見出し画像

模擬裁判大会を「運営」すること

お初にお目にかかります。同志社大学法学部法律学科3回の上田夏輝と申します。前回の札埜先生の投稿における「オンラインでご縁があった大学生」にあたります。どうぞよろしくお願いします。

今年はこのオンライン高校生模擬裁判選手権とJessup国際法模擬裁判大会国内大会(大学生・院生向けの大会)で運営に関わりましたが、私自身は模擬裁判大会に出場したことがありません。プレイヤー側から見た模擬裁判の魅力はおそらく他の方々が語ってくださると思うので、私からは運営側における魅力を少し語ろうと思います。

私がこの模擬裁判の存在を知ったのは、龍谷大学犯罪学研究センターのこのツイートです。緊急事態宣言で大学がオンライン授業になり、サークル活動もほぼ無くなって、ありあまった時間をどうにか有効活用しようとしていた時期でしたので、大変心を惹かれてすぐに見学の申し込みをしました。その後も何度か見学・傍聴をさせていただき、大会を開催することが決まったときによかったら手伝わないか、とお声をかけていただいて今に至ります。

学部の授業で刑事系法の知識をある程度身につけてから刑事事件に関するメディアの報道やSNSでの発言に触れると、世間の認識が実際の法律や制度とかけ離れていると感じることがあります。およそ現行法では取りえない復讐に特化した刑罰を要求したり、逮捕された人がまだ起訴すらされていないのに犯罪者扱いしたり。犯罪を行ってしまった人が社会に復帰するには世間の理解と協力が不可欠と言っても過言ではないのに、正しい知識が広く世間に浸透しているとはいえないこの状況はもう少し問題視されてもよいのではないか、と常々思っていました。

とはいえ、「自分が間違っている」という事実を受け入れがたいのが人間です。すでに浸透している間違った理解を改めるには多大な労力と時間が必要になります。そこで、間違った知識が浸透する前に正しい知識を得てもらうこと(≒法教育)が、長い目で見ると最も効果的な方法ではないかと考えています。

その面で、オンライン模擬裁判選手権は高校生にとってすばらしい機会だと思います。様々な分野のエキスパートによる講義で生きた知識を得て、フォローアップを受けながら実際の裁判手続に沿ってそれらを活かす。模擬ではありますが、裁判員制度より「司法への理解を深める」という目的に沿った活動だと思います(裁判所の皆様すみません)。

そしてこの選手権は「楽しい」のです(決して楽ではないのは傍から見てもわかるのであえて括弧付きにしました)。事前講義もフォローアップも、内容こそ少々難しいですが知的好奇心を搔き立てられるものです。また、「国語的」であるゆえ参加者のバックグラウンド(出身地など)がシナリオの第一印象や場面設定に対する意見に顕著に表れ、大学生などが行う模擬裁判とはまた異なった世界を見ることができます。

私は何かを企画して、そこに参加する人たちを傍から眺めるのがとても好きです。これはプレイヤーや評価者にならず、運営者に徹しているもう一つの理由でもあります。高校生の皆様、ぜひオンライン模擬裁判選手権で貴方の知的好奇心を解放してください。2回目の今回はどのような弁論が見られるのか、今から楽しみです。ご参加お待ちしております。

いいなと思ったら応援しよう!