インボイス制度と声優業界の問題
◉有名声優がインボイス制度の問題点を涙の訴え……なんですが、自分のTwitterのタイムラインでは、批判的な意見や冷静なツッコミが多々流れてきました。今まで見逃されていた納税の義務が、課せられるようになっただけですから、当然といえば当然です。また、その訴える内容が、普通の個人事業主などから見たら、首を傾げる内容でしたから。何よりも、戦うべき相手は本当に政府なのか? もっと別の、根源的な問題に映画・ドラマ・アニメ・声優業界が、向き合っていないのではないか? そんな疑義が投げかけられました。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。
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■真の問題は日俳連?■
この件に関しては、元通産省官僚の宇佐美氏が、協同組合日本俳優連合(日俳連)の問題だと、指摘していますね。そう、インボイス制度で10%上がって困るなら、組合作ってギャランティの10%アップを訴える or 制作会社側に負担を求めるのが本筋かと。インボイス制度廃止を政府に訴えるのはもちろん構いませんが、少なくとも両方やるべきですよね。そもそも声優のギャラはランク制といって、一律に定められています。 最初の3年間はジュニアランクで、ギャラは1本につき1万5000円とのこと。主役でもほとんどセリフがないチョイ役でも、一律とのこと。ある種の共産趣味(主義ではない)が、業界にはびこっているわけです。
ランク制は元々は、声優のギャラを保証するための制度だったのが、ベテランは干され、若い人気声優は安いギャラで使い回す制度になっているわけです。本末転倒も甚だしいんですが、声優業界内部からの自浄努力は、見られませんね。こちらの指摘も、重要です。
神谷明さんが、『名探偵コナン』の毛利小五郎役から降板させられたのが、2009年。それ以降、テレビ・映画・OVAの仕事があからさまに減ったのは、Wikipediaの年譜を見ても明らかです。ベテランが声を上げ、干され、少しだけ状況が改善され、の繰り返し。政府とか自民党には声を上げても、自分たちの業界の構造改革には及び腰。なんでしょうかね、自分たちのことは棚に上げて、手塚治虫先生と虫プロに責任転嫁した、旧東映動画労組系アニメ業界人の悪しき体質を、間接的に引き継いでいませんか?
■真の問題は声優業界■
こちらの意見も、的確ですね。「仮にインボイス制度導入がなくなったとしても、低収入の構造自体が変わるわけじゃありません。声を上げる相手は政府ではなく、長きにわたって彼らを安く使い続け、発注金額も上げようとしない「お客さん」のほうじゃないですか。(もちろん、お客さんから指名され、高報酬を提示されるだけの力量を磨き続けることは大前提です)」という指摘は重いです。雨漏りを修繕せずに、バケツの量だけを増やしても、根本的な解決にはならないんですが。どうにも本末転倒な声ばかりを、マスコミは拾い上げます。
インボイス制度を仮になくしても、根本が変わらねばけっきょくは、次の問題が起きても反対反対とにかく反対で、社民党や共産党のようなことを言い続けるんですかね? それって、王安石の新法に反対だけして、廃止するだけで対案がなかった大学者の司馬光と、同じ穴の狢です。しかも司馬光、すでに成果が出始めていた新法の一部も、廃止してしまいました。北宋王朝はこれが遠因となって、滅亡します。反対しかできない荻上チキ氏と違って、宇佐美氏はきちんと対案も出しています。政治家が働き方改革として取り組み、金が余っているNHKが率先してギャラアップすると。
山田太郎議員や赤松健議員に期待するのは、単なる反対のサヨク仕草を真似るのではなく。こういう問題を国会で取り上げ、ある種の共産趣味がまかり通ってる部分を、糺していく役目。声優は声優で、日俳連とは別の声優の組合を作るなどして、ちゃんと与野党の国会議員に働きかけ、団体としての集票能力や影響力を見せることでしょうね。昔ながらの共産趣味で、政府や自民党を批判していたらいい、なんてのは令和の世には無意味です。社会や制度は常に変化していて、その変化に対応した変化を模索しないと。それは、新美南吉の名作『おぢいさんのランプ』でも問われていることです。
■真の問題は共産趣味■
インボイス制度反対の動きって、消費税反対の動きと似てるんですよね。日本以外のOECD諸国ではインボイス制度って、事業者負担軽減のためにデジタル化と義務化範囲の拡大を行っているんですが。消費税も、出羽守が大好きな北欧の高福祉国家では軒並み25%前後ですし、先進国では当たり前に導入されてるのに、日本ではマスコミを中心に悪者化され、廃止論を言い募る人が福島瑞穂社民党党首をはじめやたら多いですが。これまた対案がなく、昔のように直接税を増やせと言う。ところが、実は日本の富裕層ってそんなに多くないんですよね。
