溶融塩で二酸化炭素を燃料源に
◉溶融塩とは、Wikipedia先生によれば「食塩などの陽イオンと陰イオンからなる塩で溶融状態にあるものや、固体塩を加熱し融解状態としたもの。」とのこと。溶けて融合した塩、ということなんですね。この溶融塩を電解質に用いて、二酸化炭素から理科の実験でもやった 電気分解で炭素を取り出し、エネルギー源とする研究を同志社大学が提案しているようですね。
ヘッダーはWikipediaのフォトギャラリーより、溶融塩の写真です。
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■エネルギーを別の形に■
電気分解はその名の通り、電気というエネルギーを使うわけですから、それをどこから供給するかの問題はあります。ただ そうやって電気分解で得られた 単相は、保存が可能です。電気の問題で大きいのは、発電した電力は基本的に貯めておけないということです。もちろん、小規模な電力ならば、電池に貯めることは可能ですが。発電所が事故で止まっても、数日分は貯めた電池で賄う……みたいなレベルは無理です。
でも、生み出して余った電気を別のエネルギーに変えて食べておくことは可能です。水を電気分解して水素にしたり、エタノールやアンモニアなど別の物質を生成して、水素を扱いやすい形にして貯めておくことなどは、 研究が進んでいます。今回の研究も、太陽光などの電気エネルギーを利用して、炭素という形にするようなものですから。二酸化炭素を減らすという面でも、興味深い 研究ではあります。
■溶融塩原子炉用冷却材■
溶融塩で思い出したのですが、より安全性が高いとされる第4世代原子炉のひとつである溶融塩原子炉用の、冷却材にも使えるんですよね。第3世代炉は冷却用の水が必要なのですが、第4世代炉は不要。高温ガス炉が有名で、実際に中国では一昨年に商用実証炉が臨界に達しましたし、アメリカやイギリスでは2029年の商用炉実用化を目指しています。メルトダウンが起きづらい 構造になります。
福島第一原発の事故も、原子爆弾のような核分裂での爆発が起きたと、勘違いしている人がいますが。あれは津波で外部電源が喪失し、原子炉内部や使用済みの核燃料プールへの注水が不可能となってしまい、メルトダウンが起きました。核燃料の高熱で冷却水が水素ガスとなり、タービン建屋各内部に充満しての水素爆発です。これも水爆の核融合ではありません。
第3世代炉は冷却用の水の代わりに、第4世代炉はヘリウムや溶融塩を用います。不測の事態が起きても、燃料は原子炉の下部のドレインタンクへ自動排出され、自然冷却されてガラス状に凝固し、放射性物質の飛散を防ぐ構造なんだそうです。素材としての溶融塩は、なかなか ユニークで使い勝手が良い物質なんですね。溶融塩原子炉の夜間電力で、二酸化炭素から炭素を取り出す未来が。
■カルノーバッテリー?■
同志社大学の後藤教授は、溶融塩を用いた炭素取り出しだけでなく、他にもなかなかユニークなエネルギー関係の研究も、されているようで。カルノーバッテリーというのは、電気エネルギーをいったん熱エネルギーに変換してから、エネルギーを貯蔵する蓄熱システムのことだそうで。熱を貯蔵する物体は、水や岩や溶融塩でもいいわけで。ここでも溶融塩繋がり。
このnoteでは何度か書いていますが、アンモニアという古代エジプトの昔からありふれた物質は、火力発電所の燃料として直接燃やしてもいいし、水素キャリアとしても有能ですし、もちろん農業に必要な化学肥料の原材料にもなりと、とても便利な物質なのですが。どうも溶融塩も、いろんなことに利用できる、便利な物質なんですね。興味深いです。
日本という国は、素材研究はまだまだ世界トップレベルですから、溶融塩の使い道は さらに広がりそうですね。この話題もちょっと気をつけて、今後は ぼちぼち 調べていこうと思います。
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