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め
2016年5月18日 12:39
美術室には彼以外誰も居ない。 静かにドアを開けたのに、タケオは私の気配に気づいたようで顔を上げた。夕日で彼の栗色の髪の毛が赤く染まっている。眩しそうに目を細めるので、私は日が差し込む窓際まで歩いて、そっとカーテンを閉めた。 「あ、ごめん。ありがとう」 そう言うと、タケオは表情をほころばせて笑った。付き合い始めの頃、彼はこんな風には笑わなかった。むしろ笑顔をみせる方が珍しかったのに。喋