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偽物が本物を超える?

◉Twitterに流れてきた、『ラーメン再遊記』の芹沢の理論=即席麺は(ラーメンの)ニセモノだが、世界的に大衆人気を得るのは、むしろニセモノの方なんだ」が、とても興味深かったので、アレコレ考察をしてみます。大衆文化=ローカルチャーと、ハイカルチャーの違いなどにも、思いを致しつつ。

スクリーンショットも。

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、エレキギターで検索したら、出てきました。

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■料理の伝播ルート■

Rock ’n’ Rollのルーツは、諸説あるようで。ロックンロールは、アメリカのカントリーミュージックと、黒人のブルースやゴスペルが融合したとか、カントリーミュージックをルーツとするロカビリーに、チャック・ベリーの楽曲が融合したとか、アイルランド民謡の影響を指摘する記事を見た記憶も。映画『ドリーム・ガールズ』では白人のエルヴィス・プレスリーが黒人の音楽を歌ってメジャーになり、奪われたという文脈でしたっけ。

そこにBEATLESやRolling Stonesのブリティッシュ・ロックが世界を席巻しと、もともとの原液に他の出汁が加わって、普遍化する印象があります。完全にオリジナルな表現なんてなくて、常に先行する表現を取り入れて新たな表現が生まれるのは常です。で、ジャンルが成熟したその先には、細分化が待ってるのですが。これは、和式ラーメンのルーツである、中華料理もそうですね。

例えば、フランス料理──フレンチのルーツは、名門メディチ家の息女がフランス王家に輿入れし、その際に宮廷料理人を連れて行ったのがルーツとか。つまり、フレンチのルーツはイタリアン。で、イタリアンはマルコポーロらベネチア商人が、モンゴル帝国の大元ウルスとの貿易の中で、持ち帰った中華料理がルーツです。パスタ料理は中華がルーツです。さらに、アイスクリームの製法も中華から持ち帰ったとか。

■コピーからの脱却■

本物だ偽物だと言い出すと、何やら韓国起源説みたいになるが。それぞれが外部から刺激を受け、プラスαの独自性を加えて、新しい料理として分化していくんですよね。これは和食にしてもそうです。ルーツは中華料理。でも中国では、孔子の息子が鯉という名前のように、魚は淡水魚が主流なんですよね。海はありますが内陸国で、黄河文明や長江文明、遼河文明など大河のもとに文明が発達しましたから。

和食は、最古の四条流などは淡水魚のフナ重視なんですけど、四方を海に囲まれた日本は必然的に海鮮が食材となり。平地が少なくて山がちな国土のせいで、獣肉系料理はあまり発達せず。そもそも豚肉も、琉球に1385年に渡来したという記録が残るように、全国的にはかなり普及は遅れたぐらいですから。でも、南北に長い地理のおかげもあって、昆布出汁や鰹出汁、干しシイタケなどで出汁を取る、独自性が備わって和食が確立されました。

イタリアンは米大陸由来のトマトを取り入れ、これに含まれる旨味成分のリコピンを取り入れ、チーズの旨味や特産のオリーブオイル、半島国家らしい魚介類を取り入れ、独自の小麦の改良と多様なパスタを生み、中華から独立。これはフレンチにしても同じで、元の料理のコピーから、どれだけ独自性を持てるかって大事ですね。コピーのままであったら、それはどんなに完璧なコピーでも、意味はあるのか?

■豚骨ラーメン発明■

日本のラーメンは、元々中華の麺料理をルーツとしますが。中国の麺料理はこれまた、各地で多種多様な発展を遂げていますからね。日本のラーメンは、もともと点心のアッサリしたものでしたが。初期の東京ラーメンを再現したものは、鶏ガラスープでとてもあっさりしていましたね。関東大震災で東京や横浜 が壊滅的な打撃を受けた結果、料理人が各地に散って、それぞれの地域で独自進化を遂げたという部分があります。

ちなみに京都の専門学校で教えていた時、中国人留学生を 数百人ほど教えた経験があるのですが。個人的な興味もあって、中国各地からやってきた 留学生に日本のラーメンについてよく質問しました。そうすると、とんこつラーメンがダントツの一番人気でしたね。割とあっさりとした中華のラーメンに比較して、ラーメンのあのコッテリ感が、非常にゴージャスな感じがするんだそうで。

