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フリーランスのみち その4

1986年の印刷業界(オフセット印刷の場合)

わたしがフリーランスとして独立したのが1986年の夏
当時の印刷は、現在のデジタル時代とは異なって各工程が細分化されてました。大手の印刷会社は別として、中小零細の印刷関係の会社はそれぞれの分野を生業(なりわい)としていました。
例をあげてみると
個人や企業が印刷物を発注となると、発注先は近所の印刷屋さんということになります。都心のメジャーな企業などであればデザイン事務所や制作会社の場合もあるのでしょうが、私の仕事的には前者でした。

「写植屋さん」という商売

当時は「写植屋」という商売が成り立ってました。何を主な業務としていたかというと、印刷物の文字を写植機で印画紙に印字(一文字一文字を撮影)して現像する、その文字だけが商品になっていたんです、それも結構高価でした。
簡単に言うと、チラシやポスターなどの見出しの一行だけとか、数行のテキストとかでそれなりの価格で取引できたのです。
ほとんどの印刷物の文字は、印画紙に撮影された「写植文字」でなければダメだったのです。

グラフィックデザイナーの仕事

版下時代のデザイナーのスキルは、レイアウトやデザインはもちろん、版下作成のために「指定作業」が出来なければなりませんでした。
A4ならA4大の紙にラフを描きます。そこには、タイトルや見出しに使う文字や文章の位置を枠で囲み、そこに入るように「書体」「サイズ」「CMYKの色指定」を全てします。写真の部分は「アタリ」といって鉛筆やペンで簡単にトレースしてトリミング部分などを支持する。また印刷する紙の種類(光沢・マット・上質紙・特殊紙など)を決める。カタログや冊子などページものであれば表紙/中ページとデザインします、中ページの文章が縦書きであれば右綴じ、横書きであれば左綴じ。綴じ方も中綴じや平綴じなど用途によって種類があります。
以上が全てではありません、グラフィックデザイナーはさまざまは知識や技量が必要とされていました。

版下制作作業

デザイナーの指示通りに、レイアウト用紙(版下専用紙でブルーの方眼がひかれている厚紙)に写植屋さんから上がってきた文字(印画紙)をカッターで丁寧に切って専用のペーパーセメント(貼る剥がすが自由にできる)を使ってペタペタと貼っていきます(切り貼りといいます)。
罫線は、ロットリングや烏口を使って、0.1mm〜1mmなどの線を描きます(技術がいります)。
出来上がったらパラフィン紙をかぶせ、その上に、背景や模様などの色をCMYKで指定します。
当時のデザイナーや版下制作に携わる人はCMYKのパーセントで大体の色が分かっていたくらいです。

版下から印刷物完成まで

版下を印刷屋さんへ持っていきます。印刷屋さんは、その版下のフィルムを作るために製版屋さんへ出します。使用する紙を紙業屋さんへ発注します。
製版屋は、4色カラーのものであればCMYKの4枚のフィルム(ネガ/ポジ)を作ります。出来上がったフィルムを見てゴミやはみ出た罫線などを筆を使って修正(オペークといいます)します(これも技術が必要な作業です)。
印刷屋さんは、出来たフィルムから刷版(アルミ製のPS板)を作り、それを印刷機に装着して刷っていきます。

製本屋さん

ページものであれば製本屋さんへ持っていき、出来上がったトンボ(トリム)付きの印刷物を、断裁機で出来上がりサイズに切り、各綴じ方に合わせ製本していきます。

印刷の工程を簡単に説明したつもりですが長くなってすみません。

フリーランスになって得した(良かった)ことは、制作事務所の時には体験出来なかった、写植屋/印刷/製版/製本/紙業/シール屋さんなどに直接出向き作業をこの目で見、いろいろと話が聞けたということです...見ると聞くとは大違い(本などの知識とは別物です)。

フリーランスのみち その5 につづく

次は
実際にしていた私の業務内容
スペシャリストとマルチ(なんでも屋) です。

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