スリランカの脱中国依存と日本の役割
◉スリランカ──正式な国名はスリランカ民主社会主義共和国。旧国名はセイロンで、紅茶のセイロンティーで有名な、インド半島の東側にある島国です。アフリカ大陸におけるマダガスカル島と、相似形になっていますね。スリランカは、多数派のシンハラ人(74.9%)とタミル人(15.4%)との大規模な民族対立による内戦が26年も続き。その後はラージャパクサ兄弟による放漫財政と支離滅裂な農業政策などで経済と国民生活は破綻、債務は2017年現在で6兆4000億円にものぼっています。そこで、スリランカ救済に日本が動いた訳で。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、マウントラビニアにある日本人専用の施設シャンティランカの写真だそうです。
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■対中・対露包囲網■
岸田文雄総理大臣をはじめ、主要閣僚がゴールデンウィーク返上で各国に外遊に出ているのですが、これを観光旅行にでも行ってるように解釈し、頭に血を上らせている左派がいますが。この人達、遊学も遊撃手も遊資も遊説も、遊んでると思うんですかね? 訪問先を見れば、対中国封じ込めと対ロシア封じ込めに関係する、主要国なんですが。アメリカ下院がウクライナ支援の予算を通し、最悪ロシア崩壊後のシナリオも踏まえての動きで、飛び火して台湾有事に際し、周辺国や地域へのアプローチに見えます。
今夏に予定されるのF-16戦闘機の投入で、一気にウクライナの状況が変わることに、日本は備えてるのでは? そしておそらくは、次期総理大臣候補筆頭である上川陽子外務大臣は、スリランカを訪問し、脱中国依存に動いています。日米豪印戦略対話の面からも、アメリカにおけるキューバのように、スリランカはインドにとって喉に刺さった小骨のような存在です。遠交近攻の兵法からも、インドの背後を突ける存在ですから。また、自由で開かれたインド太平洋戦略からも、スエズ運河から日本までのシーレーンにおいて、要衝です。上川外相が動くのは、必然です。
■反中拗らせ保守?■
このアプローチに対してなぜか、反中派が反発しています。どうやら、日本がスリランカの莫大な債務を、肩代わりする=債務を日本が払うと思っているようです。どうにも、反中派には拗らせた人が多く、感情的に反発する傾向があります。嫌韓派も似ているのですが、もうちょっと余裕があるというか、多様性があるんですよね。みずきの女子知韓宣言や楽韓Webやカイカイ反応通信のように、韓国を知ろうとしたり、楽しむ姿勢とか。でも、反中派にはそういう余裕があまりなく、反ワクチン陰謀論者に近い印象です。
中国にカネをむしられるのが、気に食わないってところでしょうかと。いや…あのぉ、そもそも日本もスリランカに対して、債務者ですし。この件は要するに、中国が主張するスリランカへの債務に対して日本が査定し、あなたが主張するような価値はないと、査定するということ。これ自体は他人の借金の査定ですから、本来はアウト。でも日本は、中国への債務放棄を、世界の総意として求める方向に、持っていくでしょう。次期総理大臣候補を派遣したのは、岸田文雄総理大臣退陣後も、政策の継続性を担保する意味がありそうです。
そもそも中国には、自己破産制度や債務免責許可の制度がないようで。借金まみれになり、債務の返済ができなくなった個人は、もうそこでいったんリセットして、もう一度チャンスを与えるのが、自己破産制度です。でも中国の感覚だと、借りたカネが返せないならと、スリランカのハンバントタ港を2017年7月から99年間に渡って、中国の国有企業・招商局港口にリースという名目で、差し押さえるわけで。昔の遊女の前借金と同じで、合法的に奴隷同然のポジションに押し込んできますから。それでが、スリランカは事実上の属国に転落するしかないわけで。
■一帯一路潰し政策■
この件に関しては、simesaba014/MJ号アカウントさんの解説が、的確でした。まぁ、国際政治を理解できていない人も、多いようですが……。上手くコレでスリランカの負債額を圧縮し、場合によっては放棄させる。そのために、安倍晋三政権では長らく法務大臣を務めた上川外相を派遣し、法的な面も含めてスリランカと意見を擦り合わせる。考えようによって、こもゴールデンウィーク返上での外交攻勢は、そうなったときのための合意取り付けではないかと、疑うレベルです。コレが上手くいけば、他の中国に経済的に侵略されてる国へ、福音となるでしょう。
スリランカは共産主義の勢力も強く。繰り返しますが、インドにとっては、アメリカにとってのキューバ的な存在です。ここを中国から切り離すことには、クワッドの観点からも、意味があるのです。あと、日本は戦後の国際社会復帰に当たって、スリランカには恩義もあるんですよね。国民の7割が仏教徒で、対日感情も比較的良い国のひとつで、インド洋の海上交通の要衝、助けない理由がないのです。スリランカ救済をモデルケースに、中国の経済侵略に悩む国を、切り崩す契機にもなるはずで、目先の利益でどうこう言うのは違います。
岸田文雄総理大臣が目論むのは、一帯一路潰しの可能性。本来は、環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific Partnership Agreement 略称TPP)が、対中国経済包囲網、21世紀のブロック経済圏になったのですが。中露朝の、権威主義国家という爆弾を包囲し、地雷のイランとパキスタンを分断しつつ取り込む、難しいオペレーションですが。ある意味で、安倍晋三元総理の構想を、実現するための詰め将棋。打ち手の岸田文雄総理が有能すぎて、日本国内ではその凄みが理解されず、不人気ですが。岸信介政権のように、三年で退陣しても未来に成果を残す政権として、頑張って欲しいです。
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