見出し画像

石油が枯渇しない理由

◉11月の記事ですが、再度紹介されていて気づきました。石油に関しては、太古の生物を由来とする有機起源説と、地球内部の炭化水素の化合物が染み出しているという無機起源説とがあります。学説的には有機起源説が圧倒的に支持されているのですが……。無機起源説も、完全には否定できていないのが現状です。なので、無機起源説のポイントを紹介したこの記事は、非常に有効ではないかと思います。

【石油はなぜ枯渇しないのか? 石油無機起源説の検証】ナゾロジー

石油は、数億年前の生物の遺骸がもとになり長い年月をかけて地中で生成された、というのが一般的な理解だと思いますが、「石油は生物起源ではない」という学説を聞いたことはないでしょうか。

この石油無機起源説については、1870年代に元素の周期律表で有名なロシアの化学者メンデレーエフが提唱したことが始まりで、旧東欧諸国では古くから定説とされていた学説です。

その後、東西の対立もあり、この学説はあまり顧みられることもなかったのですが、有名な米国の宇宙物理学者であるトーマス・ゴールド(Thomas Gold)が、2003年にScientific American誌に発表したことで、西側諸国でも注目を浴びることになりました。

彼の説く石油無機起源説は、地球が最初から貯蔵しているメタン(CH4)から地球内部の高温・高圧の環境下で放射線の作用(放射線分解や触媒として作用)等により石油が生成された、というものです。

https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/164178

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、石油コンビナートの写真です。


◉…▲▼▲▽△▽▲▽△▽▲▼▲…◉


■30年で枯渇するはずが■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。石油や天然ガスは、ロシア連邦軍のウクライナ侵攻以来、世界経済に悪影響を与えています。ロシアは資源大国で、石油・天然ガス・石炭などの資源国として有名ですが、天然ガスの埋蔵量で世界1位、石炭で2位、石油では6位と、エネルギー超大国。ここが制裁で輸出できないとなると、高騰は必然ですからね。自分が小学生だった1970年代は、あと30年で枯渇すると言われていたのですが。あれから40年以上が経過しましたが、相変わらず30年……いや、確認埋蔵量は2020年末時点で1兆7324億バレルもあり、同年の石油生産量で割ると可採年数は53.5年と、むしろ増えています。

まぁ、この確認埋蔵量が曲者なのですが。近年は、オイルサンドやシェールオイルなどといった、旧来の油田から採掘される原油とは違うタイプの資源開発が進んだことで、石油の埋蔵量は増加しています。国際エネルギー機関(IEA)の長期見通しでは、石油可採年数は150年以上と見込まれているようで。もうこうなると、石油は枯渇するの言説は、何だったのかと。さらに、実は枯渇するどころか、地球の中から染み出してきているので、150年でないレベルで、使える可能性があるのが、無機起源説です。地球という巨大な貯蔵庫に、いったいどれほどの石油が存在するのやら。

無機起源説は、地球のマントル内において、高温・高圧の条件下で石油の起源物質であるメタン(CH4)等が化学変化を起こし、より重い炭化水素(石油の成分)が生成されたとする考え方です。

■石炭より少ない埋蔵量■

これが石炭の場合、石炭紀の樹木の樹皮とかが残っているので、石炭は太古の樹木が変化したものだと、理解できます。石油も同じように、太古の生物(微生物)の死骸が集まって、長い時間の経過の中で、変化したのだろうと考える理路は、すんなり立つのですが。その石炭も、無煙炭から瀝青炭、泥炭など、年数によって質が違いますからね。でも石油は、世界中で算出されるのに、品質がほとんど同じなんですよね。これが、有機起源説の弱点でもあります。また、おそらくは海洋生物由来であるならば、石炭に比較して、少ない見積もりではないかという疑問が、個人的にあります。

