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笑福亭仁鶴師匠死去

◉ああ、なんかもう訃報が続きすぎて辛いです。関西の名門・笑福亭松鶴一門の惣領弟子で、ある意味で滅びかけていた上方落語を救ったのは、仁鶴師匠でしょう。自分は直撃世代ではないのでピンときませんでしたが、みうらじゅん先生や山田五郎さんらが、いかに仁鶴師匠の人気が凄まじかったか、よく語っておられますね。なにしろ、小米朝や小文枝の小が気に入らんから改名しろという傲慢な吉本興業の林正之助会長が、〝仁鶴さん〟とさん付けで呼んだほど。

【笑福亭仁鶴さん死去 文枝さんやきよしさんらが悼む】朝日新聞

 「四角い仁鶴がまぁーるくおさめまっせ~」のフレーズで親しまれた落語家でタレントの笑福亭仁鶴(しょうふくてい・にかく、本名岡本武士〈おかもと・たけし〉)さんが17日、骨髄異形成症候群で死去した。84歳だった。葬儀は近親者らで営んだ。
 NHKのテレビ番組「バラエティー生活笑百科」の司会を、1980年代から30年以上務めた上方落語界の重鎮。2005年には、所属する吉本興業の特別顧問に就任するなど、吉本芸人の中心的存在を担っていた。

仁鶴師匠が売れに売れたからこそ、20人を切るほどまでに縮小していた上方落語家が、桂三枝・笑福亭鶴光・笑福亭鶴瓶師匠ら、後に続く人材が入門したわけですから。四天王がいくら素晴らしくても、弟子が来なければ滅びは必至。でも、仁鶴師匠が売れに売れて、メディアにもラジオにテレビにと大活躍したから。ハードルが下がったんですよね。吉本興業もメチャクチャ潤ったので、前述の下にも置かない扱いになったとか。トップの画像は笑福亭一門の五枚笹の家紋。ウィキペディアより。

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■だみ声と四角い顔■

自分のイメージでは、幼稚園の頃にはもう大御所の扱いでした。でも『結んで開いて』の童謡で、「また開いて」のところで足を開くギャグを用意遅延の頃真似していましたから、自分は。だみ声という点では、ある意味で関西のおっちゃんのひとつの典型例でした。山田五郎さんとか、に隠ししょうと違って丸い顔なのに、仁鶴師匠のような濁声だなぁと思ったら、実は関西で育ったので関西弁も堪能、話すと思いっきり仁鶴師匠のようでした。

立場的には、総領弟子ですからね。おかげで、笑福亭は人材豊富になったんですが。七代目笑福亭松鶴襲名問題で、一門が揉めたのも事実。六代目の遺志は、七代目は仁鶴にというもの。これは、他の弟子連中も納得していたんですが。一番弟子で実力者、誰も文句はなかったのですが。吉本興業に所属する仁鶴師症としては、ライバル会社の松竹芸能も絡む大名跡である松鶴を、継ぐに継げない部分はあったでしょう。

■笑福亭の総帥として■

ただ、他の弟子としてはそこで、七番弟子の笑福亭松葉を指名したため、こじれる原因に。人柄もよく人望もあった松葉師匠ですが、ちょっと強引すぎないかと。順番から言えば松竹芸能の鶴光師匠。これが辞退して、芸の上で六代目も高く評価していた松喬師匠とか、選択肢は合ったはずなんですが。けっきょく、七代目襲名直前に松葉師匠は急逝され、七代目襲名問題は宙に浮いた形に。

確執の噂があった鶴光師匠に襲名させたくなかったのか、噂のように破天荒すぎた六代目を実は嫌っていたのか、そこは部外者にはわかりません。ただ、六代目の弟弟子で、俺が生きてるうちは兄貴(松鶴)の名はは復活させないでくれと言ってた笑福亭松之助師匠(明石家さんまさんの師匠)も旅立たれ、微妙ですね。笑福亭松枝師匠のように、六代目の直弟子が全員死んだら好きにして、という弟子も。それだけ、笑福亭松鶴の名前は大きいのでしょう。

■偉大すぎる師匠と弟子の苦悩■

自分は晩年の六代目しか知りませんが、長じてから落語に触れだすと、もうこの人は無茶苦茶です。無茶苦茶、すごい。ある意味で、破天荒伝説の多い五代目古今亭志ん生を上回る人物。でも、生き方が破天荒だけれど、芸は本物。若き日の古今亭志ん朝と立川談志が得意演目『らくだ』を聞いて、あまりの素晴らしさにしばらく声が出なかったと。志ん朝師匠は六代目の追っかけだったと、公言されていましたし。逆に言えば、だからこそ大名人の師匠の名跡は継ぐのに躊躇するのもわかります。志ん生だってそうですからね。

奥様を亡くされ、体調を崩されてから高座から遠ざかった出処進退を含め、やはり芸にこだわり、芸に生きた落語家だったのだろうと。生前、ああいう師匠は出ないと語っておられましたし。志ん朝師ようとも仲が良く、やはり偉大な破天荒型の先代と、正統派の弟子の苦悩は両者にあったのかと、勝手に想像です。個人的には『池田の猪買い』や『くっしゃみ講釈』が好きでした。特に後者は、テレビで見て大笑いした小学生時代の思い出です。スピーディでしたからねぇ。ボンカレーのCMも好きでした。

笑福亭仁鶴師匠のご冥福をお祈りします。合掌

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喜多野土竜
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