たんぽぽの旅
コランダ地方交流🏵️不都合なところはパラレルで…🙏
お借りした方
・メッソンくん(後のエムくん)
・パパラチア博士(お名前のみ)
これは、リリーがただのアシマリで、エムくんがただのメッソンだった頃のお話。
やわらかな日差しが降り注ぐ研究所の庭が、アシマリの好きな場所であった。
ふと、何処からか誰かの泣き声が聞こえてくる。声の方へ向かうと、声の主は一匹のメッソンだった。
たんぽぽの旅
『ぴゃっ』
アシマリの姿を見て、メッソンが声を上げた。驚かせてしまったようだ。
『どうしたの?どこか痛いの?』
アシマリの問いかけに、メッソンは首を横に振った。その時、アシマリはメッソンについて、パパラチア博士が語ったことを思い出した。
「この子は勇敢な性格だけど、少し怖がりなところもあるから……」
他のポケモン達と馴染めなくて、いつもひとりすみっこにいるのだと。きっと、今日も。
アシマリはメッソンを、研究所の庭の中でも、特にお気に入りの場所へ連れていくことにした。
『みてみて』
そこは、たんぽぽが沢山咲いている場所。優しいイエローとグリーンの風景。
『かわいいでしょ、たんぽぽ』
『うん……』
メッソンの涙はいつの間にか止まっていて、アシマリはほっとした。
『たんぽぽってね、綿毛になったら、風に乗って旅をするんだって』
そうして行き着いた場所で、たんぽぽはまた花を咲かせるのだ。
『すごいなぁ、たんぽぽ』
メッソンは、感心したように呟いた。
『わたし、この研究所が好きだけど……たんぽぽみたいに旅に出てみたいって思ったの』
アシマリやメッソンは、新人トレーナーに渡される初心者用のポケモン。多くの新人トレーナーは、初心者用ポケモンを受け取った後、色々な理由で旅に出る。
新人トレーナーに選ばれれば、アシマリもメッソンも、おそらく旅に出ることになるだろう。
『旅に出て、その旅の先でたんぽぽを見つけたら、この研究所のことを思い出すと思うわ。それってすごく素敵なことだと思わない?』
楽しかった日々も、優しい博士のことも、一緒に育った友だちのことも、たんぽぽの花を見れば思い出せる。
それからしばらくして、たんぽぽたちは綿毛になって、遠くへ飛んでいった。
ふぅわり、ふわり。
風に乗って、あっという間に見えなくなった。
『いってらっしゃい!げんきでね~!』
綿毛の姿が見えなくなっても、アシマリとメッソンはいつまでも、綿毛が飛んでいった方を見つめていた。