ポンヌフ／新橋

「おいしい」より大切なことがある。

わたしは、フードエッセイストの平野紗季子さんがとてもすきだ。

ごはんの魅力を、あんなにも的確な言葉で、
あんなにも魅力的な表現で伝えられる人は、
他にはいない、と思っている。

そんな彼女が、言っていた言葉。

「おいしい」より大切なことがある。

最初は、おいしいものが全て、まずいものは淘汰されてしまえ、そう思っていた。

そんなわたしを変えた店が、新橋にある、ポンヌフという喫茶店である。

新橋には、「よさ」が詰まった店がたくさんあり、サラリーマンたちの胃袋を作り上げていると言っても過言ではない。

ポンヌフはそんな新橋でも、サラリーマンたちの心に、これでもか、というほど根付いている喫茶店のひとつらしい。

そんな有名なお店、行ってみたい。
最初はこんなミーハー心だった。

入って、驚いた。

暑い。

クーラーは、そんな型まだ売ってるの？みたいに古く、薄く埃も被っている。
厨房と客席を遮るものもなく、
アツアツのスパゲティを作る厨房の熱気が、
客席にまで充満していた。

その暑さの中、注文し、届いた料理は、
店名のポンヌフを冠した、
ナポリタンにデミグラスソースがついたハンバーグを乗せたものであった。

麺はうどんのように太く、パスタというよりスパゲティ。
ハンバーグも今流行りの！という感じではない。
肝心の味も、びっくりするほどおいしい！という感じではない。
いたって普通。

そう、おいしくはないのだ。

でも、わたしにとって、ポンヌフには、
ポンヌフにしかない「よさ」がある。

あのぬるい感じ。
大味の味付け。
店員さんの雰囲気。
店内を流れるゆっくりとした時間。

わたしにとって、どこか懐かしい、
祖父母や親戚の家に来たような気持ちにさせてくれる。

だからこそ、わたしは、
ポンヌフが大好きなのかもしれない。

「おいしい」より大切なことがある。

それを教えてくれたのは、ポンヌフだった。

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カフェテラス ポンヌフ
03-3572-5346
東京都港区新橋2-20-15 新橋駅前ビル1号館 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13024964/