王イズムとパ・リーグの強打
◉王貞治会長は、言わずもがなのホームラン王。13年連続を含む15回のホームラン王は圧倒的ですが、実際は8年連続を含む13回の打点王で、3年連続を含む5回の首位打者で、3回の最短多安打で、18年連続の四球王であり、バットマンとしては頂点に君臨しているといって良い、圧倒的な成績。その遺伝子がパ・リーグに確かな足跡を残すのは、当然と言えば当然ではあります。
【球団の垣根越える王イズム 「強打のパ」育む源に】日経新聞
ロッテ・安田尚憲、藤原恭大―ソフトバンク・柳田悠岐―ソフトバンクOBの松中信彦氏……。プロ野球の合同自主トレや、キャンプで生まれつつある師弟関係をたどっていくと、王貞治・ソフトバンク球団会長に行き着く。球団の垣根を越えて根付く「王イズム」が、新たなスターを生むかもしれない。
1月17日から22日まで、柳田の自主トレに参加した藤原は打席での心構えを学んだ。2ストライクと追い込まれたら、どう考えればいいか。藤原の問いに柳田は「あまり考えていないよ」と答えたという。その心は「三振でアウトになろうが、いい当たりでアウトになろうが、アウトはアウトなんだから」というものだった。
というか、残さなかったら、日本球界の損失。王会長は名伯楽でもあり、監督時代には小久保・松中・城島・井口と、強打の選手を育てていますしね。秋山監督時代には、柳田をフルスイングさせて長距離砲に育てるよう、ゴーサインを出していますから。本来は首位打者タイプの柳田が、長打力を発揮できたのも、フロントのトップである王会長の肝煎りがあってこそ。秋山監督も、西武時代に三振を気にせず振り回しましたし。
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■野茂・イチロー誕生の衝撃■
仰木彬監督が生前、セパの格差について語っておられました。それは、野茂英雄とイチローという、メジャーリーグでもトップクラスの選手が重なったのが大きかったと。かの金田正一さんですら最多勝は3回。神様仏様稲尾様の鉄腕稲尾さんが最多勝4回。ところが、野茂投手は4年連続最多勝と最多奪三振を記録する怪物ぶり。なにしろ、メジャーでも2回の最多奪三振を記録しましたしね。
ストレートとフォーク主体のパワーピッチに、当てて逃げてては勝てませんから。当然、パ・リーグの打者は野茂投手の剛速球を撃ち返すのをテーマにする訳で。その野茂投手の日本球界ラストイヤーに、彗星の如く現れたのがイチロー。メジャーでもレジェンドクラスの3000本安打を達成し、シーズン最多安打の記録さえ塗り替えた男。ただでさえ、対野茂英雄でレベルが上がった打撃陣に、天才が参戦。
こうなると、今度は投手陣が対イチローでパワーピッチをせざるを得ない。ファストボールをキッチリ投げ込み、その上で決め球の変化球が無いとダメ。この流れの中で、王監督の「投手の速球を一撃で仕留める」という、打撃理論がマッチしたわけで。打撃理論を体現したのが、平成唯一の三冠王・松中信彦選手。三冠王2回の王監督が三冠王を育てる。ドラマですねぇ。個人的には、令和の世にも三冠王が出て欲しいです。
■青田昇さんの打撃理論■
さて、ホークスに関しては、もうひとつ、青田昇さんの打撃理論も注入されています。けして大柄ではない体格で、全身を使ったフルスイングで本塁打王5回の打点王2回の首位打者1回、最多安打も1回の大打者。青田さんの打撃理論はレベル・アッパースイングで、ダウンスイング理論の全盛期には、やや異端だったんですが。阪急ブレーブスでは名伯楽として長池徳士選手らを育てます。
長池徳士選手は大学通算3本塁打の、けして長打力が有るタイプではなかったのですが。日本人も長距離砲が欲しいという、西本幸雄監督の要請で、改造したのが青田さん。内角を打てないと4番は務まらんと、徹底的に内角打ちを鍛え、本塁打王3回、打点王3回の大砲に。この長池さんが、西武ライオンズ時代に鍛えたのが、秋山幸二選手。言うまでもなく、ホークスの前監督。
秋山さんは、同じ熊本で強打者として知られた伊東勤捕手が、当てるバッティングを求められた結果、中距離砲になってしまい、三振を恐れずフルスイングをさせられた自分が球界を代表するスラッガーに育ったため、環境を与えないと才能は育たない、という経験則を得ておられたので。柳田の育成も、こういうパ・リーグの歴史があってこそ。野球という歴史があるスポーツの、強みですから。この伝統がずっと継承されますように。
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