核融合への誤った期待
◉核融合関連の話題が、にぎやかです。カリフォルニア州のローレンス・リヴァモア国立研究所(LLNL)の核融合実験で、投入したエネルギーよりも多くのエネルギーを発生させることに成功したと、米エネルギー省が昨年12月に発表して、一気に火が着いた感じです。アメリカの核融合スタートアップHelion Energyは、2028年には商用炉稼働とかぶち上げていますし、期待は大きいのですが。日経サイエンスの記事は、冷静さを呼びかける内容になっています。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、太陽と風力発電の写真です。
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■永遠の30年■
そもそも、核融合は自分が小学生の頃から、30年後に実現する夢の技術でした。あれから40年ほど経って、ようやく投入量より多いエネルギーが出力できたのですが。まだまだ実験用の研究炉での話であって、熱量も微々たるものですしね。ものすごく大きなブレイクスルーだったのは事実ですが、そう簡単な話でもないんですよね。もっとも、核分裂による原子爆弾が実験に成功したのが1945年で、研究用原子炉が臨界に達したのが1943年なんですよね。原爆よりも先に、原子炉が先行していたわけで。
エニウェトク環礁での水爆実験が1952年ですから、この時代の流れからすれば、遅くとも30年後には実現できると、科学者も思っていたのでしょうね。でも、そこからが長かった。1億度を1秒閉じ込められれば、核融合ができると、当時の学研科学にも書いてあった記憶が。ちなみに、現在の核融合に大きな力を発揮しているレーザーは、アインシュタインが1917年の論文で理論的基礎を確立しており、誘導放出は1947年に成功しているんですよね。戦争を挟んで前後の科学的な発展が、すごかったのがわかりますね。でも、成熟には半世紀以上かかったわけで。
■技術は総合的に発達■
原子力の利用は、こうやってみるとアインシュタインという天才の代名詞となる人物によって、量子力学などが一気に進み、かなり短期間に大きな成果が出たのがわかります。やはり、天才が時代を変える部分はあるのでしょう。ただ、そこからは凡人の積み重ねが大事ですから。プラズマを閉じ込める容器の素材の開発とか、レーザーの高出力化とか、周辺技術が揃わないと、理論だけでは難しいということで。宇宙エレベーターも、理論は早くからあったんですが、カーボンナノチューブの研究と開発によって、現実味が見えてきたように。
日本は日本で、核融合には周辺技術で貢献できるので、イロイロと力を入れていますね。特に、大阪大学の研究がかなり世界レベルのようで、このnoteでも何回か言及していますが。けっきょく、こういう研究も並行して続けていって、総合的に技術が成熟して、ようやく実現なんでしょうね。でも、永遠の30年が、20年になり10年になれば、それだけで価値があると思いますので。20年後に実現でも、早い方だと思いますね。自分が生きてる内に、実現できたら嬉しいですが。
■現実的には高温ガス炉■
とはいえ、何度も書いていますが、たとえ核融合が実現しても、水力発電は100年先でも重要な発電方法のひとつで、あり続けるでしょうね。そういうものだと思います。核融合炉の商用炉稼働は、まだまだ先のようですが。現実的には、第四世代の原子炉である、高温ガス炉が実現可能なエネルギー原。メルトダウンしづらい構造で安全性が高く、小型で、設置する場所を選ばないのが、大きいですね。アメリカとイギリスは2029年の商用炉の稼働を目指していますし、中国はすでに実証炉が一昨年に臨界に達していますし。こちらは現実的。
その名の通り、超高温が出る高温ガス炉は、それで製鉄ができるほどの高温なんですが。これを利用しての水素生成、あるいは石炭液化の研究も進んでいますし。その意味で、自分は高温ガス炉推しですので。核融合の進展を期待しつつ、でも第四世代原子炉の研究に期待ということで。これも何度も書いていますが、無能な方の菅元総理のせいで、日本の高温ガス炉の研究は10年間ストップしてしまったんですよね。そのリベンジの意味でも、高温ガス炉の日本国内稼働を見届けたいです。第四世代炉は反原発派の「東京に原発を!」の夢(笑)を実現できますので。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