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隣で星と月を見たい

「お待たせしました!ハンバーガーセットです」
「ありがとうございます」
「ごゆっくり~!」

―――隣で星と月を見たい

薫と二人で立ち寄ったハンバーガーショップの元気な店員さんに、小恋美は目を奪われた。
にこやかに接客する姿は、きらきらと輝いていて可愛らしい。
『いいなあ』
薫と両想いになってから、小恋美は可愛いと思った人を目で追いかけるようになった。
『自分は残念ながら、可愛いという単語から遠い存在…』
世間は可愛い人で溢れている。

少しでも可愛い人に、なれたらいいのにな…。
そんなことを、可愛い人に出会う度に考えてしまうのだ。
あの赤い髪の店員さんのように、ハンバーガーショップでアルバイトしたら可愛くなれるだろうか。
想像して、自分には似合わなそうだとげんなりした。

「ここ、どうした?食わねぇの?」
中々料理に手をつけない小恋美に、薫が声をかけた。
「ううん…いただきます」
手を合わせて、ようやく食事をはじめる。
「ハンバーガー、まん丸だね」
まるでこの間見たストロベリームーンみたい。
小恋美はそう言って、ハンバーガーを一口齧る。
「ああ、満月じゃなくなった」
笑いながら、セットのドリンクで喉を潤す。
少しだけ、小恋美は元気になった。
美味しいハンバーガーのおかげだ。

「この間、ストロベリームーンの時…急に電話かけてきたよな」
「あれね…電話するつもりはなかったんだけど」
ストロベリームーンを部屋の窓から見上げた時。
学校で聞いた噂話が頭に浮かんだ。
「好きな人とストロベリームーンを見ると結ばれるって!」
科学的な根拠もない、取るに足りない話。
だけど、何故だか引っかかってしまった。
「何か、薫君の声が聞きたくて」
それで電話越しで良いから、一緒にストロベリームーンを見たくなった。

「今日はストロベリームーンだよ、薫君」
「何?イチゴ関係あんの?」
「直接は、ないらしいよ」
「んだよそれ」
ケラケラ、電話から聞こえる笑い声につられて、小恋美もクスクス笑った。

電話を切るのが惜しくて、いつもより少しだけ長電話をした。

「あの時はすごく楽しかったよ、ありがとう」
突然電話をしても、彼は笑ってくれた。
それが嬉しかった。

『どんなに可愛くないところを見せても、突然電話をしても、笑ってくれる優しい人』

小恋美は鞄から、天体観測のお知らせのチラシを取り出して、薫に差し出す。

「今度は一緒に、星と月を見ない?」

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