さらに 厚切りのチャーシューなどをトッピングしてあると、尚良し。元々、中国人自体は豚肉料理が大好きですし、その豚の骨を煮込んで出汁を取る豚骨ラーメンが、嫌いなはずはないですよね。中国人にしても、豚骨ラーメンは盲点だったようで。ちなみに、天津飯も天津出身のもう 美味しいと言っていました。あれも、日本生まれですからね。まぁ、餃子は水餃子のほうが好きだという意見が、圧倒的でした。

■プロレスの独自性■

してみると、J-Rockって何が独自性なんだろう? ……という疑問が湧いてきます。音楽に疎いので、解らんですが。日本人はコピーはものすごくうまい民族ですし、単純にテクニックだけだったら、ギタリストもベーシストも、世界レベルの奏者は多いのでしょうけれど。これがプロレスだと、本来の アメリカンプロレスでは、ヒール=悪玉とベビーフェイス=善玉という役割分担があったのですが。

敗戦後の日本に、プロレスを持ち込んだ力道山は、敗戦コンプレックスを持つ日本人に、日米対立の要素で大受け。ある種のナショナリズムに乗っかることによって、大衆娯楽の一翼を担いました。ですが、次第に日本人対決のラインにシフト。これは、全日本プロレスと新日本プロレスの対立の中で、外国人選手の招聘ルートが弱かった新日本プロレスが、大木金太郎選手やストロング小林選手との、日本人対決で人気を得た面も大きいです。

長州力選手と藤波辰爾選手の名勝負数え歌と呼ばれた日本人対決が、十分な集客を産んで。後に、全日本プロレスも天龍源一郎選手が中心となり、日本人対決路線へ。そうなると、単純に善悪の対立軸では語れなくなるんですよね。政治的な要素を取り込んで、イデオロギー対立の図式へ。これはアニメーションが、勧善懲悪の図式から、どっちにも彼らなりの正義があるという描写に、シフトしていったのと、軌を一にします。というか、アニメの方が早いですね。

■雪舟と浮世絵版画■

そこから、日本のプロレスはインディーズ団体が乱立し、その中からUWF系の格闘路線、FMWのノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチ路線から、地域密着のみちプロなど、多様性を獲得していくのですが。こうして、日本のプロレスは独自性を獲得し、エンターテイメント路線のDDTでは、ヨシヒコ選手とかいますし。

例えば、江戸時代までは雪舟の絵画とか物凄く評価が高かったんですけれど。でも世界的に見たら、それは中華の南画の系譜。もちろん、独自性もあるのですが、大きな系列の中ではやはり、百済式仏像が中華のそれと、素人目には 見分けがつかないのと同じレベルの話で。逆に大衆文化の浮世絵のほうが、日本独自の表現として、明治以降は評価が世界的になったわけで。

してみると、J-Rockは雪舟で、アニソンやゲーム音楽の方が、世界に届いたという点で、浮世絵っぽいですね。そこに、類似性を感じます。野間〝tpkn〟易通尊師とか、アニソンを馬鹿にするのですが。それって、ただの権威主義では? 残念ながら、日本のバンドやアーティストで、全米ツアーができるような存在が、何人いるか? グレート・ムタとか、ロック様ことドゥエイン・ジョンソンも尊敬するレスラーでしたし。

■ラーメンとロック■

さて、すがやみつる先生から、興味深いリプライをいただきました。原作者の方、元々は音楽雑誌の編集者だったんですね。これは寡聞にして知りませんでした。そういう立場で、ロックをニセモノ音楽と言えるのは、逆にすごく見識が高いからですね。訳も解らずアニソンを馬鹿にして、攻撃的に振る舞う野間〝tpkn〟易通尊師に顕著な態度ですが。ある意味で、ラーメンもロックも突き放していますね。だからこそ、ラーメンハゲ芹沢は、情に流されず正論を言える稀有なキャラクターとして、憎まれつつ愛されているのでしょう。

ロックなどの音楽に限らず、けっきょく稚拙でもオリジナリティがある表現は、いつしかローカルチャーからハイカルチャーに昇華されていくのでしょう。世界的なギタリストであるマーティ・フリードマン氏が、八代亜紀さんの演歌や水戸黄門の主題歌の中に、欧米の音楽文化の文脈にはない、何かを見出したのでしょう。インドネシアのクラブ系ミュージックであるファンキーコタが、なにかこう妙に日本人の心のヒダに訴求するように。オリジナリティとはなにか、改めて考えたいですね。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

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