サポーター、頑張る
コランダ地方、ハロウィン交流。
お借りした方
・ヨスガさん
・ラリマールさん
・ロニーくん
・ベアトリスさん
・ブランさん
・ミツキちゃん
※お相手様の行動を制限するものではありません。
お借りした流れ
「ヨスガさーん」
「にゃぱー」
よく知った後ろ姿を見つけ、シュクルリは彼に声をかけた。くるりと振り返って、笑顔を見せる彼は、配達屋のヨスガだ。
「やあ、シュクルリさん達も参加していたんだねぇ」
「はい!サポートとしてなんですけど…スープを提供しようかと思いまして」
「いいねぇ」
「良ければ、休憩時間にでも飲みに来てください」
二人がそんな風に世間話をしていると……。
「にゃぱ、にゃぱぱ」
シュクルリの肩に乗っている、ニャスパーのビスコッティが、きょろきょろ辺りを見渡している。
「どうしたのかな?」
「ヨスガさんのポケモンたちに、ご挨拶したいんだと思います」
ポケモンセンターにヨスガが荷物を届けに来る時、ビスコッティはいつも彼のポケモンたちに挨拶をしているのだ。
「じゃあ、今手元にいる子を出そう」
三つのボールが宙を舞った。
中からアーマーガア、アーボック、ポカブが出てきた。
「バトルするチームの方が連れ歩けるのは、三匹だけですもんね。他の子たちはポケモンセンターですか?」
「カラ坊には、ちょっと知り合いの子のボディーガードを頼んでるんだよ」
カラ坊とは、ヨスガの手持ちであるオスのドンカラスのことだ。
「じゃあ、カラ坊ちゃん会場のどこかにいるんですか?」
「そう、知り合いの子と一緒にいるはずだよ」
「だって、ビスコッティ。カラ坊ちゃんに会えるかもしれないね」
ビスコッティは嬉しそうに、手をぱたぱたと動かした。
「それじゃ、そろそろ行こうかなぁ。またねぇ」
「はい!お気をつけて!」
「にゃあー」
ヨスガを見送ったちょうどその時、腕のリングが振動し、インカムに通信が入った。
***
【お近くのイエローチームの方々へ】
インカムから、女性の声が聞こえてくる。
【只今より、私、ラリマールとロニー様で、バトルオアトリートを行います。支援の程、お願い致します】
「ラリマールとロニー……って、コンテストマスターとプレシャスリーダーの?」
「にゃあ?」
【ギャラリーも大歓迎です!他チームの方々も、興味ありましたら是非にどうぞ】
そこで、通信は切れた。どうやらこの近くで、とんでもなく豪華なバトルがあるらしい。
「行ってみよう。バトルが終わったら、回復とかしないとだし」
ビスコッティにそう言ってから、シュクルリは森の中を進んだ。
「クルーク、はなふぶき」
「エルスター、跳んで。バークアウトで威力軽減なさい」
ポケモンへ指示を出すトレーナーの声がする。
「わあ……」
シュクルリが現場に到着すると、確かにコンテストマスターとプレシャスリーダーがバトルを繰り広げていた。
「シャドーボール」
「タネばくだん!」
技と技がぶつかり、爆発する。
「なんて迫力……」
シュクルリは思わず呟いた。
このバトルが終わったら、ポケモンたちを回復して、それから、良ければスープはいかがですかと言ってみようかと思う。
こんなに綺麗で熱くて、最高のバトルを見せてもらったのだから、せめてそのくらいはさせてほしい。
「ねぇ、すごいね」
「にゃ……」
ビスコッティの方を見れば、圧倒されたのか、少し目を細めていた。
***
「あのバトル、本当にすごかったなぁ」
先程見たバトルを思い出しながら、シュクルリはスープをかき混ぜている。
「ね、そこの可愛い魔女っ子さん」
顔を上げると、ヒメグマを連れた美しい女性が立っていた。
「こんにちは!」
シュクルリは、呼ばれたのが魔女の仮装をしている自分だと気付いて、彼女に挨拶した。
「試練頑張ったら、その美味しそうなスープもらえる?」
「はい!是非是非、召し上がってくださいな」
「じゃ、ちょっとかくれんぼ行ってきまーす!まっててね、ハニー」
シュクルリの返答を聞いてから、女性はヒメグマを小脇に抱えて、かくれんぼの試練へと向かった。
「試練頑張ってください!……は、ハニー?」
シュクルリは首を傾げつつ、スープの入った鍋をひたすらかき混ぜ、求められれば器によそった。
「にゃにゃー」
ビスコッティが、スープをついでほしいと身振り手振りで伝えてくる。
「飲みたいの?……はい、気をつけてね」
シュクルリはスープを器によそい、ビスコッティに手渡した。
しかし、ビスコッティはそれを飲まずに、肩にぺラップを乗せている長髪の男性の元まで歩いていく。
「おや?」
「ぱにゃ?」
ビスコッティは、男性にスープを手渡そうとしている。
「ああっ、ニャスパーは貴方にスープを渡したいみたいです」
彼のぺラップが、とても静かだったので、シュクルリは少し珍しいなと思いながら、彼にそう伝えた。
***
チップを受け渡したり、スープを配ったり、ポケモン達を回復したり、くるくる動き回っているうちに、だいぶ時間が経過した。
「ふぅ……ちょっと休憩しよ……」
シュクルリがビスコッティの方を見ると、彼女は少し遠くを見ていた。そして暫くして、走り出した。
「あっ、どこに行くの?……出てきて、フレジエ!」
シュクルリはボールから、タブンネのフレジエを出し、スープ入り鍋の番をしながら待っていてほしいとお願いした。
「待ってぇ」
スープのことはフレジエに任せ、急いでビスコッティを追いかける。ビスコッティは、一匹のドンカラスの前で止まっていた。
「カラ坊ちゃんを見つけたの?」
「にゃぱにゃぱ」
ビスコッティはにっこり笑って、カラ坊のそばにいる少女を指差した。
「こんにちは。ヨスガさんの知り合いって、あなたのこと?」
「あ……」
ドンカラスモチーフの衣装を着ているその少女は、緊張しているのか、下を向いて黙ってしまった。
彼女の代わりに、カラ坊が首を縦に振っている。
「やっぱり……初めまして、あたしシュクルリ。イエローチームなの。あなたのお名前聞いてもいい?」
「……ミツキ」
小さな声だったが、シュクルリの耳にはちゃんと届いた。
「ミツキちゃん?可愛い名前ね」
「よ、ヨスガさんのこと……知ってるの……?」
怪訝な面持ちで、ミツキはシュクルリに問う。
「ヨスガさん?うん、いつも荷物を届けてくれるよ」
ポケモン同士も仲良しだしねと、シュクルリは笑顔を見せた。
緊張しているのか、ミツキは肩に力が入っているように見えた。イベントでの疲れもあるのかもしれない。
「……ミツキちゃん、疲れてない?大丈夫?」
「べ、別に……」
ミツキはそう言うが、シュクルリは少し心配だった。きちんと休憩を取っているのか、無理をしていないか。
「もし良ければだけど、かぼちゃのスープを飲まない?少し休憩しようよ」
持ち場に戻れば、温かいスープを飲ませてあげられる。そうすれば、肩の力も少しは抜けるかもしれない。
シュクルリは、自分に出来る最善を尽くしたいと思った。