インボイス制度のアレコレ
◉インボイス制度について、10月1日からの実施なのに、今になって騒いでいる人たちが多くて。早い人は2〜4年ぐらい前から、問題点を指摘していたのに、自民党攻撃に使えると思ったのか、ここに来て声が大きいのですが(しかもトレンド解析で怪しい動きが指摘されてる)。それがあまりにもいつものメンバーで、やってることも言ってることも、いつものパターン。自分もこの件にはイロイロと言及しましたが、かなりのインプレッション数でしたので、備忘録と情報の集約をカネて、noteにまとめておきます。自分も経済素人の経済音痴なので、新しい情報が入ったら、随時更新する予定です。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。駄々っ子のイラスト。特に他意はありません。
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■民主党政権の遺産■
そもそも、インボイス制度は、民主党政権が推進したものでした。民主党政策集の2009年の項目を見ると、『消費税改革の推進』という項目で、ハッキリ言及しています。もともと自民党は、地方の農林水産業や自営業者が支持基盤で、そこへの迎合として、消費税分の納税が免除されていました。民主党の支持母体であった日本労働組合総連合会(連合)としては、そこが不満だったんですよね。被雇用者(要するに勤め人)は消費税払ってるのに、なぜ自民党の支持基盤の連中が優遇されているんだ、という話です。以下に引用します。
いかがでしょう、これ自体は普通に左派の人間なら、賛成できる内容ではないでしょうか? 妙な軽減税率なんか設けず、一律に徴収して低所得者には給付付き消費税額控除で対応する。かなり真っ当な政策です。だからこそ、当初はインボイス制度導入を渋っていた自民党も、安倍政権の2016年11月18日に成立した改正消費税法によって、消費税率10%への引上げ・軽減税率制度・インボイス制度の施行日が確定します。ハッキリ言えば、国際的には左派の経済政策と見なされていた安倍晋三総理大臣らしい、逆に言えば自民党らしからぬ政策なんですよね。当時、さして批判が起こらなかったのは、軽減税率というマスコミ向けの飴があったのと、元々は民主党の政策だったのが大きいです。
■自民党側も折れた■
そもそも、インボイス制度の原型は、中曽根康弘内閣で提案されてるんですよね。中曽根大勲位も、左派からは蛇蝎のように嫌われていますが。仕事をしない国鉄労組を解体し民営化、赤字垂れ流しを改め、電電公社やタバコ専売公社の民営化で、現在につながる経営健全化をもたらした剛腕宰相でしたが。直間比率の見直しと消費税の導入の必要性、インボイス制度の必要性を昔からわかっていたんでしょうね。こちらのWorkshipマガジンによれば2022年の就業者数は6723万人で、自営業主・家族従業者数は648万人。 就業者の89.9%は雇用者であるため、日本の全就労人口に占める自営業主の割合は10%弱。自民党が折れたのは、時代の必然でもありました。
中曽根内閣が「公約違反の売上税」の大合唱で倒れ、竹下内閣で導入された消費税は、年間課税売上高3000万円の免税点で帳簿方式という、それでも自民党支持者の自営業者には、まだまだ有利な制度でした。これが年間課税売上高1000万円に下げられ、帳簿方式からインボイス制度にへと、段階的に民主党が理想とした本来の形に、収斂しています。民主党の残党の国会議員はむしろ、喜ぶべきでしょう。それどころか、「軽減税率なんて辞めて我々が提案していた給付付き消費税額控除を導入しろ」と提言べきでしょうに。それなら、支持できます。
■健忘症の旧民主党■
ところが、インボイス制度の実施直前になって騒ぎ出し、国会前でいつもの集会。でも本当にストップさせる気は無くて、昭和の時代の牛歩戦術と同じで、やってるアピールです。もう2016年から動いてて、いろんな民主的な手続きをクリアして、10月から実施なのに、政局に利用する気満々。安保法制が~マイナ保険証が~汚染水が~と、何が違うんでしょうか? このタイミングで、一人で重複署名できる雑なウェブアンケートを50万筆以上集めました、さぁ受け取れとか、手続きから外れまくっています。そんな物を受け取って、たった50万筆で急転直下取りやめになるはずもなく。というか、取りやめになるのは、中国や北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のような独裁国家だけでしょう。民主主義を舐めてます。
