田中圭一×MANZEMIコラボイベント「名作映画を語る会」
◉何やら怪しげなイベントと、一部の人には思われてるかもしれませんし、人によってはそれがなんの役に立つんだと言われそうですが。元々は、鍋島雅治先生とやったイベントがベースです。
作品作りって、広くいろんなモノを見て聞いて感じることが大事。漫画を描くなら漫画だけでなく、映画やアニメや演劇や小説や、他の表現も広くインプットするの、大事です。でも、深さも大事です。
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■深さとは?■
ひとつの作品を、徹底的に深く掘り下げる。これ、大事です。広く浅くと狭く深く。どっちかに偏りがちですが、バランスが大事。作品というのは、実際は何気ないワンシーン、ワンンカットに膨大な情報と工夫が詰め込まれています。でもそれって、意外と言われないと意識できないモノです。特に、名作と言われるような作品は、多様な切り口があって、実に深いです。
そういう部分を受講生に感じて欲しくて、鍋島雅治先生に『ローマの休日』を語っていただいたのが、最初のイベントでした。講義自体は少人数でしたが、自分も鍋島先生も手応え充分。なんでしょうね、イベント前に話すことは鍋島先生もタップリ用意していたのですが。しゃべっている内に、お互いの閃きというか、刺激される部分があって、どんどん深いところに、双方がも気付いていく感じでした。
■作品の構造を探る■
例えば、作品には伏線と回収ってのが必須です。それがもっとも顕著なのが推理小説なのですが、これとは別に作中には対象構造がよく見られます。ローマの休日だと、アン王女が王宮を出るのが深夜12時。ブラッドレーのアパートで目覚めるのが12時。そして大使館に戻るのが12時ごろ。この物語自体は、逆シンデレラなんですよね。シンデレラはお城に行くけれど、アン王女はお城に帰る。
なので、同じモチーフが繰り返し出てくるわけで。既にある骨太で知られた物語のモチーフをなぞることで、観客は安心して作品世界に没入できるわけです。伏線というほどではないですが、そういう対象構造があると、人間は不思議と安心するんですよね。こういう話を自分が合いの手ですると鍋島先生も、そう言えばあのシーンとこのシーン、喪服が繰り返されるよねと、乗ってくるわけです。
■感覚を言語化する■
また、心理学にはザイオンス効果というモノがあります。これは、人間関係で主に言われることですが。第一印象が好意的な場合、その後の会う回数に応じて好印象は右肩上がりになる、という認知パターン。3回目の認知から効果が高まり10回目をピークに変化しなくなる、と言われますが。つまり、12時という時間が繰り返されることで、観客は作品への好感度が上がる。映画の限られた尺で、有効に時間を使うには、こういう部分も必要。
例えば大使館でアン王女が、パジャマを着たいとさりげなく言ったシーンが、ブラッドレーのアパートでは実現しますね。こういう対象構造が、ブラッドレーのアパートで三度繰り返されますが、3度目は風呂上がりにガウンでと、変化を付けてきたり。こういう伏線や対象構造だけでも、何十個もあるのですが、言われないとあんがい気付かない。気付いても言語化できない。なので、目から鱗が落ちる参加者も多いわけで。
■予定調和よりも暴走を■
こんな感じで丁々発止、鍋島先生も自分もスタッフも、とても手応えのある、参加者にも好評のイベントでした。ぜひ次もやりたいね、やるなら『ロッキー』か『七人の侍』かなと言ってたのですが───。鍋島先生が2019年暮れに急逝され、もうこういうイベントは開けないな……と思っていたのですが。鍋島先生とは兄弟弟子でもある田中圭一先生と知己を得て、今回のイベントに至ることになりました。
事前に軽い打ち合わせはしましたが、本番はかなりアドリブもぶつけ合う形になるでしょう。その方が、予定調和よりも面白い。暴走して冥府魔道に突入する危険性はありますが。そこは田中先生の卓抜した話芸に期待です。ということで、26日のイベント、時間のある方はふるってご参加を。オンライン講座で全国どこからでも参加でき、作品作りの気付きを得ることでしょうm(_ _)m
売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