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フリーランス新法と岸田総理

◉さて、今年11月から施行される、フリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)なんですが、漫画家やアニメーターの間では、さほど話題になっていません。なんでですかねぇ。これ、フリーランスにとっては、かなり重要な法律なんですが、成立時もあんまり話題になっていなかった印象です。


ヘッダーはフリーランス新法の公式サイトより、スクリーンショットです。

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■岸田総理の粘り腰■

詳しくは、上記リンク先の動画と各事項を、ぜひお読みいただくとして。

インボイス制度反対で、去年の夏はあれだけ大騒ぎしたんですけれども。今じゃすっかり過去の話題になってしまいました。問題があるなら、今でも継続的に、粘り強く問題点を訴えるはずです。ALPS処理済み水の海洋放出と、同じですね。一時期、ワッと騒いで、マイブームが去れば次の政府攻撃に走る。ただの八つ当たりでガス抜き、左派の政府批判の具にされてしまってる印象です。ひょっとして、フリーランス新法も、直前になってあそこがダメだここがダメだと、騒ぐつもりでしょうか?

岸田総理は、2022年に1度は見送ったフリーランス新法を、2023年には通してるんですよね。フリーランスに対して業務委託をした場合、直ちに書面または電磁的方法(メール、SNSのメッセージ等)で取引条件を明示する義務があります。口頭での明示はNGで、書面または電磁的方法かを発注事業者が選ぶことができます。取引条件として明示する事項は9つです。某新聞社系出版社に、煮え湯を飲まされた人間としては、あの時フリーランス新法があれば、裁判になる以前に向こうの負けだったのに……と、つくづく思います。だって以下の9項目を、ひとつも守っていないのですから。

■改正旅館業法でも■

これは、同じく2022年に見送ったが、2023年成立の改正旅館業法も同じで。カスハラ客の宿泊拒否事由などが追加されています。安倍政権が打ち出した観光立国政策を、円滑化するために必要な法整備を地道に、でも着実に進めているんですね。マスコミは「オーバーツーリズムが〜! 観光公害が〜!」と騒ぐのですが、インバウンド消費は自動車に次ぐ輸出産業に成長しています。しかも日本の観光産業は、世界的には47億ドルで29位に過ぎないので。まだまだ数倍に伸びる成長産業です。

税金を取りやすいサラリーマンを優遇したがる財務省に対し、フリーランスや自営業にとって、本当に大事な法整備をしていく岸田政権の豪腕ぶり。
問題解決能力もないのに騒ぐ野党やマスコミが、岸田政権を嫌うのも当然でしょう。これは、インボイス制度は時代に必然なのに、左派といっしょに反政府の動きに乗っかって、騒いでるような日本のアニメ業界の一部には、未来はないということです。いいかげん、是々非々で評価すべきかと。インボイス制度反対で、何の成果がありましたか?

■9つの明示義務■

それでは、フリーランス新法の重要な部分を。

フリーランスに対して業務委託をした場合、直ちに書面または電磁的方法(メール、SNSのメッセージ等)で取引条件を明示する義務があります。
明示方法は、口頭での明示はNGで、書面または電磁的方法かを発注事業者が選ぶことができます。
取引条件として明示する事項は9つです。

①給付の内容
②報酬の額
③支払期日
④業務委託事業者・フリーランスの名称
⑤業務委託をした日
⑥給付を受領する日/役務の提供を受ける日
⑦給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所
⑧(検査をする場合)検査完了日
⑨(現金以外の方法で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関して必要な事項

こんなの、製造業とかなら当たり前の契約の提示です。でも、出版社の圧倒的な優越的な立場とその濫用を、地方裁判所の裁判官とか理解できず、きちんと要求しなかった作家側が悪いと、フリーランスに不利な判決を出すこともしばしばでした。それがわかっていて、電話や口頭で話を済ませ、あとで言った言わないの泥仕合に持ち込むところも。そういうところには、「先程のお電話の件ですが……」とメールにして、相手に送っておくと証拠になったりします。でも、この改正で、フリーランス側はとても助かることに。

だだ同時にこれは、漫画家がアシスタントに仕事を依頼するときにも、同じように条件の提示しないといけない、ということです。口約束やなぁなぁとまぁまぁで済ましていた部分が、悪化の側にも求められる。ここらへんは、今まで見逃されていた税金が、インボイス制度で明確化されたのと似ていますね。

■7つの禁止行為■

作家にとって、重要なのはこの『7つの禁止行為』でしょうね。

フリーランスに対して1か月以上の業務を委託した場合には、
7つの行為が禁止されています。
受領拒否(注文した物品または情報成果物の受領を拒むこと)
報酬の減額(あらかじめ定めた報酬を減額すること)
返品(受け取った物品を返品すること)
買いたたき(類似品等の価格または市価に比べて、著しく低い報酬を不当に定めること)
購入・利用強制(指定する物・役務を強制的に購入・利用させること)
不当な経済上の利益の提供要請(金銭、労務の提供等をさせること)
不当な給付内容の変更・やり直し(費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせること)

今後の問題になると思うのですが、ネームの直しに関しても、初稿・再稿・念稿の3回ぐらいまでが限度で、それを超えて過剰なネーム直しを要求する、無能な編集者は責任を問われることになるでしょう。もちろん、作家の側でも、ネームの直しに応じないなどの、トラブルが起きる可能性もあるので、けっこう問題を含んでいるでしょうね。

これは、漫画家のアシスタントに対するダメ出しも、場合によっては問題になるということです。昔は、アシスタントが3日かけて仕上げた外見に、無言でホワイトを塗ってダメ出しした伝説の漫画家もいますが。それも、喧嘩別れする覚悟があれば、訴えることは可能でしょう。ただその場合、業界的にアシスタントの仕事が減る可能性もあります。あくまでも、どっちの言い分に理があるか、ですが。

④の買い叩きは、集英社が週刊少年ジャンプなどの新人作家の原稿料を公表し、今後は多くの編集部で公表することが求められるでしょう。出せないところは、その経営状況とかを疑われることに。また単行本印税も、8%とか5%に値切っている編集部は、内実が知れ渡ると苦しくなるかもしれません。

■募集情報の的確表示■

他にもいろいろ重要な部分がありますが、個人的にポイントになるのはここかな、と。

広告などによりフリーランスの募集情報を提供する際には、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、また、募集情報を正確かつ最新の内容に保たなければなりません。

これは、最近多いコミカライズ漫画の募集と、その際のトラブルについても、軽減される面もあるでしょうね。
同時に、漫画家のアシスタント募集も、食費や交通費や労働時間などの、細かな条件を明示する必要があるでしょう。
しばらくは試行錯誤して、そのうちに募集のテンプレートができるでしょうね。

・時間の明示(遅刻などのペナルティも含む)
・期間(短縮や延長の場合の取り決め)
・報酬の基準明示(時給か点数かの形式の明示)
・交通費(事前精算か事後精算かの明示も)
・食費(通いの場合。リモートなら不要)
・締切(発注の形態によるが、リモートだと納期の明確化)
・延長時の残業代(割増料金などの明示)

などが必要でしょう。
アニメーターとかも、社員ではなく契約の扱いですから、そこら辺でいい加減なことを書くところは、淘汰されるでしょうね。
実際に動き出すと、いろんな問題も出てくるでしょうから、自分も当事者として追いかけたいです。


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