刑務所は再犯生産工場?
◉桜ういろう通信社こと共同通信社が、とても興味深い記事を、掲載しています。懲役3年の実刑判決を受けた河井克行元法務大臣への、ロングインタビュー。たぶん本音としては、厳罰化の流れとそれを容認する世論を止めたいという部分でしょう。できれば、死刑廃止論にもつなげたいのでしょうけれど。その思惑とは別に、河井氏の証言は情報として有用です。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、刑務所の独房のイメージイラストです。
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■再犯者率は半数近く■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。日本の懲役刑というのは、自由を奪って苦しい思いをさせる、という部分が昔から主でした。しかし、自分自身も懲役経験が豊富な安部譲二先生が、エッセイなどで書かれておられましたが、再犯で再び刑務所に戻ってくる人間は、半分近いとか。最初の入獄で懲りるか、二犯三犯と罪を重ねていくか、どちらかに別れるようで。
刑務所に入れて、自力で反省しろ、あとは知らんでは、結果的に更生できない人間は、再び犯罪者として野に放たれるわけで。池波正太郎の『鬼平犯科帳』で知られる、火付盗賊改方の長谷川平蔵宣以は、犯罪者の社会復帰を促すために、松平定信に人足寄場設置を建言。石川島に加役方人足寄場を設け、無宿人や浮浪人、刑期を終えた囚人らに、大工・建具・塗物などの生きていくために必要な職人の技術を修得や、土木作業や農業をさせ、更生を促したわけで。むしろこの部分が、高く評価されています。
■必要なのは更生支援■
さらに人足寄場では月に3回、三のつく日の暮六つ時から五つ時まで2時間ほど、石門心学の大家・中沢道二の講義も実施していたとか。落語の『天災』という演目にも心学の先生が登場しますが、当時は仏教・儒教・神道の教えをミックスして、平易に説く心学は、無宿人や浮浪人などにとっても、理解しやすかったのでしょうね。もちろん、人足寄場は現代の間隔からすれば、かなり強権的な場所ではありましたが。それでも当時としては画期的な、更生支援施設と言えるでしょう。
日本では年間に約200万人が検挙され、うち約3万人が刑務所に収容され。収監者の総数は、ほぼ4万5000人弱とのこと。1億2500万人の総人口からすれば、0.036%ほどと、犯罪者自体の数は、決して多いわけではないのですが……。ほとんどの受刑者は、ションベン刑と呼ばれる、数年以内に終わる短い刑期なのでしょう。新聞を賑わすような重大犯罪は、他国と比較してもそれほど多くはない。でも、人口がこれだけ多い国だと、やはり犯罪者の数は膨大なものに。更生支援が大事な要素に。
■京アニ事件との関連■
この共同通信社の記事ですが、執筆された方のポストが流れてきました。京都アニメーション放火殺人事件で、大量の死者を出した犯人が、河合元法相と同じ喜連川の刑務所に入所していたとのこと。偶然ですが、奇妙な縁(えにし)だなと思います。元法務大臣も何度も刑務所に入った放火犯も、同じ場所で服役というのは、ある意味で平等といえば平等なんですが。個人的には、あの犯人は育成環境によって、コミュニケーション能力を上手く発達させられなかった部分はあったと思います。ある意味で、コミュニケーション能力は、親との関係性で育まれる部分があり。
そういう部分に難がある人間には、基本的な教育からやり直さなければならず。でも、日本の刑務所に、そんな能力も人材も予算もなく。犯罪を犯す人間には、そういう境界知能の疑いがありますしね。職人的に、他人とあまりコミュニケーションしなくても良い商売は、あるのでしょうけれども。出所後に、ちゃんと食える商売を教えているかといえば、そこはわからないですね。刑務所で士師業につけるスキルが身につくかといえば、そこは難しいでしょう。そこにリソースを割くより、シャバと刑務所を行ったり来たりする人生のほうが、官も本人も楽と思っていたり。けっきょく、この国の根本部分として、教育からやり直さないといけないのでしょうけれども。
■貧弱な図書環境問題■
たしか日垣隆氏の著書だったかで、引用されていましたが、愛媛の少年院の統計では、
中卒>高校中退>高卒>大学中退
の順に、入所者の数が多いとか。学歴を積み上げた人間というのは、それを台無しにしてしまう犯罪に手を染めてしまう可能性が、どんどん低くなってしまうということです。逆に言えば、社会からドロップアウトをさせず、コツコツと学業を積み重ねさせ、犯罪は割に合わないと思わせる状況を作ることが、重要です。もちろん、河井克行氏のように慶應義塾大学法学部政治学科卒で大臣までなっても、前科者になってしまう人間は、一定数出るのですが。出版業界に長くいる身としては、こちらのお話も重要です。
これは由々しき問題ですね。自力更生しようとする意識があっても、刑務所側がその対応を十分にできていない、ということですから。死刑廃止運動とかやってる人は、こういう本を寄付する運動でもやったほうが、よほど有益なんでしょうけれども。やらないでしょうね。個人的には、クールジャパンとかアホな金をかけて、秋元康氏らに食い物にされるぐらいなら、出版社の印刷書籍の、電子書籍化の援助や補助をしたほうが、よほど良いかと。今さらDTPを学べないという出版社に対して、書籍のデジタルデータ化を反した段階で補助するシステムのほうが、よほど良いでしょう。そして、電子書籍ならタブレットの貸出で、貸出中や品切れはないでしょうし。
こういう部分も含め、社会全体を根本から変えていかないといけないのでしょうね。
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