

約1時間で、岩石の温度は常温から600度まで上がるとのこと。火山から紛失する マグマの温度は 一般的に、650度から1400度ほど。ハワイのキラウエア火山のように玄武岩質でサラサラの溶岩もあれば、粘り気のある高温の溶岩もあり、岩石の質によってだいぶ違うようですが。600度はけっこうな高温ですね。設備に蓄えられる熱容量は電力量に換算して10メガワットで、約880世帯分の1日の電力使用量に当たるとのこと。実験段階としてはこんなものでしょう。日本の世帯数は5621万5000世帯ですから、道は長いですが。

■低温低圧アンモニア製造■

続いて、低温低圧の環境下でアンモニア製造が可能な新 触媒を、東京科学大学総合研究院フロンティア材料研究所の原亨和教授らが開発したという話題。このnoteでは、アンモニアの話題が多いのですが。アンモニアはNH3で、水素キャリアとしても優秀ですし、火力発電所の混焼燃料として燃やすこともできますし、化学肥料の原料などにも使える、とても有用な物質です。画期的なハーバー・ボッシュ法によって、安価に大量生産できるようになりましたが、高温高圧の環境が必要なんですよね。

【低温・低圧でアンモニア製造が可能な新触媒を開発】Science Tokyo

ポイント
・どの触媒よりも低温・低圧でアンモニアを製造できるヒドリド鉄触媒を開発。
・ヒドリド鉄触媒はアンモニア製造中にアルミを加えた赤錆から自動生成。
・アンモニア製造のエネルギーリターンを280%以上増幅し、持続的社会に貢献。

https://www.isct.ac.jp/ja/news/m1ayx208oxj3

触媒とは、小学校の時の理科で学んだはずですが。それ自体は変化することなく、他の物質を変化させる物質。過酸化水素に二酸化マンガンを入れると、酸素が分離される実験を覚えている人も、多いでしょう。ここら辺の触媒の研究では、他にもいろんな研究機関が成果を発表していますが。日本を貶めたい左派は、日本はもう終わりだ終わりだと連呼する尾張守に成り下がっていますが。日本は化学に関しては、まだまだ世界トップクラスの実力。こういう触媒の研究は、興味深いですね。高温超電導物質の研究でも、いろんな化合物を研究するのは、日本人の得意技。

■室温で水素を生成■

コチラも、金属粉末の触媒利用した、水素生成の話題ですが。水素生成の方法は多数あり、水を電気分解しても水素は発生しますし、第四世代原子炉の高温ガス炉の高熱を利用する方法などもありますが、こちらも室温で水素生成ができるという、画期的な方法。さらに興味深いのは、粉砕機のボールミルの衝撃を利用して化学反応を起こすという方法。ボールミルは、セラミックなどの硬質のボールと材料の粉を円筒形の容器に入れ、回転させて材料をすりつぶし、微細な粉末を作る装置です。そんなありふれた装置で、水素が生成できるんですね。

【高温いらず金属・水から水素生成…広島大、ボールミル衝撃利用で実現】ニュースイッチ

 広島大学の山本拓哉大学院生と芦田翔大学院生、齋藤健一教授らは、室温で金属粉末と水から水素を生成する技術を開発した。ボールミルの衝撃を利用して化学反応を起こし、純度99%の水素が得られた。従来は600―2000度Cの高温が必要だった。水は海水や河川水を利用できる。金属粉末がエネルギー媒体となり、既存の精錬施設が蓄エネルギーインフラとして機能する。分散型水素供給技術へ発展させる。

 金属粉末と水をボールミルにかけると水素が発生する。ボールに打ち付けられる衝撃で超臨界状態の水が局所的に発生する。3000個のボールが連続的に超臨界状態を作り、高温が必要だった熱化学反応を起こす。

https://newswitch.jp/p/44393

記事にある、「既存の精錬施設が蓄エネルギーインフラとして機能する。」というのは、このボールミルを用いた設備を、転用できるということですね。新しい技術の開発には、膨大な試行錯誤や大規模な設備投資が必要ですが。すでに枯れた工業技術であるボールミルで、お手軽に水素発生可能となれば、効率の面でもとても有利ですね。日産自動車が、HONDAとの経営統合で難色を示し、迷走していますが。TOYOTAの推す水素エンジン車とか、この技術が確立されれば、水素の地産地消も可能になって、一気に普及するかもしれませんね。


◉…▲▼▲▽△▽▲▽△▽▲▼▲…◉

◉…▲▼インフォメーション▼▲…◉

noteの内容が気に入った方は、サポートでの投げ銭をお願いします。
あるいは、下記リンクの拙著&共著などをお買い上げくださいませ。
そのお気持ちが、note執筆の励みになります。

MANZEMI電子書籍版: 表現技術解説書

MANZEMI名作映画解題講座『ローマの休日』編

MANZEMI文章表現講座① ニュアンスを伝える・感じる・創る

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

いいなと思ったら応援しよう!

喜多野土竜
売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