素材の話題:海水で溶けるプラスティック・培養フォアグラ・ゴボウでカカオ代用
◉あまり需要はないですが、個人的に素材開発などの話題は興味があるので、まとめてご紹介を。理研が開発した、海水で溶けるプラスチック(関西風に発音するとプラッチック)に、オーストラリアの食品会社Vowが、日本産ウズラの細胞でフォアグラを再現した培養フォアグラを開発、高騰するカカオ豆の代わりにゴボウを用いる技術の3本です。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。
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■海水で溶けるプラスティック■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。理研の海水で溶けるプラスチック、レジ袋やプラスティックの袋をクラゲなどと誤認して食べる海洋生物が多いですから、環境保護にも役立つ研究。理研こと理化学研究所は、STAP細胞問題でイロイロありましたが、元はアジア最初の基礎科学総合研究所として、1917年(大正6年)に創立され、物理学・化学・工学・生物学・医科学など基礎研究から応用研究まで行う、歴史と伝統と実績のある国内唯一の自然科学系総合研究所。
ワカメスープなどのイメージが強いですが、あれは理研を母体として生まれた、理研ビタミンの商品。お硬い研究が、産学の理想的な形で結実したのが、ワカメスープという面も。生物学も化学も研究する機関なので、それが海水で溶けるプラスチックの研究にもつながっているのだろうなと。まぁ、海水で溶けるからと、安心して不法投棄されては困るのですが。どんなに禁止しても、法律を遵守しない心得者は、存在するのですから。こういう研究が、世界の役に立つことが重要かと。
■ウズラから培養フォアグラ■
次は、日本のウズラの細胞を使って培養し、フォアグラを作ったという話題。フォアグラは、ガチョウやアヒルなどの家禽に、無理やり大量の餌を食べさせて、肝臓を脂肪肝として肥大化させたものを食材として、各種の料理に用いられます。子供の頃テレビで見ましたが、小型の手押しポンプのような機械で、家禽の喉の奥深くに金属パイプを突っ込んで、ペースト状にした餌を強制的に胃袋に送り込み。暗所に閉じ込めて動けないようにして作る感じでした。このため、動物虐待という批判があるのですが……。
「ゴキブリホイホイは、身動きできなくして餓死させるので残酷だ」という批判と一緒で、どうにもフォアグラへの批判は、文化の違いを感じます。だって、最後は殺して食べるのですから、その過程を云々するのは、本質的な議論なのかなぁ…と。自分が、苦しい思いをさせられた上に殺されるのは嫌だから、動物も安楽に殺そうというのは、共感性の拡大ですね。でも、それって動物の擬人化では? 最終的には肉食自体を禁止するための、二段階革命論に見えちゃいます(個人の感想です)。
さてウズラは、西日本ではかなり珍重される食材で、関西では水煮や関東炊きから、カレーへ載っけたり、いろんな使われ方をされています。もっとも、ウズラは寒冷な気候を好み、日本では中部地方あたりが野生での生息の南限のようで。なのに、西日本で珍重されるのも、不思議ですね。ただ、ウズラの生産農家の数はかなり減っていて、後継者不足状態。こういう形で、ウズラの需要が高まると、利益拡大の一助になりそうな気はしますが、どうなんでしょうね。代用品というよりも、新たな食材として普及すると面白そうです。
■カカオ豆の代替にゴボウ■
ラジオなどのニュースで、取り上げられていましたが。世界的にカカオ豆が高騰しているようで。
中米から南米原産のカカオの木は、アオイの仲間。京都植物園の温室で実物を見たことがありますが、幹からラグビーボール状の薄緑の実が直接、ぶら下がる形で結実していました。中米原産のパパイヤも、幹から直接結実するタイプで、ちょっと似てるなと思いました。自分が見たのは、大きめの手榴弾ぐらいでしたが、大きなものは30センチぐらいにもなるようで。中に、カカオ豆と呼ばれる種子があり、これがチョコレートなどの原料になります。
カカオ豆の脂肪分はココアバターと呼ばれ、カカオ豆を焙煎してすり潰したカカオマスに、ココアバターや砂糖などを加えて、チョコレートにするのですが。なぜここはもっと後が含まれるカカオマスに、さらにココアバターを加えるのか、謎ですが。脂肪分は脂肪分として別途分離して、混ぜ合わせる必要があるようで。このココアバターの代わりに、椰子油などを代用するのですが。ゴボウなどの代用品で、カカオマスも使用量を減らすようで。チョコレートの美味しさは、食感や脂肪分、糖分のアンサンブルですから、準チョコレートもバランス次第で、かなりのレベルになるのでしょう。
■化学の研究発展に期待■
このnoteやペケッターでも繰り返し書いていますが。日本の科学技術は化学、素材の研究開発ではまだまだ世界でトップクラス。これは、世界最高の縄文式土器や漆器の伝統、釉薬の調合や漢方薬の調合など、日本人がもともとそういう化学的な素材の調合や、開発に親しんで来たからという面はあります。ゼロの概念を生み出し、二桁の九九があり、瞑想の文化を持つインドが、ラマヌジャンのような天才数学者を輩出し、IT関係の人材を生み出しているように。
日本は将来的には、ノーベル化学賞のほうが、受賞者数が増えると予想されています。抽象的な思考が苦手な日本人にとって、理論物理学とか湯川秀樹博士のお陰で研究者が増えましたが。本来は、農学や本草学や化学や医学に人生を捧げてきた人材が、昔からたくさんいますからね。カーボンナノチューブや光触媒、免疫学などでノーベル賞候補に名前が挙がるのも、理由があります。稲作が伝来して以降は、一所懸命で田んぼの草むしりを地味に続ける文化が生まれ、いろんな化合物を膨大な比率で検証するのを厭わない文化も生まれ。
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