『セクシー田中さん』問題の闇
◉『セクシー田中さん』問題、デイリー新潮が元テレビ朝日の法務部長でもあった、西脇亨輔弁護士の指摘を掲載しています。さすがに、テレビ局内部の構造を熟知している弁護士ですから、自分のような素人にはとてもわかり易く、問題点が整理されています。新潮の見出しは過激ですが、どうも問題の本質は日本テレビと小学館の組織的な問題や業界の悪しき慣例に加え、双方の意見を調整すべきプロデューサーが、その役割を果たせていなかった可能性が……。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、日テレタワーです。
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■日本テレビの問題■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。日テレが身内や仕事相手の芸能事務所などを庇おうとして、巧妙に逃げた問題点を、バッサリです。的確で解りやすく、この問題の本質を突いているように思います。日テレやプロデューサーから、抗議がくるかも知れませんが。この件では西脇亨輔弁護士、動画もアップされています。コチラのほうが、取材した記者の意見も入って、ワンクッション置いているデイリー新潮の記事よりも、解りやすいですね。オススメです。
いちおう、出版業界に30年以上いる人間としては、日本テレビが当事者たちを匿名で押し通そうとする以上、プロデューサーに瑕疵があったことがわかった上で、庇おうとしているのを感じます。問題なければ・自信があれば、実名で証言を出しますから。まぁ、個人の感想に過ぎませんが。でもこれは、小学館側も同じで、芦原妃名子先生の窓口であったはずの担当編集者が、名前が出てこないし経緯を説明もしない点で、似たような状況なのかな、と。そのくせ、社員が声明出したり。社内で、組合と経営陣の綱引きがあるように感じます。繰り返しますが、個人の感想に過ぎません。
■小学館側の報告書■
小学館の方からも、特別調査委員会から膨大な量の報告書が出ています。日テレの報告書があくまでも社員と、ドラマの制作現場(=大手事務所のタレントと実際に仕事をする部署の人間)を守ろうという姿勢に終止し、巧妙に謝罪や哀悼の意を誤魔化しているのに対して、まだしも最初に表明しているだけマシなのですが……これ、校閲部のチェックや顧問弁護士のチェックを、経ているのかと、ちょっと疑うレベルの雑な用字用語が見えますね。神は細部に宿る、そういうところから実際は文章を執筆した人間が、芦原妃名子先生への敬意に欠ける底意が在ったのではと、疑問の声もSNS上では出ています。
膨大な報告書のため、読むのも大変なんですが、そこはネットの集合知の強さ。既に読み込んだ方々が多数おり、日テレとの比較で問題点を洗い、続々とアップされています。大貫剛氏の、コチラのツッコミが正鵠かと。
双方に非があるのは前提としても。別所引き抜き事件や空白の一日事件の昔から、自社の利益と体面しか考えない読売グループの中核企業ですからね、日テレは。どんなに低く見積もっても6対4か7対3で、日テレ側に非がある気がします。繰り返しますが、個人の感想に過ぎませんけれども。そして、ベテラン漫画家の弓月光先生の感想は、こんな感じでした。
■毎日新聞も参戦?■
もちろん日本テレビ側にも、小学館側の言い分に、反論があるでしょうから、そこは待ちたいですが。このままウヤムヤにするのか、「プロデューサーは若い女性で、今回の件で精神的にも参っているので、コメントは差し控えたい」みたいな形で、誤魔化すのかもしれませんが。でも、それやったら答え合わせですよ、日テレさん? 先走って、制作現場を守る云々の言葉があったのも、逆に制作現場が解体されかねない瑕疵があったと、自白してるようにも思います。
この問題、毎日新聞も言及しています。前々から言及している産経新聞系メディアも含め、読売・朝日・毎日と、主要メディアが乗り入れてきましたが。毎日新聞は見出しで「小学館の責任」と、お仲間を庇おうとしている気配が感じられます。内容は大したことはないと言うか、「話し合い大事」と言ってるに過ぎない、薄い薄い薄ぅ〜い内容ですが。まるで荻上チキ氏のコメントのようです。
ただ、双方に非があるのは前提としても。小学館側に瑕疵がないとは、とても言えないでしょう。ドラマ化やアニメ化は、出資するわけでないなら、出版社には美味しい事案。どんな駄作でも、原作本が売れてメリットありますから。そこに、忖度がなかったとは言えませんね。なお小学館の、報告書の文言についての疑義は、こちらのアカウントの指摘が丁寧ですね。やや主観的な意見もありますが、同意できる指摘が多かったです。
かなり詳細な検証と、連投ですので。興味がある方は、上記リンクから読んでみてください。また片山先生のこの言葉も、小学館側の態度について的確ですね。作家側なら、当然持つ違和感です。
芦原先生は、むしろ作家としてはとても常識人で、常識的な対応だったと思いますよ。常識人であったが故、非常識な対応に傷つけられ、作品も納得いかない内容になり、絶望された結果かと。
■脚本家側の問題も■
そして、今回の件の脚本家。彼女も、プロデューサーから正確な情報が伝わっていなかった面もあり、そこは同情はできるのですが……。犬笛を吹くような行為をしたことは、ネットでは厳しく批判されていますし。もし、噂されているように、プロデューサーが芦原先生を悪者に仕立て上げて脚本家の〝尻をかく〟行為をしたのなら、立派な共犯です。そして、脚本家のあの言葉が生まれた背景には、漫画屋に目をバカにする、脚本家界隈の歪んだ認識があるのではないか? 黒澤久子会長の削除された動画の発言が、雄弁に物語っています。その脚本家当人がInstagramを、削除したとのこと。
コチラの、荒井禎雄氏のツッコミが、多くの人が感じたことを、代弁しているのではないでしょうか?
