これからの農業と食の安全保障
◉ジャーナリストの佐々木俊尚氏が、日本の農業について語っておられたのですが。一部には不評だったようですね。うちの実家も小さいながら食べるぶんぐらいの田んぼは持っていますし、第2種兼業農家ということになるのですが。従兄弟は専業農家もいますし、中の人の一人は、熊本で農業をやっています。日本の農業に関して言えば、やりようによっては成長産業だと思うんですけれどね。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、稲穂と夕日の素晴らしい写真ですね。瑞穂の国。
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■まだ多い日本の農家?■
「戦争が終わった時代の日本の農業人口は、約1400万人いたのです。いまは200万人」と佐々木俊尚さん。そこまで農業をする人口は減っているんですよね。逆に言えばその人数でも、米は自給できているわけで。ちなみに、15歳以上就業者数6151万人の内、第1次産業は315万人5.1%、第2次産業は1592万人で25.9%、第3次産業は4138万人で67.3%と、もう農林水産業は日本の産業の中心ではないのが現実です。たぶん農業人口は3%ぐらいですかね。
ところが、アメリカの農場や牧場で働く人の数は、就業人口は約260万人、1.3%に過ぎないんだそうです。アメリカの人口が3億人を超えていることを考えれば、日本よりはるかに少ない農家の数と言えます。アメリカの比率なら、日本は108万人でもいいことに。さらに西ヨーロッパ最大の農業国であるフランスは、農業就業人口は91万人で、労働力人口の3.1%なんだそうです。フランスの比率なら165万人ぐらい。大きく減った現在の日本の農家の数ですが、実はまだ多いという実態が見えてきます。
これはどういうことかといえば、戦後の農地改革で小作農が自分の土地を持てた結果、小規模農家が膨大に生まれてしまった、という部分があります。日本の大地主等小作農の関係は確かに、戦前の日本の経済を歪めてしまっていた部分があったのも事実です。何しろ農家の人口が圧倒的に多かったわけですから。GHQが迅速な農地改革ができた理由は、日本の官僚もこの問題点には気づいており、農地解放の腹案が、すでにあったからなんですね。柳田国男も官僚時代に指摘しています。
■自給率100%は危険?■
そうやって生まれた小規模農家は、戦後になって子供たちを高校や大学に進学させ、農家であることを辞めていった部分もあります。ところが逆に、土地に異常に執着する日本人の気質もあって。土地を手放さずに第2種兼業農家となり、いわゆる三ちゃん農業で細々と農家を続ける人も多かったということです。自分自身はこの姿勢自体は、あまり批判はありません。自分が食べるぶんだけ作るというのは、別に悪いことではありませんから。
ただ、単に生産するというだけならば、うちの実家の田んぼなどは従兄弟の専業農家に任せて、という形で行っています。佐々木俊尚さんの集約化ということに対して、感情的に反発している人の多くが 集約化=土地を手放す という形で理解している感じで、とんちんかんだなと。所有する人は何百人いてもいいですが、それを耕して収穫する人間はもっと少なくても、十分やっていける体制に持っていくことが、大事なのですよね。
個人的には、食の安全保障を考えるならば、米なども100%の自給率は決して自慢できることではないのです。自給率100%でも輸入を日頃からしておいて、予想外の不作に備えてある程度の余裕を作っておく・外国との輸入ルートを作っていく必要があるわけです。これは同時に、日本のお米を高級米として外国に輸出するぐらいの、戦略を持つ必要があるということでもあります。
■攻めの姿勢と職人気質■
日本のシャインマスカットを、不正に入手した韓国の農家が、適当に生産してしまったため現在では、すっかりブランド力が落ちてしまったとか。日本の農産物の種や苗を盗むことはできても、日本の農家の勤勉さとか誠実さは盗むことはできない、ということです。であるならば、夕張メロンがそうであったように、米だって最初から外国に輸出することを目的とした品種改良と丁寧な生産を、やるぐらいの、攻めの姿勢は必要でしょう。
日本の高級フルーツなど、外国人は値段だけを見ると最初は馬鹿馬鹿しいと笑うのですが。実際に食べると目を丸くする。京都で外国人留学生を多数教えていた時、中国人留学生に岡山の桃は本場中国人からしてみるとどんな評価かと、毎年聞いていました。桃が大好きな国民だけあって、絶賛していましたね。もちろん留学生たちにはそうそう食えるものではないですが。この値段なら中国の富裕層なら喜んで買いますよと、口を揃えていました。
日本の農業に関して言えば、アメリカやフランスなどの輸出大国との有効な外交上の関係を結び、不足に備えて世界各国からのルートを増やし、でも日本が得意な丁寧な生産によって、高級品種を諸外国のセレブに売りつける。まだまだ強いバイオテクノロジーの技術を活かして新規商品を開発する。そういう部分が大事なんですよね。食の安全保障ということを考えれば、専業農家の集約農業によって、もっと生産自体を増やすことも可能でしょうから。
■集約化で準公務員化?■
日本はそもそも、国土面積はそこそこありますが山がちで、平地が少ないですからね。農業にそもそも向いていない。もう一点、実は日本は日照量が世界的な平均より低いんですよね。国名から、太陽の国というイメージがありますが。周囲を海に囲まれているので多湿。八雲立つ天叢雲の国なんですね。四方を海に囲まれているのに、世界でも第6位の排他的経済水域を持っているのに、水産行政はデタラメですし。
アメリカもフランスも、農業に関しては安全保障の面もあって、補助金をかなりつけているとか。日本は国家公務員が約58.5万人、地方公務員が約274万人もいて、合計332.5万人の大所帯。でも、農家が100万人ぐらいを割る数字になれば、 準公務員的な形で補助金付けるのもありでしょうね。ただし、うちの実家のような自給的農家は除外して、基幹的農業従事者のみ。で、国が定めた目標数値をクリアしたら、それ以上の収入は農家のものにすれば。
農業というのは、春と秋の繁忙期に多くの人員が必要ですから。北朝鮮ではないですが、自衛隊の中にそういう繁忙期のみ活動する農業部隊を置いて、余剰人員を確保してもいいのかもしれませんけれどね。田植え部隊に稲刈り部隊。基幹的農業従事者で、希望する人間は日頃は自衛官で繁忙期のみ農家になるとか。もうここら辺の制度設計はなかなか難しいし、一歩間違うと利権化してしまうので難しいのですが。自分のような素人ではなく、大学の農学部には、そのような未来設計も含めての研究を期待したいです。
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