全体のわずか上位1.3%といえば何億円、いや何十億円も稼いでるようなイメージがありますが、実際は1500万円以上の年収に分類されます。野村総合研究所の富裕層の定義
・富裕層:純金融資産保有額が1億円以上・5億円未満
・超富裕層:純金融資産保有額が5億円以上
・準富裕層:純金融保有資産額が5000万円以上・1億円未満
の定義に従っても、富裕層と超富裕層の合算は132万7000世帯です。日本の全世帯数は5402万3000世帯ですから、富裕層以上の割合はわずか2.4%にすぎません。何億も稼いでるような富裕層は少なく、そこからガッポリ取るなんて幻想です。
こちらの意見が、正鵠に思えますね。
■税理士の相場とは?■
ちなみに、税理士ドットコムによれば、『顧問契約したときに税理士に支払う報酬費用は、売上高1,000万円以下の法人であれば「月額2万5000円程度」が相場です(毎月訪問の場合)。』とのこと。年間年間30万円ですか。毎月訪問の必要がない、零細なところだともっと安くやれるでしょうし、年収300万円以下の個人事業主とか、内容も複雑ではないでしょうから。『記帳代行は依頼せず「自計化」することで料金をおさえることができます。』ともありますから。税理士のこういう指摘もありますしね。
けっきょく、本当の敵は日本版CNCとか導入したがるくせに、根本解決を避ける映画・テレビ業界の共産趣味でしょうに。これって、入館法改正に反対してる人たちとも、似ています。約300万の在留外国人の内、不法滞在は約6万ほどです。つまり、98%の在留外国人は普通に暮らしているわけです。その6万人にしても、年間1万人ほどは送還しています。しかも、自費が原則です。ウィシュマさんが~とか、在留証明書を偽造するような犯罪者の特殊例を持ち出して、全体を歪めるのは良くないですね。
■日本版CNCの前に■
そもそも日本版CNC設立とかいう前に、6.6%のヒット作で全興収の約70%を占めるという、邦画の歪な構造をナントカするほうが先でしょうに。ほとんどが、アニメ化漫画原作作品に頼っているくせに、そこを改善せずに、馬鹿にしているアニメや漫画原作作品の上前をはねようとする、乞食体質がありませんか? アニメを年間ランキングから外す映画芸術にさえ、表立って文句を言わないような業界が、そもそもおかしいんですよね。脚本家の中園ミホ女史も、漫画原作をバカにする発言を、公言していますし。しつこく、邦画の内情を以下に示しておきます。
だいたい、こういう問題を放置して、責任転嫁し過ぎなんですよ。高橋雄一郎弁護士は、今まで免除されていた特権がなくなるだけ、と喝破しています。でも、これに反論できているアカウントは、アニメ業界にはないようです。
ネットの集合知の前では、お涙頂戴は通用しません。アニメ業界も、内製化を進めていますし、アニメーターを社員としてちゃんと育てるところは、変わっていくでしょう。声優の場合は、事務所に籍は置いていても、実質フリーランスという感じですし。でも、声優も仕事を貰う立場だけでなく、自分自身が客から直接投げ銭をもらう、事業の別の柱や副業を持つべきでしょう。それが劇団の人も入れば、朗読会の人もいるでしょうし、YouTuberでもいいでしょうしね。
マンガ家も同じで、出版社に流通という急所を押さえられて、優先的地位の濫用にも、泣き寝入りしてきたわけですが。出版社を通さない収入の道を模索していかないと。いちおう、MANZEMI講座やこのnoteでは、そのためのヒントや自分たちの試行錯誤とその成果については、少しずつ公開していますが。ハイリスク・ハイリターンの商売に手を出したんですから、リスクは仕方がないではなく。少しでもリスクを下げるための勉強とか、絶対に必要なんですよね。自分で作って直接客に売る、そこが声優もマンガ家も必要な時代に。
■インボイス制度解説■
こちらのツイートも、備忘録を兼ねて転載しておきますね。インボイス制度のわかりやすい解説ですから。
特例によって延命していた境界線上の人間が、淘汰されるって話です。元が、『声優名鑑2022』の女性編・男性編合わせた掲載人数は1658名とのことですから、2000人ぐらいしかいない商売。マンガ家も推計で、3000人から6000人しかいない商売。アニメーターもたぶん、4500人から6000人ぐらいしかいない商売ですから。そういう特殊例を持ち出してどうこう言っても、世の真面目な個人事業主の方々には、理解は得られないでしょうね。
少なくとも、こういう目で見られているという自覚は必要でしょうね。万機公論に決すべし。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