だいたいこの署名が、正式な署名として要件を満たしておらず、意味のないものなんですよね。そもそも拒否されたくなければ担当省庁宛てか、最悪でも議員会館宛てで送付すれば、受け取り自体が拒否されることはないのに、けっきょくマスコミに「受け取り拒否!」と強い言葉で印象操作したいがゆえの、パフォーマンスですよね。実際、冒頭の毎日新聞の記事とか、思惑通りの見出しに。官庁が閉まってる18時30分過ぎに行くこと自体、解ってやってるわけです。岸田総理も18時以降は予定が入っていましたし。こんな人達とつるむことの、マイナスをもうちょっと反対派の声優や漫画家やアニメーターは、考えるべきでしょう。
真っ当な意見です。ただのパフォーマンスなのが、明白ですね。少なくとも政治家は、ちゃんと署名についてアドバイスすべき。これでは解ってやってると、疑われて当然でしょう。そして、こんな意見を見かけました。
イヤそれを「アポを取らず突撃したって」と呼ぶんですよ、世間一般では……。
■害意を安易に表明■
挙句の果てに、集会では暴言が飛び出たようです。安倍晋三元総理大臣が昨年、凶弾に倒れて。今年も、岸田文雄総理大臣が爆発物を持った人物のテロに遭遇したわけで。比喩にしても、こういう事を言うのはダメでしょう。まぁ、比喩ではなく、マジに言ってるんですが。その場のノリで言ってたようですが、今の時代はカメラやビデオやボイスレコーダー代わりになるスマートフォンを、多くが所有する時代なんですよ?
さらに、国民民主党の議員には、帰れコールも起きたようです。誰が主導していたか、なんとなく推測できちゃいますね。ここに来ての、玉木雄一郎国民民主党代表のインボイス制度反対表明は、自分は支持できません。でも、言ってること自体は真っ当です。
そう、今回の動きは、党派性丸出しの、政局狙いの動きに見えます。党派性丸出しのくせにまとまろうとするから、内ゲバに走る。70年安保の頃から変わらぬ左翼の宿痾。分断したいならご自由にと思いますが、それで政治的な運動になるんですか? 老婆心ながら、そう思います。署名も、そういう乗せられやすい人の個人情報を得るための仕掛けじゃないかと、厳しいことを言う人もいました。そんなことはないと思いたいですが、完全否定できない部分も……。
なんかもう、裏返った敗北主義というか、どうせ勝てないなら無茶な要求を言い募って、自分の純粋主義をアピールしたいって感じなんでしょうけれども。これも、獄中非転向の共産党員が、戦後にあっぱれ非転向の闘士と評価された、その成功体験が忘れられないのか。備忘録も兼ねて、コチラの画像も貼っておきますね。メンツがもう…。
■狙いは議員批判?■
さらに、こんな指摘がありました。騒いでたのがいつもの人達で、なんなら山田・赤松両氏への批判に繋げようという、政治的な意図が透けて見えていました。赤松議員が出馬した去年とかの段階で、インボイス制度を持ち出して腐してた人間は、チョイチョイいました。でも上でも書いたように、民主党が持ち出し、最初は渋ってた自民党が乗って、OECD加盟国は日米以外は全部採用してる制度の採用が決まったら、後はもう島津の退き口──撤退戦でどれだけ妥協を引き出すか──しかないのに。直前になって、署名の要件を満たさないウェブアンケート振り回し、撤回要求とか、駄々っ子にもほどがあります。
繰り返しますが、民主主義のプロセスを無視しろとか、いったいどこの独裁国家だって話ですよ。岸田総理が撤廃や延長を極めれば、そうなるような話ではない。すでに、そこに向けて7年かけて動いてきたんですから。山田議員も赤松議員も、現状のままでのインボイス制度の導入は問題があると、地道に改善のための活動をしていたわけです。実際、免税事業者の生殺与奪件は発注側にあるのですから、そこの改善や制度の修正は必要でしょう。両議員とも、地道に国税庁とかにレクを繰り返して、その成果はある程度進んだところで、下記リンクの動画やツイートのような形で、地道に発信しているわけです。
