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教育も担うMANGA
◉クーリエ・ジャポンに、フランスで漫画が教育に用いられているという、興味深い記事が掲載されていましたので、紹介&個人的に思うことを。自分たちが子供の頃は、漫画は読むなと言われていましたが。もう一世代前の昭和33〜35年生まれのオタク第一世代とかが生まれる少し前、悪書追放運動が起こり、文字通り漫画は昭和30年(1955年)には手塚治虫先生の本などが、比喩ではなく焚書された訳で。さらに1963年と1965年には、総理府が中心となって悪書追放を行ったほど。それに比べれば、隔世の感があります。
【フランスの子供たちの「教育」も担いはじめた、日本の漫画】クーリエ・ジャポン
フランスに“輸出”される日本の漫画は、少年漫画や少女漫画だけではない。古典文学や伝記、哲学書などを漫画化した「学習漫画」が、続々とフランス語訳され、フランスの書店に並び、そして教育現場で用いられているという。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、机で字を書くクマと見守るウサギのイラストです。
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■出来事記憶と陳述記憶と■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。文字だけの教科書に比較して、漫画をテキストとした場合、視覚的な記憶と合わせての学習効果って、高いんですよね。ところが、文字だけの情報を高速処理できるタイプが、官僚とか学者になると、バカに合わせる必要などはないと、視覚情報を軽視しちゃうんですよね。でも、記憶には陳述記憶・非陳述記憶・出来事記憶(エピソード記憶)・意味記憶に分類されます。
できる人は自分を基準にして「コレぐらいできて当たり前、できないやつは怠け者か愚か者」と思ってしまう、典型的な誤謬です。自分は英語が苦手だったんですけども、あれも英訳漫画を使って、絵とストリートとをセットにして、単語や慣用句や定型文を、エピソード記憶で覚えた方が、意味記憶が苦手なタイプには、向いてるんですよね。
例えば、予備校の英語講師や英米文学の研究者が、英語の勉強法の本を書くと、単語の連想記憶術にとても否定的な態度を見せますね。あれは邪道だ、接頭辞や接尾辞などの単語の構造を覚えて分解すれば簡単なのにとか、言うわけです。アリゲーターを「ありがとう」の連想記憶で覚えるとクロコダイルと混乱するとか、具体的な事例まで上げて批判する人も。でも、研究者や翻訳者や通訳になる人ならともかく、苦手分野の受験勉強のためなら連想記憶術はとても有効でした。
講師や研究者になる人は、そもそも英単語を覚えるのが得意だったり、文法の構造の理解が早かったりするんですよね。コレは、自分も国語は得意だったのでわかります。中二の二学期以降、現代文も古文も漢文もノートを取ったことがなく。授業をボンヤリと聞いていれば充分。それでも全国模試で、偏差値75〜83ぐらいは取れちゃう。でも、文法の説明とかあやふやですけどね。
■無駄と一緒に覚える意味■
でも、世の中には単純記憶が強いタイプと、エピソード記憶が強いタイプがいて。自分は日本史や世界史も得意で、偏差値70〜75でしたが、年号を覚えるのがとても苦手で。未だに自信を持って言えるのは、乙巳の変645年、関ヶ原の戦い1600年、明治維新1868年ぐらいですかね。鎌倉幕府成立1192年は、今では1185年に変わっていますし。
でも年号を覚えるのは苦手でも、歴史小説や歴史ドラマは好きで、小池一夫先生のキャラクター主義ではないですが、人間を中心とした歴史の流れと原因結果を追うと、苦もなく覚えられるわけです。むしろ、歴史を暗記科目を誤解させ、歴史嫌いを増やしている原因が、年号を問う試験問題で、禁止すべきだと思っています。
例えば、英単語や英文イデオムの丸暗記が苦手な人間でも、ビートルズとか自分の好きな曲の歌詞なら覚えられる、という人は多いでしょう。自分は音楽にとても疎い人間でしたから、予備校時代には友人から進められた欧米のアーティストの曲を、聞きながら英文を暗記しました。
小林克也さんも、ラジオから流れてくる エルヴィス・プレスリーの曲など音楽から入って、大学1年生で運輸省の通訳案内業国家試験に合格されたとか。古くは鎌倉時代の琵琶法師が、長大な平家物語を暗記できたのも、節回しとセットだったからだとか。プロの歌手とか浪曲師とか、膨大な持ち歌を持っておられますしね。
フランスに“輸出”される日本の漫画は、少年漫画や少女漫画だけではない。古典文学や伝記、哲学書などを漫画化した「学習漫画」が、続々とフランス語訳され、フランスの書店に並び、そして教育現場で用いられているという。https://t.co/0hI7lu78uR
— ulala フランス在住の著述家 (@ulala_go) February 21, 2025
フランスに“輸出”される日本の漫画は、少年漫画や少女漫画だけではない。古典文学や伝記、哲学書などを漫画化した「学習漫画」が、続々とフランス語訳され、フランスの書店に並び、そして教育現場で用いられているという。
■楽しんで学ぶことが大事■
出来事記憶(エピソード記憶)が有効なのは、その個人にとっての時間や空間や経験、さらに感情とセットになって記憶されるから。苦手な英単語や年号を覚えるの自体、不得意な人間にとっては苦痛でしかありません。でも、漫画による視覚情報という情報の手がかりと、読んでいて楽しかった感情がセットになれば、それは記憶に残りますよね。
日本人の悪い癖で、何でもかんでも〇〇道にしてしまい、苦行僧のように取り組むのが正しい・素晴らしい・美しい・高尚だと思ってしまう人がいます。スポーツとかその傾向が顕著ですね。もちろんそんなことはなく。例えば柔道とか、母国の日本よりも フランスの方が競技人口が多くなっているのですが。
ライセンス制度で、指導者にはかなり高度な知識が求められると同時に、子供達に楽しんで柔道に接してもらい、ミニゲームを兼ねた 練習など、長く続けられるようにする手法が豊富なんですよね。やることが楽しければ、子供はほっといても熱中しますから。なのに日本では、オリンピックの金メダルを目指すかのような練習を小学生に課すのが、熱心な指導だと勘違いされているわけです。
勉学にしても、そうで。日本独自の数学であるわさんが発達し、ベルヌーイより早くベルヌーイ数が発見されたのも、道楽としての数学がブームとなり、ゲームを楽しむように難問に挑戦する人たちが数多く出たから。2500年以上前に、孔子も「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。」と語っています。
あさりよしとお先生の『まんがサイエンス』とか、世界中に輸出すべき最高のテキストです。横書き・左綴じだから、翻訳もスムーズでしょうから。世界各国で翻訳されて欲しいですね。ただ絵を配置しただけの学習漫画は、文字だけよりはマシですが。楽しさという糖衣錠で苦い薬を飲んでも、その薬が体に良い影響を与えることが、最大の目的ですから。
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