『高瀬舟』模擬裁判シナリオ英訳完成!
「其々の役を上手にこなした日本語が得意な生徒だけでなく、日本語がよく理解できないにもかかわらず、英語のシナリオを読み、熟考し、高瀬舟・国語的模擬裁判に真剣に取り組んだ生徒たちにも心から拍手を送りたい」
この言葉は今回、東北インターナショナルスクールで「高瀬舟模擬裁判」にチャンレンジされたヒューレット・柳澤えり子先生(以降「えり子先生」と称します)による生徒さんへの賞賛のことばです。ここには「英語のシナリオ」という言葉が出てきます。以前からシナリオの英訳ができたらいいなあ、と漠然と思っていたのですが、なんと今回えり子先生が『高瀬舟』シナリオの英訳を作って下さいました!週4コマの日本語の授業以外はすべての授業が英語で行われている学校で模擬裁判を行うにあたり、日本語がほとんど理解できない生徒が模擬裁判の内容を理解できるようにするためにも英訳シナリオを作成する必要が生じたということでした(科目名は「Japanese as a Native Language」)。
えり子先生が手記「『高瀬舟』国語的模擬裁判 英訳シナリオ作成の感想」を寄せて下さいましたので、どのようにして英訳されたのか、えり子先生の手記を引用しながら、ご紹介します。
シナリオには形態の違う3つの部分があるそうです。1つは裁判手続きを進めるための発話文。 開廷、閉廷宣言、人定質問、黙秘権の告知及び証拠調べや証人尋問を開始し進めるための発話、証人採用のための発話、再主尋問を求める発話などがここに含まれます。これらは刑事裁判を行う際に使われる定型に沿った発話なので、主に最高裁判所事務総局刑事監修『法廷通訳ハンドブック・実践編・英語』の第三編に書かれている法廷通訳参考例を参照したとのこと(この本にはだいぶ助けられたそうです)。シナリオで使われている文と『法廷通訳ハンドブック』の例文とが一字一句合致することはほとんどなかったそうですが、黙秘権の告知など、語られている内容が一致していると判断した場合は『法廷通訳ハンドブック』で使われている文をそのまま用いたということです。掲載されていない場合は、まず「日本法令外国語訳データベースシステム」の法令検索と文脈検索を使って言葉を検索し、さらに一般の文献や発話の中で、その言葉がどのような文脈中で使われているのかを知るために、オンライン辞書で例文の検索を行い、適切と思われる英訳を選んで文を組み立てたとのこと。模擬裁判の英語のシナリオがアメリカ合衆国の地方裁判所のホームページ等にいくつも掲載されていて(流石アメリカ!日本の地裁ではまずなかったような…)、目を通したということですが、独特な言い回しの使用や手続き自体が違うため、これはあまり役に立たなかったようです。(続く)