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『100日後に死ぬワニ』映画化への不安

◉タイトルが『100日後に死ぬワニ』から『100日間生きたワニ』ですか……。そして監督は『カメラを止めるな!』、通称カメ止めの上田慎一郎監督。カメからワニですか。次は三島由紀夫の名作戯曲『黒蜥蜴』か、あるいは古谷実先生の『ワニトカゲギス』とか? 冗談はともかく、この今さら感は、作品を評価している身としては、とても残念ですね。本来なら大盛り上がりのはずだったのに。

【「100日後に死ぬワニ」あと100日で映画公開!ワニ役は神木隆之介&監督は『カメ止め』の上田慎一郎】ムービーウォーカー

昨年、SNS上で連載され社会現象を巻き起こした4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」。同作が『100日間生きたワニ』のタイトルでアニメ映画化され、5月28日(金)に公開されることがわかった。また、あわせて神木隆之介、中村倫也、木村昴、新木優子がボイスキャストを務めることも、コメントと共に発表された。

「100日後に死ぬワニ」は、原作者きくちゆうきのTwitterに100日間毎日投稿され、ワニの日常を綴った4コマ漫画。2019年12月12日の開始から話題となり、2020年3月20日に迎えた最終話では、いいねの数が214万というTwitterの国内歴代最多数を記録。映画ではワニの100日間の日常と、ワニが死んでから100日後、大切なものを失った仲間たちのその後も描かれる。

本作は、いちおう35万部売れたんですよね。これはカメントツ先生の『こぐまのケーキ屋さん』の第①巻の累計発行部数とほぼ同じ。でも、こぐまのケーキ屋さんは第②巻以降も順調に巻数を重ね、ロングセラーになりつつあります。関連グッズも次から次へと発売され、概ね好評です。でもワニは……。そう考えると、本当なら100万部だって売れた可能性があると思っていたのに───と、編集者が本業の人間としては、残念でなりません。

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■作品作りは足し算か?■

ダメ編集者の特徴として、作品作りを足し算で考えてしまうタイプがいます。今ヒットしているこの作品のこの要素と、あの作品のあの要素を足していけば、売れるはずだという考え方。実際はそんな単純な話ではなく、作品というのはフランケンシュタインの怪物のように、要素を継ぎ接ぎしても怪物にしかならないものです。ただの推測に過ぎませんが……とあらかじめお断りした上で、どうも間に入った人間がそういう発想をしている危険性を感じます。

それがマネジメント会社の発想なのか、小学館の担当編集の発想なのか、あるいはもっと別の人間の思惑なのかは、分かりませんが。しかし、作品のタイトルを「死ぬ」から「生きた」にポジティブなものに変更し、神木隆之介君のようなアニメでも映画でも評価を受けている若手俳優を起用し、アニメでの実績がほぼない有名監督を起用してと、これは完全に足し算の発想ですよね? 厳しい言い方をすれば広告代理店の発想と言うか、営業販売の発想と言うか。岡田斗司夫さんが言う、作品と商品の違い。

■変わってほしいところが変わらない■

さらに言えば神木隆之介君以外の声優は、声優が本業ではないですしね。こういうところも、典型的な営業サイド主導の商品づくりと言うか……。そういえば安堂友子先生の4コマ漫画で、カチカチ山が未来の世界で映画化されて、原作からいろいろと設定が変えられていて、それでも「旬の芸能人声優初挑戦」という部分が変わっていないと言う、毒のあるギャグありました。もちろん、作品で未知のポテンシャルを見せてくれれば、文句はありませんが。

「やっぱ、死ぬってのはネガティブな言葉だからよくないよね」
「そっすね~」
「だからポジティブな、生きたにしようか」
「そっすね~」
「突っ込まれたら、ワニの死んだ後も描くから変えました〜と言っとけば大丈夫」「そっすね〜」
的な会話で、タイトルが変更されたとしたら、いちファンとしては残念です。まさか、こんな会話は企画会議でされてないでしょうね?

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■商売ありきで逆算する怖さ■

もちろん、いちファンとしてはこちらの予想を裏切るような出来の作品になって欲しいとは思っています。素材としては繰り返し書きますが、とても出来の良い作品だと思います。作品の中で作者自身が色々と仕込んでおいたことなど、よく練られているなと思った部分も多々あります。本業が編集者の目から見ると、続編やスピンオフ作品などを見越して仕込んだのではないか……と思えるような、作者の高い構成力も感じましたので。でもそれも、連載終了後の騒動で立ち消え。映画で回収してほしいです。

昨年の騒ぎの後で見た意見で最も的確だったのは、悲しみに暮れて葬式に行ったら物販をしてる人間が大量にいた、という例えでした。新約聖書の中では、聖なる場所で物を利用している商人たちに怒りをあらわにするイエス・キリストの姿が描写されていますが。マネジメント会社や広告代理店、出版社としてはビジネスチャンスを逃したくないという気持ちはすごくよく分かるのですが……。でも結果的に、素晴らしい才能を潰しかけているというのは、間違いのない事実。

■これがクリエイターファースト?■

間に入ったマネージメント会社の社長は、インタビューでクリエイターファーストだと語っておられました。言葉の端々から、作者やマネージメント会社とは別の思惑に振り回されて、思うに動けない様子が伺われました。それが事実か、責任転嫁か、自分には確かめようもないですが。自分は作者きくちゆうき氏をフォローしていますが、何か書き込むたびに数千や数万単位でフォロワーが減っているという状況を、この状況を招いた人たちは本当に真剣に受け止めているのでしょうか? 

受け止めてないから、こんな形で企画を押してしまったのではないでしょうか? もう、何を言っても悪い方に解釈され、嫌悪され、フォロワーが離れていく。残ってるフォロワーも、フォローを外すのが面倒臭いか忘れてるだけなのか、RTもイイネも少なかったです。フォロワー数を増やせと指南するエージェントなら、この状況をどう評するのか……。繰り返しますが、自分のこんな予想を裏切って、映画は汚名返上・名誉挽回の傑作になってくれることを期待します。公開されたら、万難を排して鑑賞しに行きたいと思います。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


■追記■

観てきた感想をば、noteに書きました。結論から言えば、悪くない出来です。

興味のある方だけどうぞm(_ _)m

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