脚本家なんて、自分らと同じフリーランスで、いつ切られるかもわからない浮き草稼業なのに、なぜこんなに自信満々なのか、当初から不思議でしたが。よほどテレビ局に太いパイプがあり、安心しきっていたのか? そのうち、イロイロと情報が出てきそうですね。いずれにしろ、日テレ側の報告書も、小学館側の報告書も、自社の都合優先の態度が見え隠れし、とても客観的なモノとは言えません。第三者機関を設けて、中立的な調査と、いろんな部分での疑義を、きちんと答えないと駄目でしょうね。やらない可能性が高いですが。
■識者のつびやき群■
さて、X(旧Twitter)で見かけた、ベテランのクリエイターのポストも、いくつか転載しておきますね。まずは、『クラッシャージョウ』や『ダーティペア』などの人気小説の作者である、高千穂遙先生。アニメ化された作品も多く、学生時代にスタジオぬえを立ち上げ、テレビ局やアニメ制作会社との付き合いも多いので、この業界の裏も表も、自分よりはるかに知っておられるでしょうし。テレビ業界の、ヒット作のアイデアの流用(アイデア自体は著作権で保護されない)についても、思うところがあるようで。
う、あの作品ですか? ダーティとプ●ティ、ううむ言われてみれば。まぁ、黒髪ロングヘアー美女と赤毛短髪ボーイッシュの、ペアの話はもうパクられすぎるぐらいパクられて、ひとつのバディ物の典型例になっています。若いなろう小説家とか、生まれる前の作品で、それがルーツと思わず、良くある作品のひとつと思っていそう。
まぁ、そういう感じなんでしょうね。作品を見ていても、ああコレはあの作品を企画化したけど、断られて。でもタレントはもう抑えたから、じゃあ要素だけ部分的にパクったなという作品が、ありますが。そういえば、美内すずえ先生も、脚本とキャストまで付いた企画書を見せられ、もうコレで進んでるのでと、『ガラスの仮面』のドラマ化の契約を迫られたとか。『のだめカンタービレ』も、制作発表までしたのに、ジャニーズ事務所のゴリ押しでキャストとテレビ局を代えてのドラマ化でしたし。あきまん先生のツッコミ。
寸鉄殺人のあきまん先生、さすがです。逆に、『映像研には手を出すな!』で、ある意味で原作以上にアニメの描写で、表現の強みを見せつけて、傑作の誉れも高い(自分もAmazon Prime VideoでDLデータを全話購入しました)作品の、作者である大童澄瞳先生の、コチラのポスト。
『映像研には手を出すな!』は、小学館の月刊スピリッツの連載ですしね。担当によって、作家との相性や作品への思い入れは、温度差がありますからね。
■建設的な提案を…■
いずれにしろ、放送界と出版界の悪い部分が出た、今回の事件。板挟みに遭い、その才能を散らした芦原先生が、不憫です。自分も出版社に勤務した編集者であり、同時に原稿料を踏み倒そうとした某出版社と高裁まで争った作家の立場でもあるので、身につまされます。映像表現は漫画とは異なるので、ある程度の表現や演出の改変は、仕方が無いという立場ですし、自分の漫画原作の改編も、かなり認めている立場なんですが。頭髪差別者であるもへもへ氏(たぶん本人はハゲてる)の、このツッコミがすべてかと。
こうなると、優越的な地位の濫用にならないよう、個人事業主が不利な立場であることを前提とした法改正、並びに契約書のテンプレート的なものを国が作り、契約書はそのテンプレートから何を加え、何を削除したかが解るようにして、企業側が提示する形にしないと。コンテンツ産業の根本である、クリエイターを潰すだけです。弁護士の10倍ほど、医者の50〜100倍は稀少な存在なんですから。スポーツ選手の才能と同じです。
それで制作現場の、自由闊達な作品作りが阻害されるにしても。問題の方が多い以上、自浄努力を発揮できない以上、出版社もテレビ局も、法による制限を受けざるを得ないでしょう。ガチガチの契約社会で、分厚い契約書を結ぶアメリカの方が、よほど原作者が満足する映像化作品を創っている以上、自由闊達な作品作り自体も、嘘くさいと思われていますしね。昭和の手法を精算される、令和の世です。
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