地表の約70%が海です。陸上は30%で、現在でも砂漠や高山、南極大陸などなど、草木も生えない地域は大量にあります。でも、石炭の埋蔵量は約1兆741億トンもあり、可採年数に至っては139年あります。1トン ≒ 7.33バレルですから、1兆7324億バレル=2363億トン。少なすぎませんか? もちろん海洋でも、深海部とか潮流が早い地域など、多数ありますから、単純比較はできませんが。それでも石炭の2倍ほど、15兆7492億バレルぐらいは存在しても、不思議はないと思うのですが……。そうなると今の消費ペースでも、500年ぐらいは持ちそうなんですけどね。

最近まで、石油の無機起源説を受け入れる上での障害は、地球の上部マントルの条件下で複雑な炭化水素系を合成できる可能性を裏付ける、信頼性が高く再現可能な実験結果が得られていなかったことでした。

この説では、炭化水素の合成には、「十分な高温・高圧」、「炭素と水素の供給源」、「熱力学的に好ましい反応環境」の各条件を必要としています。

いわんや、地球内部から生成されて浮上するなら、1000年ぐらいは持つのではないかと。

■石油はいつ・どこで?■

元々、枯渇したと思われていた油田を、放置していたら、また石油が出るようになったという事例があり、そこから無機起源説が言われ始めたとか。もちろんこれは、多孔質の岩石に含まれていた石油が、地圧の変化で染み出しただけと説明できますが。今までは考えられなかった大深部から、石油が出てきた事例があり。有機起源説の、粗にもなっていますが。石油生物起源説では、恐竜が闊歩していたジュラ紀から白亜紀にかけて、石油が形成されたという説が主流です。これも、形成時期は各年代で多岐にわたり、そもそも地球の生命の起源がもっと早いかも、という仮説で対抗は可能です。ただそうなると、石油の質の均質さの説明がつきません

ただし実験では、メタンを起源物質として想定し、それを50気圧と1200℃の条件下で重合させると、炭化水素の化合物が生成されることが確認されていますから。可能性があるので、決着がつかない部分です。また現実には、南アフリカのカープバル・クレートンは、生物がいなかったはずの先カンブリア時代の古い地層なのに、天然ガスが豊富に産出していますし。記事では他にも、色んな地域の天然ガスの例をあげていて、興味深いです。石油と天然ガスは由来が異なる、あるいは天然ガスが無機起源で、石油は有機起源なのかもしれません。ひょっとしたら、天然ガスが有機資源と混交して、石油になったとか? はい、素人の妄想ですm(_ _)m

さらに、石油や天然ガスが生物起源説であるという常識を覆す新たな証拠が、地球最古の地層から次々と発見されています。

それは「先カンブリア時代楯状地(たてじょうち)」です。

ただ、アメリカはどうも核融合発電の目処が経ったので、価格が高い今のうちに石油を売ってしまおうという、動きが見えますね。有機起源説か無機起源説かは決着がついていませんが、石油の時代は終わるかといえば、そんなことはないでしょうね。核融合発電時代にも、水力発電や火力発電は、しばらくは重要な発電手段であり続けるでしょうし。石油自体は、プラスティックの原料や、ジェットエンジンなどの燃料にもなりますし、使い勝手は良いので。電気料金が下がって、石油価格も下がれば、エネルギー事情は大きく変わるでしょう。そうなったら、また二酸化炭素の放出量や、温暖化論が騒がれそうですが。


◉…▲▼▲▽△▽▲▽△▽▲▼▲…◉

◉…▲▼インフォメーション▼▲…◉

noteの内容が気に入った方は、サポートでの投げ銭をお願いします。
あるいは、下記リンクの拙著&共著などをお買い上げくださいませ。
そのお気持ちが、note執筆の励みになります。

MANZEMI電子書籍版: 表現技術解説書

MANZEMI名作映画解題講座『ローマの休日』編

MANZEMI文章表現講座① ニュアンスを伝える・感じる・創る

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

いいなと思ったら応援しよう!

喜多野土竜
売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