読売新聞一強時代のメディア
◉2024年1月時点で、読売新聞607万部、朝日新聞349万部、毎日新聞158万部と、厳しい数字が出ていますね。特に朝日新聞・毎日新聞・産経新聞は、全盛期の半分以下にまで落ち込んでいます。たぶん今後も、この傾向は変わらず。毎日新聞が富山県から撤退したように、全国紙は将来的には読売新聞だけになるでしょう。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、新聞のモノクロ写真です。雰囲気があっていますね、黄昏の旧メディアっぽくて。
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■戦争責任から逃げた新聞■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。新聞は、朝日新聞や毎日新聞が撤退したところを、読売新聞と地元紙が吸収し。でも、全体的な下げ止めは、起きないでしょう。そもそも、新聞というメディアが、もう時代に合わなくなっている。幕の内弁当的に、政治・経済・社会・文化・スポーツなどを網羅する媒体が、需要がなくなりつつあります。読者は狭くてもいいから、もっと深く・濃い記事が欲しいのに、日本の新聞は取材班を組んで数ヶ月とか数年賭けるような記事を、ほとんど書けないので。
そもそも、日本の新聞自体が戦前から、世界的にも大きな部数を持ち、影響力も甚大。このため、高学歴な社員たちは特権階級意識を持ち、殿様商売を続けてきました。その結果、陸軍と朝日新聞が推す日独伊三国軍事同盟に日本は舵を切り、亡国の瀬戸際まで行ったわけで。にも関わらず、メディアの幹部が追放されたドイツと違って、戦争責任を取らなかった朝日新聞など、共産党の志位和夫氏さえも批判するほど。
■戦争で儲かった新聞■
だいたい、日本国民には『はだしのゲン』史観で、戦争によって軍需産業が儲かったという誤解がありますが。日本の軍需産業は国家総動員態勢で、会社利益配当及資金融通令や会社経理統制令で、軍需産業の株主や役員の力は、事実上剥奪されていました。当然、利益は大きくなく……というか、現代でも世界の軍需産業は、政府にけっこう安い値段で納入させられていて。兵器の高度化で、取引額は大きくなっても、利益はそんなに大きくなく。ロシア連邦軍とかも、軍需産業を保護していますが、同時に格安の価格で納入させられています。昔も今も、そんなに儲かるものではないんですね。
戦争で本当に儲かったのは、朝日新聞などマスコミです。満州事変が勃発した当初こそ批判的だった朝日新聞は、それで部数を大きく落としてしまい。慌てて主戦論に転じると、発行部数はうなぎのぼりに。けっきょく朝日新聞は、終戦までの間に部数をほぼ2倍近くまで爆増します。この倍増という言葉の意味、わかりますよね? 朝日新聞OBの細川隆元氏も、戦局が悪化したころも銀座でどんちゃん騒ぎをやっていたと、自著『朝日新聞外史 騒動の内幕』に書いていましたね。しかし、その朝日新聞も凋落し、毎日新聞と併せても507万部。読売新聞より100万部も少ないです。
全盛期の頃は、読売10対朝日8対毎日4ぐらいの比率で、朝毎の合計は読売新聞より大きかったわけで。産経新聞は、200万部なので、合計部数は読産と朝毎でほぼ拮抗か、やや左派側が強く。というか、読売新聞も70年代は左寄りでしたから。でも、今は695万部対507万部。大きな差が付いてしまいました。産経新聞も廃刊の危機ですが、あそこは割と経営にはドライで、夕刊の廃止とか押し紙の整理とか、他社よりもいち早く動くところがあり、最後は東京と大阪だけの発行になっても、ブロック紙としてしぶとく生き残るでしょうけれど。朝日と毎日――特に毎日新聞は、プライドが捨てられず傷口を大きくし、二進も三進もいかなくなり、二度目の倒産をしそうな。
■繰り言をいう新聞■
さて、朝日新聞に、フォトジャーナリズムの衰退についての、記事が出ていました。有料記事ですが、それなりの分量があるので、内容はけっこう把握できます。フォトジャーナリズムも需要が減れば、収入が減る。当たり前の話であって、それは冷笑ではないですね。ひろゆき的なモノ批判に、結びつけようって見出しに見えます。新聞というシステムが金を生み出せなくなりつつあり、であるならフォトジャーナリストは別の形でのマネタイズを模索するしかないのでは? 漫画家だって、90年代の全盛期に半分に雑誌の数が減り、その中でWeb系やら自費出版やらKindleインディーズやら、新しい道を模索しているんですから。中高年の繰り言っぽい印象です。
昔は良かった、昔はコレで稼げたのにって、ただの愚痴じゃんと思ってしまいます。愚痴言ってるオッサンがウザいのは、当たり前で。時代の変化によってランプ商を辞めざるを得なかった祖父の話を孫が聞く内容の、新美南吉の『おぢいさんのランプ』を読め、って話でしかないです。今までは、新聞・テレビ・ラジオ・雑誌など、情報の流通経路を独占し、切り取り報道や誘導をやってきた旧メディアが、見限られ始めてるだけで。なのに、俺たちの仕事は崇高なモノなのに仕事が減ってる、愚民は買い支えろ…なんて底意が漏れてるのに無自覚なら、冷笑されて当然ではないでしょうかね。
そもそも、シャッターチャンスってのは、フォトジャーナリストだけに訪れるのではなく。万人に機会が与えられ、そこにスマホの普及と、カメラの高性能化の波が押し寄せ。素人でも、そこそこの写真が撮れてしまい、それがスクープ級のモノになることもしばしば。つまり、集合知ならぬ集合シャッターチャンスに、本業が負けている現状です。そんな時代、プロの価値を示すなら、何があるのか? 戦場ジャーナリストがいますが、ウクライナに行ってる日本人記者やカメラマンが何人いるのか、寡聞にして知りません。たぶん、朝日新聞の正社員にはいないだろうな、と。それで、昔のように仕事がないと、嘆いても仕方がないです。
明治時代以来、栄耀栄華を誇ってきた新聞の、断末魔に見えます。
盛者必衰会者定離、諸行無常……。
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