頭の悪い反論が来る前に言っておきますが、別に山田議員や赤松議員を、批判するなと言ってるわけではないです。問題があるなら、そこを指摘し、理路整然と進めれば良いわけで。では、こういう地道な活動や、国会でインボイス制度について質問した国会議員、この7年間でどれだけいるのやら…。これは後述しますが、1000万円以下の免税事業者が、一気に仕事が減るかと言えば、そんなことはないです。特に漫画家やアシスタントアニメーターは、年収1000万円以上の売れっ子だけで、業界が成立していませんから。むしろ、それは上位数%の人間であって、業界構造的には違いますから。
■建設的な提案を!■
ぶっちゃけ、声優もアニメーターも漫画家も、個人事業主がほとんどで、仕事を貰う立場の弱さが有り、
「消費税分のギャラアップしてください」
「消費税分の制作費アップしてください」
「消費税分の原稿料アップしてください」
を事務所や制作会社や出版社に言えず・言っても通らないから、政府に八つ当たりしてる部分があります。
その気持ちは自分も同じ、フリーランスの物書きの立場だから理解はしてるんですが。一般の自営業者は当たり前にやってることを、オマエらはやっていない変な業界だなと、思われた面が大きでしょうね。結果的に業界のブラックさや、運営や賃金や契約など、構造のおかしさを一般人に可視化してしまいました。また、岸田総理への害意を平気で公言するような〝いつもの人達〟と、声優やアニメーターや漫画家はつるむのかよ……という、マイナスが大きかったように思います。まぁ、エコーチェンバーの中では、そういう人扱いはされないでしょうけれど。
自分は、出版社の側の人間でもあったので、個人事業主である作家が、アホな編集長の独断と偏見で才能を潰される姿を、いっぱい見てきたから。だからこのnoteでも需要はあまりなくても、作家が出版社に頼らずマネタイズできる方法を、イロイロ試行錯誤してきましたし、その試行錯誤やささやかな成果については、noteやX(旧Twitter)でも、ちょいちょい言及しています。それこそ、アシスタント代についても、漫画家ともデジタル化でノーアシスタントでどれぐらいやれるかの実験とか、10年以上前からあれこれやってたわけで。拙著もまた、そのために秘伝技術を公開しています。
■もう備える時期に■
「作家が政治的な発言をすべきではない」という意見も良く聞きますが、それもひとつの処世術ですから。発言するのもしないのも、同じです。でも、政治的発言をしないことは、政治に無関心であることと、イコールではないはずです。政治に無関心だったのに、活動家に利用されて付け焼き刃や受け売りで発言し、声優って・アニメーターって・漫画家って……と、業界外の人間に呆れられてる部分を、もうちょっと自覚して欲しいです。でも無理だろうなぁ。すがやみつる先生とか、淡々と備えています。
日本とアメリカ以外のOECD加盟国では、当たり前の制度ですから。しかも日本もアメリカも、海外との取引ではインボイス制度やっていますから。さて、こちらのサイトによれば、漫画家の平均年収は約500万円です。もちろん、『鬼滅の刃』の吾峠呼世晴先生のように最終巻だけでも、
初版395万部✕481円✕印税率10%=1億8999万円
なんて人もいますから、中央値としての数字だそうです。そう、1000万円以上の作家だけでは、雑誌は作れません。だから、消費税分はウチで持つと宣言する出版社が、出る訳です。
しかし、1000万円以下でも適格請求書発行事業者になることを、出版社から求められる作家はいるでしょう。免税事業者からの仕入では仕入税額控除を受けられなくなりますから。しかし免税事業者に対して取引の再交渉などを行うときには、独占禁止法や下請法に違反するリスクが、出版社側にはあります。また、6年間の経過措置がありますし、簡易課税制度を選択している事業者は除外されます。しかし、こうやって複雑化していると、民主党の給付付き消費税額控除を導入って、シンプルでわかり易くないですか?
