See you soon, my friend!
X(旧Twitter)企画『コランダ地方で輝く君へ』交流作品です。
お借りした流れ
お借りした方
・シグルスさん
自宅
・ドラウズ
See you soon, my friend!
「フィンブルタウンか……」
万年雪に包まれた寒い町。フヴェル湖から引いている温泉が一大名物。大変な思いをしてまで、フィンブルの湯を求めて訪れる観光客は非常に多い。
「ドラウズ殿は、フィンブルタウンに行ったことが?」
「あるぞ。仕事や旅行でな」
あの町は、確かにものすごく寒い。しかし温泉は素晴らしく、星が綺麗に見える。温泉街の人々は皆愉快だ。ヴァニルとはまた違った雰囲気で、新鮮に感じるだろう。
「良いところだ、フィンブルは。ただ、いつもと違う環境というのは、寝付きが悪くなったりする場合がある。もし万が一、そうなってしまったら、少しでも体を休めるために……」
「“目を閉じて横になれ”だね?」
言おうとしていた言葉をシグルスに言われて、ドラウズは目を丸くした。
「なんだ、わかっているじゃないか」
「貴君がずっと言っていたからね。覚えたとも」
シグルスはにこやかに、そう答えた。
「あとは……とにかく寒いからな、フィンブル。風邪などひかぬように」
「ふふ、心配無用さ。体調管理は、常にしっかりしているとも。何と言っても私は……」
「“国宝だから”だろう?」
「おや、言われてしまったね」
シグルスの「国宝だから」という言葉を、ドラウズは何回も聞いた。シグルスもそれと同じくらい、「眠れなければ目を閉じて横に」というドラウズの言葉を聞いたのだ。だから、お互い相手の口癖を覚えてしまった。
「この場所での、このようなやり取りも暫くお預けだね。貴君に寂しい思いをさせてしまう、罪な国宝を許しておくれ」
「そんなの、仕事なのだから仕方ないだろうに」
「ヴァニルに舞い戻った暁には、友である貴君に会いに、この場所を訪れると約束しよう」
ドラウズは思わずシグルスから目線を逸らした。
怖がられることや、煙たがられることには慣れていても、真っ直ぐな目で見つめられながら“友”と呼ばれる事にはあまり慣れておらず、くすぐったい。
「……はっ、そうだ。あれをお前に渡そう。ラヴェンナ、国宝の相手を頼む」
「ほっ!?」
ドラウズはそう言うと、部屋を飛び出して行ってしまった。
突然無茶なことを言われた、ヨルノズクのラヴェンナは、とりあえず自分の宝物をシグルスにお披露目した。きらきらした石、買ってもらったぬいぐるみ、可愛いシール、謎のネジ。
「それは、貴君のコレクションかな?ふふ、素敵だね」
宝物を素敵と褒められて、ラヴェンナは少し良い気分になった。
「あったぞ。これを持っていけ」
「これは……キャンディ?」
机の上に置かれた透明なボトルには、色とりどりのキャンディが詰められている。
「フィンブルは空気が乾燥している。喉のケアに、キャンディを食べると良い」
ボトルの中のキャンディは、宝石のように煌めいていた。
「……仕事を終わらせ町をよく見たら、早く帰って来い。ヴァニルで待っている」