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Appleとintel、仁義なき戦い

◉Appleのエンジニアが、他社に引き抜かれるのはよくある話です。Appleが開発したプログラミング言語Swiftを開発したクリス・ラトナー氏も、Teslaが自動運転ソフト担当副社長に迎えて引き抜かれましたしね。で、Appleの独自設計のCPUであるM1チップで、とんでもない性能を叩き出したんですが。そのM1チップの開発を主導したジェフ・ウィルコックス氏が、Intelに引き抜かれたそうで。いやぁ、アメリカってこういう部分はドライですねぇ。

【AppleでMacのM1チップ移行を主導したエンジニアリングディレクター「ジェフ・ウィルコックス」がIntelへ移籍】GIGAZINE

AppleはMacで長らくIntel製チップを採用してきましたが、iPhoneのように独自開発のSoCに移行する計画を2020年6月に開催されたWWDC 2020で発表。その後、Apple初のMac向け独自シリコンとなる「M1」チップが発表され、同チップは海外メディアから「コンピューティング革命」「信じられない偉業」などと絶賛されました。そんなM1チップの開発を主導したジェフ・ウィルコックス氏が、Intelに引き抜かれAppleを離れたことが明らかになっています。

Intel Poaches Apple Engineer Responsible for Arm Transition and M1 Chips | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/news/intel-poaches-apple-engineer-responsible-for-arm-transition-and-m1-chipshttps://www.tomshardware.com/news/intel-poaches-apple-engineer-responsible-for-arm-transition-and-m1-chips

Apple engineering director responsible for leading M1 transition departs for Intel - 9to5Mac
https://9to5mac.com/2022/01/06/apple-engineering-director-m1-intel/

ヘッダーの写真はnoteのフォトギャラリーから、iPhoneやApple Watchの加工写真ですね。

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■Appleの深謀遠慮■

Appleは初代のMacintoshの頃から、HONDAのエンジンを積んだポルシェと自嘲していたように、CPUには泣かされ続けましたからね。そういう意味では、IBMとモトローラ社と連合を組んだPowerPCは、ひとつの成果でしたね。自分は、PowerPC自体はけして悪いCPUだとは思っていませんでした。むしろ、初めてPowerPCのG4ベロシティエンジン(アルティベック)の威力を見せつけられたときは、驚きましたから。ただ、低消費電力低発熱に、対応できなかった。

これからはノート型パソコンの時代と予見したスティーブ・ジョブズにとっては、商機を逃すのが、許せなかったのでしょう。不倶戴天の敵であるintelとついに手を握って、x86系に移行。そこで、マルチプラットフォームを志向していたMacOS Xの強みが出たんですが。ジョブズがすごいのは、おそらくはこのintel移行を決めたタイミングで、AppleAシリーズの企画を立ち上げているんですよね。intelの軍門に屈しても、ただでは起きないという気概。

■引き抜き後のintelの戦略は?■

10年前後の期間をかけて育てたM1チップですが、その圧倒的な低消費電力低発熱にも関わらず、高い処理能力という、奇跡のようなCPUができて。Appleの垂直統合の、ひとつの成果だと思っていたんですが。さっそく引き抜き。もちろん、たった一人の天才によってM1チップは主導されたわけでもないので、プロジェクトリーダーを引き抜かれただけでは、ダメージはそこまでないでしょう。サブリーダーやースタッフ、後継者も、それなりにいるでしょうし。

何より、Appleの強みはハードウェアである機体と、OSと主要アプリケーションというソフトウェアも、同時に開発している垂直統合。汎用性の高い製品を創るintelとは、守備範囲がズレ始めています。その点では、ライバルであるGoogleや華為も独自のCPU開発に舵を切りつつあり、intelとしては今後は厳しい状況が待っていますから。でも、例えばMicrosoftのWindowsOS専用のCPUとか、活路はありそうです。

■引き抜きは競争を生む■

かつては、intelのほうが低消費電力低発熱という技術では、世界でトップを走っていたんですけどね。その点では、MacOSの基幹部である、Mach 3.0+BSDをベースとしたDarwinも、初期の頃はあんなOSダメだという批判を読んだ記憶があります。純粋な文系人間の自分にはその批判の成否は分かりませんでしたが、PowerPC→x86系→M1チップと、複数のCPUを経た今となっては、AppleのDarwinという選択は正解だったように思います。

それは、独自設計のCPUで、しかもARM系CPUを選択するという部分も。どうもAppleは、表に出てこないエンジニアに、ものすごく優秀な人がいるようで。それは、Appleを追放されたジョブズが、NeXT社で理想を実現しようとして、集めたエンジニアたちなんですが。NeXT社は成功したとは言い難い状況でしたが、Appleという場を与えられ、花開いたわけで。もちろんAppleとしては、人材を引き抜かれていいように、手は打ってるでけれど。

■Appleの逆襲に期待■

そういえばジョブズ存命中も、Googleとの引き抜き合戦に業を煮やし、CEO同士が直談判なんてありましたね。日本のような終身雇用がないアメリカでは、才能がある人はバンバン引き抜かれて高い報酬を得て、逆に駄目な人材はエレベーターでジョブズとばったりあって、質問に答えられずにクビとか、普通にある世界。それは優しい世界ではないですが、アメリカという競争社会を支える、活力ではあります。自分はこういう状況って、悪いとは思わないんですよね。

日本の義理人情の世界も、好きですし。そこは、カネよりも別の目的や目標があって、そのためにはここがベストって部分はあるわけですからね。こうやって引き抜かれたAppleが、そこで失速するのか、あるいはintelをさらに引き離すのか? あるいは、CPUはもう微細プロセスとCore数の勝負で先が見えたので、実はRAMのほうの研究に注力していますたかあっても、自分は驚きませんけどね。Appleの逆襲に期待しましょう。

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喜多野土竜
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