仕組みについては、コチラのnoteがわかりやすかったです。
■労働組合と協会と■
自分へのリプライでも、優れた内容があったので、転載しておきますね。まさに、これですね。例えば声優ならランク制の相場変更の交渉権を得るとか、アニメーターなら産業別労働組合を作る方向に動くとか。漫画家なら、既にある漫画協会を全面に出し、各出版社に最低原稿料とか、この基準をクリアしたらこの額が適用とか、各出版社ごとのランクをある程度の可視化を求めるとか。でも、そこは作家個々では出版社は動かんでしょうし、赤松議員らを敵視する方向で煽ってる人もいて、難しいでしょうね。組合や協会を上手く使う。自分が労働組合とかいうと、ぎょっとする人もいるでしょうけれど、組合は労働者の権利を守るために必要な組織です(断言)。組合にイデオロギーを持ち込むのは批判しますが。
ただ、ベテラン作家とかゆるい契約のおかげで、一般企業なら違約金が出る締め切り破りや原稿を落とす行為が、なぁなぁで許されてきた部分もありますから。作品づくりは杓子定規には行かないので、この点は自分もわかっています。だから自分は出版社に頼らず、作家各自が自分でマネタイズできる方法論を、ずっと追ってるのです。まぁ、この動きに気づいてる出版社もいて、一部では敵視しているようですけどね。でも、一般企業だって給料払えず副業推奨する時代なんですから、作家も同じかと。そういう動きが嫌なら、出版社側は専属契約するとか原稿料上げれば良いんですけどね。やらないから、作家は作家で動くべき。コチラの意見も。
アニメーターに関しては、プロとして篩にかけられている途中の人間を取り上げ、ブラックだとマスコミが過剰に喧伝した部分があります。でも、ちゃんと描けるアニメーターは、30代以降の平均年収はそんなに悪くはない(個人的にはもっと貰って良いと思う)ですし、定年もなく60代でも70代でも、能力があれば長く出来る仕事ですから。サラリーマンとの単純比較は難しいです。これは、漫画家も同じ。マスコミの報じ方にも問題があるんですよ。もちろん、例外はいくらでもありますし、能力給の世界ですから、平均より稼げていない人もいるのですが。
■まとめと雑感など■
岡田斗司夫さんでしたか、ガイナでアニメーターのギャラを2倍にしたら仕事を半分に減らして、空いた時間で旅行に行っちゃった、と語っておられましたね。 どこまで本当かは知りませんが、自分ならそれ、やりそうだなぁ…と。声優に関しては『声優名鑑2022』の掲載人数は1658名。多くても2000人ぐらいでしょうか? 漫画家はCLIP STUDIOのセルシス者の推計で全国に3000~6000人とか。 アニメーターは4500~6000人ぐらいでしょうか? こう言ってはなんですが、自営業者としてはかなり特殊で、田舎の雑貨屋の息子としては、一般化できるような商売ではないと思っています。だから、他業種から批判が寄せられたわけで。
しっかし、こうやって苦言を呈しても、喜多野は自民党の犬だとか、インボイス制度は民主党政権で提起されたモノという基礎的なことさえ知らない人が、トンチンカンなことを言うのだろうと思い、嘆息するしかないです。自分のフォロワーには、インボイス反対派も諦念派も消極的賛成派もいるのですが、意見は異なっても、いきなり汚い言葉で突っかかってくる人はいないので、まだしもなんですが。当方をリムーブした人が、受け売りを語っているのを見かけ、なんともはやと思いました。
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ふぅ、長々と最後までお付き合いありがとうございます。このnoteは無料ですが、10000文字近い、かな〜りの分量です。割と出版関係にもリベラル界隈にも不都合な真実を書いちゃってるので、直接間接の嫌がらせが今後、くるでしょう。なので、日々を生きるための投げ銭がほしいですm(_ _)m 本noteを「面白かったんで300円ぐらいは払ってもいいや」という人は、続きを読むをクリックして、投げ銭をください。開いても、お礼の言葉が一行、書いてあるだけです。でも皆さんの心意気が、こういう無駄なモノを書く活力になりますので( ´ ▽ ` )ノ
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