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宝島社身売り説・新潮社危機説・小学館不安説

◉出版業界、どうもきな臭い話がイロイロと出ているようで。ちょっと前に見かけた記事で、そのまま放置していたのですが。せっかくなので、雑文を。なお、会員限定記事なので、詳しい内容はわかりません。なので、個人的に出版業界について思ったことを、書きます。羊頭狗肉商売( ´ ▽ ` )ノ

【宝島社「身売り説」新潮社「危機説」迎える正念場 附録ブームが一服も、大量配本止められず】東洋経済オンライン

 バッグなどの雑貨に薄い冊子のついた「付録付きムック本」でヒットを飛ばし、出版不況の中でも勝ち組だった宝島社。

 だが近年は減収が続き、2023年8月期の売上高は約221億円と、前期比で3割近く落ち込んだ。営業損益も、2022年度に21億円、2023年度は19億円と2期連続での赤字に沈む。

 会社としての正念場を迎える中、昨年12月には創業者の蓮見清一氏が急逝した(享年80歳)。地方自治体のコンサルティング会社から出版事業に参入し、一代で今の宝島社を築き上げたカリスマ社長だ。その死去により、「身売り説」も浮上している。

https://toyokeizai.net/articles/-/771004

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。

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■斜陽産業と漫画■

詳しくは、上記リンク先の全文を、自己責任でお読みいただくとして(有料ですし)。出版業界自体は、自分がまだ新人編集者だった1995年をピークに、ズーッと右肩下がりでした。それでも、不況に強い業界と言われるだけはあって、バブル崩壊から数年後に業績のピークが来ているわけですから。これは新聞業界も同じで、発行部数のピークは2001年 ですから、平成不況や就職氷河期世代に対して冷淡だったのは、マスコミ業界自体があまり実感がなかった面もあるでしょう。

しかし、コロナ禍からの巣ごもり景気で、電子書籍の需要が爆発的に増え、右肩下がりの斜陽産業だったはずの 出版業界は、ここ数年好景気に。ただこれは主に、漫画の電子書籍の売上増によるものですから。でも、漫画というキラーコンテンツを持っている出版社は、意外と限られていて。講談社・小学館・集英社・KADOKAWAなどの大手とその子会社、双葉社・少年画報社・秋田書店などの中堅どころの出版社。新潮社や宝島社、文藝春秋社などは、漫画部門に進出しようとして、失敗した部分があります。

宝島社も、週刊少年宝島で、少年漫画部門に進出しようとしましたが、失敗。徳間書店も、キャプテンで一時的には漫画部門に進出成功しかけたのですが。会社の上層部の無理解で迷走。文藝春秋もサブカル系で何度か進出を目論見ますが、ほぼ失敗。単発的な漫画作品は発売できても、雑誌としての成功は難しいですね。そもそも、集英社の子会社で、少女漫画ではトップクラスの売上を誇っていた白泉社でさえ、少年誌部門の進出には、ジェットやコミコミ、アニマルハウスなど、何度も失敗していますから。そんなに簡単なものではないのです。

■漫画を馬鹿にする小説畑■

新潮社は、週刊少年ジャンプの編集長でもあった堀江信彦氏が、ジャンプの作家を引き連れて株式会社コアミックスを設立、2000年に『週刊コミックバンチ』を創刊されたのですが。販売の面では新潮社と提携して、新潮社は漫画部門進出への足がかりを得たのですが……。どうも会社の経営陣と、現場の編集者との間に意識のズレがあったようで。某直木賞作家が漫画をバカにした発言をしたように、小説畑の編集者というのは基本的に、漫画をバカにしてるんですよね。

会社の上層部は、儲かる漫画をコンテンツとして手に入れたい。でも、小説家の担当になるのが夢だった編集者からしてみれば、馬鹿にしていた漫画の編集者なんて、屈辱以外の何者でもありませんからね。けっきょく、コアミックスは徳間書店との提携にシフトしていきます。実際には、原稿取りマシンに徹する小説の編集者に対して、漫画の編集は創作部分にかなり踏み込んで、作家と一緒に物語を紡ぐ役割がありますので。人気作家を引き抜いて、並べていれば売れるようなものではありません。

自分は、日本文学科で近代文学を専攻し、小説の持つ凄みや面白さは、多少なりとも理解していますが。小説畑の人には、漫画は簡単に読めるから簡単に創れる、と思い込んでいる節がありますね。実際はそんなことはなく。准総合芸術として、かなり後半な知識と見識がないと、難しいです。MANZEMI講座では、エドガー・アラン・ポーからボードレールを経て、中原中也に至る視覚的文章表現を教えていますが。うちの講座から、小説家デビューする人間が出たり、小説も手掛けてみようかという漫画家が出るのは、それなりに理由があります。

■迷走する業界と電子書籍■

結果的に、漫画部門を持たない出版社は、実は相変わらず斜陽産業のまま、という側面があります。宝島社や新潮社に、不穏な噂が出るのは、そのためです。今から慌てて漫画部門進出を目論んでも、難しいでしょうね。そのためにはまず、編集者を育てないといけませんが。実は漫画編集者を育てるノウハウ自体は、大手出版社でも大して持っていません。ただ、漫画作りの現場で作業を繰り返すうちに、適性がある人間が自然に身につけるような面がありますから。

だいたい、漫画部門に進出しようとする出版社は、利益の大きな少年漫画部門に進出しようとしますが。残念ながらそこは、保守的な読者の巣窟で、レッドオーシャンです。むしろ、市場は小さくても進取の気風がある少女漫画部門で、ニッチな本 作りをして。利益はそれほど大きくなくても、堅実に黒字を出しながら編集者を育てていくのが、吉です。まぁ、ソニー・マガジンズは、それをやろうとして、ある程度成功したのですが、結局は撤退。上層部に漫画のことが分かっている役員がいないと、そうなってしまいますね。

劣勢の小学館 41歳・4代目当主を待ち受ける難路

世界的ブームが続く日本のアニメ・エンタメ。3兆円経済圏の頂点に君臨するのが、漫画原作を供給し、IP(知的財産)の創出源となる大手総合出版社だ。
集英社、講談社、小学館は何を考えているのか。本特集では、非上場会社ゆえに謎の多いそのビジネスの奥の院を解剖する。

https://toyokeizai.net/articles/-/771612

小学館に関しては、新社長の評判がいまいちですね。これは、講談社の若社長との対比で、評判が厳しい面もあります。講談社の若社長は、紙の本にこだわる役員をねじ伏せ、これからは電子書籍の時代だという部分を的確に読み、実際に成功させましたからね。こういう強引なリーダーシップは、危うい面もあります。失敗することが多いのですが、成功するとカリスマ性を一気に獲得できます。若き日の角川春樹氏がそうであったように。それに対して小学館は、電子書籍に対しては後手後手に回って、各部門の動きもバラバラでした。

少女誌部門では、あだち充先生の漫画がどんどん電子書籍化されているのに、少年誌部門では遅れに遅れ。でもコレって、小説が好きすぎて漫画をバカにする編集者と同じで。紙の本が好きすぎて、電子書籍に対して一方的に敵視する編集者は、多いです。小学館に関して言えば、どんどん分社化することによって、ニッチなジャンルを開拓してきたのに。先代社長から、グループをまとめようとする方向に動いてるように見えます。それでは、大企業病に罹患するだけかと思うのですが。どうなんですかね。


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喜多野土竜
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